貴族令嬢に転生!
皆さん、こんにちは。
突然ですが皆さんは転生と言うものをご存知でしょうか?
そうです、俗に言う生まれ変わりというもの。
そんな物ある訳がない、そう考えている人も少なくないでしょう。
だけど転生と言うものは存在するのです。そう、今私はまさに転生しようとしている。
「次の方どうぞぉ!!」
やけにテンションの高い目の前の男。
光に包まれて顔は良く見えないけど声で男性ということは分かる。
あ、遅くなりましたが私は蓮目美来。
どこにでもいる17歳の普通の女子高生です、いやでしたの方が正しいか。
よく覚えていないけど、どうやら私は死んでしまったらしい。
確かに最後の記憶は自分に向かってくるトラックの姿だけど、まさか17年で人生を終えるとはね。
「えーっと、蓮目見来さんですね。ではこの6つのサイコロを転がしてください!」
そう言われ男性から手渡されたガラスで出来たサイコロ。
今まで私の前に並んでいた人達を見ていて分かったこと。それはここで出た目でどんな転生になるかが決まること。
ハハハ、そう言えば5人前の人はフンコロガシに転生するとかで気絶してたっけ。
「さぁさぁ、早く投げてくださぁい!! 素敵な二度目のライフがあなたを待っていますよ!!」
相変わらずテンションが高い……。
でも確かにまだまだ後ろに並んでいるし、早く終わらせよう。
なに、フンコロガシ以上ならいいんだから。
「……えい」
私の手から投げられたサイコロは、ゆっくりと転がり一つ、また一つと動きを止めていく。
そして全てのサイコロが止まった。目は2、5、4、1、5、6。
これは……、どんなんだろうか?
「はぁい、では見来さんの転生先は第4世界の貴族となりました!! いやぁ羨ましい!」
「え、貴族!! 嘘でしょ!?」
「ハハハハ、嘘じゃありません。では早速転生しちゃいましょう!!」
嘘、貴族なんてすごいラッキーじゃん!
喜ぶ私の体は、男性が指を鳴らしたのと同時に足元から消え始める。
でも浮かれていた私はまだ知らなかった。
6つのサイコロの内、1が出たサイコロが何を意味するのかを。
─ハストーエル王国 ハッシュフィル侯爵家─
「旦那様、無事お子様がお生まれになりました!」
「おぉ、でかしたぞ!!」
ん、何だろう?
視界がぼやけているけど何人かが私を見ている。
だめだ、体が上手く動かせないや。
私が懸命にもがいていると、その体が宙に浮かんだ。
正確には持ち上げられたのだ。
「なんと美しい女の子だ。ナナ、礼を言うぞ」
「旦那様、ありがとうございます。それでこの子の名は……」
「ハハハハッ、心配するな既に良き名を考えている。この子の名はミクリア。ミクリア・ハッシュフィルだ」
「ミクリア……。良い名ですね」
私を抱いている女性はそう言うと私の額に口を付けた。
うん、どうやらこの人達は私の新しい両親みたいだ。
ということは今のミクリアという名前は私の新しい名前。
ハハハ、前の名前とあんまり変わらないや。
「侯爵様、おめでとうございます」
あれ、また新しい人が現れた。
私の誕生を聞きつけたのか、次に現れた初老の男性。
彼は背丈を超える杖をつき私達の元へ歩いてくる。
「これは司祭、わざわざ足を運んでいただけるとは」
「なぁに、侯爵様にお子が生まれたとなってはこない訳にも参りますまい」
「ハハハハ、そうか。では早速だが司祭、娘を見て頂けるか?」
「そのために参ったのです」
どうやらこの人は私の何かを見るみたいだ。
キリスト教で言う洗礼みたいなものなのかな?
「ほう、これは良い子だ。体は丈夫で利口に育つでしょうな。侯爵家として魔力も申し分ない」
「それはよかった!」
ん、魔力??
それにこの人が私の額に手を置いた時から体が薄っすら光っているような……。
するとその時、男性の表情が厳しいものになった。
「こ、これは!!」
「どうしたのだ司祭! 何か娘に問題が??」
「そ、その逆です。この子にはとてつもない力が宿っている。今はまだどんな力かは分かりませんが……」
「それはスキルを持っているということか?」
「恐らくは。ですがスキルは13歳になる日に出現するもの。いまの段階ではどのようなスキルかは……。しかしこの力、恐らくS級のものかと」
「S級だと!?」
な、なに??
てか魔力にスキルってなんなの? そこに加えてS級って言われても訳が分からないんですけど!
でもみんなの慌てようからただ事ではないことは分かる。
「S級のスキル保持者……。これが世間に広まれば侯爵のお子を狙ってくる者が出るかもしれませぬ。……どうでしょう、私にお子を預けませぬか? 教会であればそのような考えを持つ者も下手に手出しは出来ないと思いますが」
「嫌です! この子は私達の手で育てます!!」
うわぁ、びっくりした。
司教の言葉を聞いていた私を抱いていた女性、ここからは母とするけど母が突然を声を荒げた。
「この子は私達の子。どのような力を持っていようと守ってみせます」
「しかし奥方、この子の安全を考えると」
「いや司教、妻の申す通りだ。このミクリアは我らの娘。それに侯爵家に手を出す輩はそうはいまい」
「……侯爵様がそう仰るのならこれ以上は言いますまい。ですがお子が13歳になるまでこのことは他言無用ですぞ?」
「分かっている。スキルが発現すればこの子も自分で身を守れるだろう。お前もそれでいいな?」
「ありがとうございます、旦那様」
どうやら私の今後は決まったみたいね。
よかった、せっかく貴族の娘になれたのに教会に預けられるなんて御免だもん。
でも私にそんな力があるなんて……。
ウフフフ、一体どんな力なのかな? お菓子を無限に出せるとか? それとも男性を全て虜にする力かしら?
「あら見てください旦那様、ミクリアが笑っています」
「ハハハハッ、本当だ。この子も我らと離れずに済んで嬉しいのかも知れぬな」
「フフフ、そうに違いありませんね」
アハハハハ、早く13歳にならないかなぁ~。
その日、初めて笑った娘がまさか下品な考えを思い浮かべていたとは知りもしない2人はお互いに笑みを浮かべた。
こうして蓮目見来の第2の人生は幕を開けたのであった。