14.終章
EZフロント社の一件から二週間が経ったにも関わらず、ザッカーマンは未だセーフハウスに居た。
いや、正確にはセーフハウスのベットに寝かされていた。
「ハハハ!いい気味ネ、同じ苦しみを味わうといいヨ」
「シンユエさん、隊長は意識不明のあなたを結構心配してたんですよ。そんな言い方は無いでしょう」
シンユエは一週間前に無事、目を覚まし歩き回れる程度には回復していた。
ドスッ!
ザッカーマンが拘束されていない右足で、器用にシンユエの腹を小突く。
「うっ」
シンユエは激痛に顔を歪め、腹部を抑えながら屈みこんだ。
「あっ!隊長も!シンユエさんのケガは、まだ全快したわけじゃないんですよ。やめてください」
「コイツ!ぶっ殺してやるヨ!」
「シンユエさんも、落ち着いて!」
ザッカーマンの首を絞めに掛かるシンユエを、ジンは羽交い締めにしてどうにか阻止する。
ドタドタと階段のほうから音がすると、騒ぎを聞きつけたユーリが階段を駆け上がってきた。
「おい!ケガ人が二人して何やってるんだ!」
大の男二人掛かりで、やっとシンユエは引きはがされ、ユーリに担がれて診療所へと連れ去られていく。
「ユーリ、やめるネ!私の暗殺任務ジャマするのよくないヨ!」
「そんな依頼、誰も出してないだろ。いい加減に脱走するのはやめろ!おとなしく、診療所で安静にしてるんだ」
ギャーギャー言い合う二人の声が遠ざかっていく。
「はぁ。隊長が目を覚ますまで、診療所を脱走してまで見舞いに来てたのに…なんでこうなるんだ」
そんな二人を一階出入口の鉄格子から見送りながら、ジンはそう呟やいた。
一方で、ベットに寝かされているザッカーマンは、EZフロント社に関するジンの調査報告を思い返していた。
「EZフロント社は、複数の企業が合併してできた企業だったようです。大分前に、社名が変わっていて気付きませんでしたよ。え?合併した企業の名前ですか。それも調査済みですよ、リストの上から読み上げていきますね」
――『ハウンズ』
まさか、その名を聞くとは夢にも思わなかった。
その名を冠する企業はユニオンに、ただ一つしかない。
ユニオン初のPMC『ハウンズ』。
このPMCが存在していたのは、何十年も前のことだ。
当時のハウンズの戦闘兵が、生き残っているはずがない。
「EZフロント社は、ニューエイジ社を買収し――」
付けっぱなしのテレビには、数日前に発表された、EZフロント社によるニューエイジ社の買収についてコメンテイターが議論をする番組が映っていた。
「遺物回収を行うニューエイジ社と、EZフロント社は懇意だった。もしかすると…」
――すべては買収のために、仕組まれたことだった。
頭を振り、大それた空想を払いのける。
そんなことよりも、今は報酬の200万クレジットの使い道を考えるべきだ。
「ククッ」
想像するだけで、笑みがこぼれる。
「うわ。すごい顔になってますよ、隊長」
丁度、二階に戻ってきたジンにニヤけ顔を見られてしまったようだ。
ふん、構うものか。大金が手に入って、嬉しくないわけがない。
「クハハハ!」
ザッカーマンの上機嫌な笑い声が埃っぽい部屋に響き渡っていった。
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