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ユリアは、この世界の事を調べようと思った。


嘘を、ついてしまった。

ショパンが作曲したはずの曲を、自分が作った曲であると。



「高熱が下がられてから、以前とはまるで別人のような演奏をされるので驚きました。」


ティーカップに注がれた紅茶を差し出されながら、リシュールにそんな質問を投げかけられギクッとする。


(動揺しては駄目よ、ユリア)


そう自分に言い聞かせながら、私はまた堂々と嘘を重ねた。


「才能とは、いつ開花するのか誰にもわからないものよ。私の場合は、一度死んでしまいそうになって、もうピアノに二度と触れる事が出来なくなるかもしれないという恐怖に立ち会った事がきっかけだったみたいね」


「それでは、その時体験された恐怖が、あの素晴らしい曲には込められているのですか?」


「・・・まあ、そうね」


そう言って泳ぎそうになる視線を一点に定めて頷く。



音楽室での演奏を終え、”お茶の時間になりました”とここの部屋につれてこられて今に至る。ユリジェスは夕飯の用意をしてくるからといって部屋を後にした。料理人だという風貌もしていないのにどうしてかと一瞬不思議に思ったが、そういえばここの屋敷に今使用人は2人しかいないのだとすぐに思い出した。


こんなだだっぴろい屋敷に対して、この使用人の少なさは異常だ。


「リシュール、今この屋敷って、どれくらいやばいのかしら?具体的な財政状況を再確認したいのよね」


「具体的な財政状況ですか・・・お嬢様、少々お待ち下さい」


そう言ってリシュールは部屋を後にし、程なくしておおきなノートを数冊抱えて戻ってきた。


「ここ数年分の屋敷帳簿です」

「ありがとう」


そう言ってリシュールから帳簿を受け取った。4冊分ある。ruis21年、22年、23年、24年・・・

24年が今年か。


「リシュール、このルイスっていうのは・・・」

「ルイス王のお名前でございます」


(えっ、ここ王政なの!?)


そんなリシュールの言葉にぎょっとしながらも、平静を取り繕う。


「そ、そうだったわね。勿論知ってたわよ?・・・じゃあ早速見させて貰うわね」


そう言ってシャイオンジー家の屋敷帳簿を開いた。





帳簿から見て推測するに、きっとユーリアの両親が亡くなったのは2年前。医療費の支出も見られないし、それほど年を取っているとも思えない両親が揃って亡くなっているという事は、きっと交通事故か何かで亡くなったのだろう。


そしてここから屋敷の収入はぐっと減っていく。会場費をこれだけ支出しているという事は、当然の事ながらユーリアは、両親が亡くなった後は1人でコンサートを開き続けていたのだろう。だがその歳入はコンサートを重ねる度に大幅に減少していっている。


両親が有名なピアニストであるなら、その一人娘であるユーリアが注目されるのは当然であり、最初のコンサートやそれ以降もユーリアに興味を持った客が多く足を運んだのだろう。だがユーリアの演奏は客の期待に応えられなかった。・・・そんな事は想像に容易い。








 



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