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厄介ごとならザッカーマン傭兵事務所へ  作者: サカトウ
Case2.『ハーメルン』
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04.岩窟

 ザッカーマンは、ライトで足元を照らしながら坑道内を進んでいた。

 その手には、回転式拳銃が握られている。


 自動小銃とは、物騒なモノを盗んでくれたわね。


 ここ、旧坑道に逃げ込んだ男の子は確実に、自動小銃を掛けて逃げ込んでいた。

 子供とはいえ、それの引き金を引けば、人を殺すことができる。

 そして、素人の動きは予測がつかないのも厄介だった。

 それに子供というのも、拍車をかけている。


 今のところ、分岐などはないが、子供の痕跡も見当たらない。

 このまま奥に進むと、毒ガスの発生地帯に足を踏み込むか、酸素量の低下で死に至るだろう。

 

――カラカラッ


 そろそろ引き返そうかと考え始めた頃、前方から何かが転がる音が聞こえてきた。

 ライトを消し、足音を立てないように、慎重に歩みを進める。

 すると、急に足元にあったハズの地面が無くなった。


「なにっ!」


 ガラガラと音を立て、坂を転がり落ちていく。


 ドンッ!


 数秒後、浮遊感の後に背中へ激しい痛みが走る。

 なんとか受け身を取り、重症は避けたが、体中擦り傷だらけだろう。

 

「う、動くな!」


 突如、暗やみから光が投げかけられ、ザッカーマンは目を細める。

 声の高さからすると、恐らく逃げ込んだ男の子だろう。

 

「わかった」


 彼女は指示に従い、両手を挙げる。


「武器も捨てるんだ」

「はいはい…」


 そう言うと、手に持ったライトを点灯させ、光の方へ放り投げた。


「うわっ――ぐぇ!」


 ザッカーマンは声の主が光に怯んだ隙に、一気に接近して組み伏せた。

 手から滑り落ちた自動小銃を、彼女の落ちてきた方へと蹴り飛ばす。

 それはクルクルと回転し、装着されたライトがザッカーマン達を丁度照らした。

 彼女の眼下には、年端もいかない男の子が地面に伏している。

 

「は、放せ!僕は何も話さないぞ!」

「おい、勘違いするな。私は傭兵だが、企業の依頼は受けていない」

「なら、なんで追ってきたんだよ」

「お前が知ってるかは知らないが、ヒルダという女の子が――」

「えっ!なんで、ヒルダを知ってるんだ!」


 ザッカーマンの言葉を遮り、男の子が声を上げる。

 ヒルダの事を知っているなら、少しは話が通じるだろう。

 そう判断し手を緩めると、男の子の手を取り立ち上がらせた。


「私は、ヒルダからヒューゴを探すように依頼を受けてるの」

「それなら、早くそう言えよな…ゲホッゲホッ」

「そっちが仕掛けて来たのによく言う。落ち着いた所で話がしたいの。どうやって、ココから抜け出せるか知ってるかしら」


 喉をさすりながら、男の子は答える。


「付いてきな、仲間のとこまで連れてくよ。そこから、出られるから」

「仲間? それより、毒ガスは大丈夫なの」

「まだ残ってるところもあるけど、そこは避けていくから大丈夫だよ」


 ザッカーマンに蹴り飛ばされた自動小銃を手に取り、男の子は奥へと進み始める。

 念のためガスマスクは付けたまま、彼女もその背に従った。

 数分すると、前方から少し風が吹いてきた。

 坑道の外に繋がっているのだろうか。

 

「大人には狭いけど、その胸なら通れるかな…」

「女性にそういうことを、あまり言わないことね。嫌われるわよ」

「ご、ごめん」


 すまなそうにする男の子がライトで照らす壁には、亀裂が入っていた。

 風はどうやら、この先から吹いてきている。

 ポーチやガスマスクを外せば、ギリギリ通れそうだ。

 ケチな彼女は、ポーチから握れるだけの金属弾を鷲掴む。


「それじゃ、いくよ」


 その声に続き、ザッカーマンも亀裂に身を捩じりこむ。

 何度か引っかかったものの、どうにか抜け出せた。

 一息つき、手に持った金属弾を無造作にポケットへ突っ込んだ。


「ほら、こっちだよ」


 その声に、顔を上げると異様な光景が目に映る。

 崩れた壁から、ライトに照らされて青白く光る金属が顔を覗かせていた。 

 金属には、所々ヒビが入っており、そこから空気が漏れていた。

 

「へへ、よく見てな!」


 なぜか得意げな顔をしている男の子が、金属の一部に手を触れる。

 すると、その一部がスライドして内部への道が開かれた。

 男の子は迷わずに、開かれた穴の先に進んでいく。


「コータ!コータが戻ってきた!」


 中から別の子供の声が聞こえてきた。

 案内してくれた彼の名前は、『コータ』というようだ。

 コータに続き、ザッカーマンも中へ入る。

 内部は、金属に囲まれた部屋になっており、その一面には何かの操作パネルがあった。

 そのほかには、子供たちが持ち込んだのだろう、生活に必要な水や食料、椅子やらテーブル、さらには寝具まで揃っていた。


 そして、その部屋にはコータを含め子供が5人いた。

 その内の一人が、不安げにザッカーマンのほうを見る。


「コータ、その人は…」

「ヒルダに依頼されて、ヒューゴを探してるんだってさ。だから、連れて来たんだ」


 不安がる子供たちを安心させようと、優しくはにかみ、小さく手を振った。

 火傷跡で怖がらせないか心配だったが、杞憂だったようで、子供たちが足元に群がってきた。


「お姉さん、本当にヒューゴを見つけてくれるの!?」

「ヒルダは? ヒルダは何処にいるの?」

「これ、本物の銃? 始めて見る形だ」


 クソッ、こんなことなら警戒心を解くんじゃなかった。

 勘弁してよ、子供は苦手なのに。


 思い思いに喋る子供たちを、どうやって落ち着かせようか。

 いい案が浮かばないザッカーマンは、諦めて為すがままにされるのであった。 


お読みいただきありがとうございます。

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