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厄介ごとならザッカーマン傭兵事務所へ  作者: サカトウ
Case1.『マンティコア』
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02.端緒

「隊長が追いますか?」

「あぁ、お前は打合せ通りに。無線は常に開いておけ」


 そう言うと、ザッカーマンは足早に男を追い始めた。


「これで気がつかないなら、ハズレなわけだけど」


 男は、ちらりとこちらを見ると、人込みに紛れるように競り市場の中央へと進んでいく。


「ジン、当たりだ」

「了解です、頃合いを見て合図します」


 男は人込みを抜けると、裏路地へと駆け込んでいく。

 それを確認すると、ザッカーマンはホルスターから回転式拳銃を抜き獲物を追っていく。

 駆けこんだ裏路地は、曲がりくねり迷路のようになっている。しかし、何日も裏路地と市場を行き来したザッカーマンは、地形を把握しており、何度も角を曲がる男を辛うじて見失わずに、追いかけることができていた。


「この先は確か、袋小路だったか」


――ザザッ


「隊長、次の角、仕掛けられます」


 通信が途切れた数秒後、男は角を右に曲がる。男が曲がった角から、数ブロック先に直進した後、十字路を左に曲がると、そこは袋小路となっていた。

 しかし、わざわざ袋小路まで男を追い詰めようとはせずに、ザッカーマンは角を曲がると立ち止まる。そして、ベルトポーチから二輪の小型ドローンを取り出し、スイッチを押した。


タッタッタ――


 人が走っているような音を流しながら、ドローンは路地を直進していく。

 それを確認すると、彼女は路地の暗がりに身を隠した。そうしてから、一分程経ったところで、裏路地に足音が響き始め、さらに数秒経ったところで、彼女の前にその足音の主である男が身を曝け出した。


ブンッ


 暗がりから現れたザッカーマンは、強烈なローキックを繰り出す。

 男は彼女の奇襲を避けられず、前のめりに倒れこむが、前回りに受け身を取り、膝立ちの状態からすぐに起き上がろうとする。しかし、ザッカーマンはその隙を見逃さずに、滑るように身を近づけると、拳銃を頭に突きつける。


「動くな、撃つぞ」

「それは、お互い様のようだぞ」


カチャ――ゴキャッ


 彼女の後方から、銃を構える音がしたか思うと、骨の折れる鈍い嫌な音が続く。


「ガアアア!うぅ、ぐっ!」

「隊長、落としていいですか」


 ザッカーマンが振り向かずに軽く頷くと、ジンは男の首をグイグイ絞めていく。男はまだ折れていない左腕を振りかぶり、肘でジンの横腹を突く。その瞬間、ジンは首を絞める手を放し、左腕を絡めとり、勢いそのままに男を壁に打ち付ける。


「あがッ、クソったれ!」


 鼻血を吹き出しながらも、男は鋭い左ストレートを繰り出す。 


「シッ!」

 

 ジンは、繰り出された拳を沈みこんで躱し、強烈なアッパーを繰り出す。彼が大柄なことも手助け、男は身長の半分以上も打ち上げられ、白目を剥いて仰向けに吹き飛んだ。


「すみません、少し手こずりました」

「構わん、周囲の警戒を怠るなよ」


 そう言うと、ザッカーマンが拳銃を突きつている男に、静かにゆっくりと問いかける。


「安心しろ、殺しはしない。ただ、手早く、済ませたいんだ。質問にだけ答えろ、分かったな?」


拳銃を突きつけられた男は慎重に頷く。


「よし、アンタらはPMCの戦闘兵か?」

「すまないが、答えられない」

「別にいい、それが答えみたいなモノだ。ただ、次の質問では、そのような回答は望んでいない」


彼女が手を振ると、ジンはビデオカメラを取り出す。


「競りに介入した企業の犬として、ネットに晒されたくは無いよな?もし、次の質問に、正確に答えられないなら。アンタは企業から切り捨てられ、ユニオンの本部からに追われることになる」


男は、喉仏を上下させ生唾を飲みこむ。


「アンタの所属するPMCの名前を教えろ」


お読みいただきありがとうございます。

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