14.終章
『ご覧ください、下層街の露天市場があった場所には壁が設置され始め――』
セーフハウスのリビングでは、テレビの報道を食い入るように、子供達が見ている。
彼らは数日に、ザッカーマン達に救助され、ここで一旦預かっていた。
勿論、その中にはヒューゴやコータもいる。
今日彼らは、ヒルダと共にプレベントへ向かう。
レイゼン家の庇護の元、彼の国家に従事することになっていた。
「リンパール社が、あの装置の発掘を始めるのかな」
「違うと思うわ。こんなに大規模な事ができるのは、ユニオン本部ね。大方、リンパール社が掴んだ情報を本部に売って、彼らが動いたんでしょうね」
ヒューゴの質問に答えると、彼はまたテレビの方へ向き直った。
実のところ、ザッカーマンとヒューゴはあの装置については、他言無用にすると決めていた。テラフォーミング装置が発掘されたところで、それは新たな争いの火種になるだけだ。
しかし、ユニオン本部が乗り出したとなると、発掘作業は迅速に完遂されてしまうだろう。
最悪の場合、この情報を嗅ぎ付けた他組織と戦争になるかもしれない。
「隊長。本部は、装置をどうするつもりなんですかね」
「さぁな。本部の総帥がどこの誰だか知らんが、寛大な心で世界を再生してくれることを願うだけさ」
ユニオン本部の総帥は、各年の初めに行われる企業間の投票で決まる。
それに立候補できるのは、上層街に会社を構える企業の社長だけだ。
総帥になった者は、絶大な権力を与えられ、合意さえ得られれば、全企業の私兵を手足のように動かすこともできる。
そして、権力者の常として命を狙われるのを恐れ、総帥の情報は一切開示されていない。
ザッカーマンはため息をついて、窓から見える上層街を眺めた。
「ん?」
よく見ると、その上空に何かが飛んでいる。
そして、ソレは徐々にこちらに近づいて来ているようだった。
「隊長、まさか…」
「あれは、プレベントの輸送機だ。あんなモノで、ユニオンに来ていたのかヒルダ達は」
飛行技術は今や、ロストテクノロジーの一つとなっている。
技術があったとしても、ジェット燃料や合金が揃ってやっと形になるモノだ。
それが出来るのは、現在はプレベントしかいない。
「さぁ、子供達!アレがここに横づけして、セーフハウスの意味を為さなくなる前に、早く競り市場の入口に行くわよ」
始めて人工物が、空を飛ぶところを見た子供達は、はしゃぎながらザッカーマンとジンの背に続く。
市場の入口までたどり着くと丁度、路地に輸送機が着陸しているところだった。
それが着陸すると、後方の貨物室の扉が開き、中からパワードスーツに身を包んだ兵士達が現れた。
周囲の安全を確保すると、壮齢の男性と共にヒルダが降りてくる。
「あぁ、貴女がザッカーマンさんですね。ヒルダから話は聞いてます。今回の件では、娘が大変お世話になりました」
「いえ、契約の元で仕事を完遂しただけですから」
ヒルダの父は、ザッカーマンに礼を言うと、ヒューゴの方を向いた。
「そして…君がヒューゴか。これからも、ヒルダの事をよろしく頼むよ」
「は、はい!頑張ります」
「ちょっと!お父様、そういう言い方は」
父親の言葉に、ヒルダは顔を赤く染めている。
なんとなく気づいていたが、やはりあの少年に惚れているのだろう。
ヒルダから聞いていた話だと、彼女の父親はもう少し嫌な奴だと思っていたが、下層街のストリートチルドレンに恋愛感情を持つことに、反対していないところを見ると、案外そうでもないようだ。
落ち着いたヒルダが軽く咳払いし、ザッカーマン達に問いかけた。
「どうします。貴方達も、守護者として一緒にプレベントに来ますか?」
「そうね…帰りもこれに載せて貰えるのかしら」
「勿論です。ザッカーマンさんとジンさんは、恩人ですから」
「それなら、お言葉に甘えさせてもらうわ」
輸送機に全員が乗り込むと、機体は離陸し、プレベントを目指して飛び去って行った。
お読みいただきありがとうございました。
ザッカーマンの物語は、三章へと続きます。
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