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あなたの言う通りだったね光さん

「面倒な事だからに決まっているじゃない。

 でもこれからの時代いじめは犯罪になるわ」


 光さんも今朝見たニュースと同じ事を言う。

 これからの時代、いじめは犯罪になる。


「でも、いじめにあって追いつめられて、自殺してから発覚して、慰謝料の支払いを命じるなんて、おかしすぎるよ。死んでからなんておかしくない?」


「おかしいに決まっている。どうして大人しいいい子ばかりがいじめの的になって自殺するまで、追いつめられて、その命を絶つのか。それから慰謝料を請求するなんていじめを放棄した親にも問題があるわよ」


 熱く語る光さん。僕もその意見に便乗して「そうですよね。何も悪い事をしていないのに大人しい子がいじめに会うなんておかしいですよね」


「そうよ。自殺してから犯罪が発覚するなんて、遅すぎるわ。あっ君、今日はあっ君が学校でいじめられている事実を親にしらしめよう」


 僕はため息をもらしながら「そんな事をしたって無駄ですよ」


「どうしてそう諦めるの?昨日、あっ君をいじめる連中に万引きさせられそうになったんでしょ。その事を法廷に訴えて行かないと、あっ君の人生に支障が出るわ」


 光さんの気持ちは嬉しいが、何だか面倒くさい事になってきたような気がしたが、光さんの言うとおりだ。


「私はねえ、いじめられた経験があるから、あっ君の気持ちは充分に分かっているよ。

 あっ君をいじめる連中にギャフンと言わせてあげましょうよ」


 光さんは拳を握り、目が燃えるように輝いていた。


「だからあっ君は安心して、あっ君は私が守ってあげる」


 そう言って光さんは僕に抱きついてきた。


「ちょっと光さん」


 豊満な胸を僕の顔に埋めて僕を抱きしめる光さん。

 すごくドキドキして心臓がバックンバックンと鼓動がなり始める。

 光さん。もしかしたら僕の事をまんざらでも無いような気がした。 

 こんな綺麗な女性とお付き合い出来たら、本当に我が青春に悔いは無いのかもしれない。


 光さんとの時間はすぐに経過して、図書館は開館になった。

 今日もお年寄りが多く僕のような若い学生はいない。

 午前中はいつもそうだな。

 僕はそんな中、マンガは読まずに勉強をしていた。

 先ほど教わった受動態能動態の勉強をしていた。


 何かに没頭していると時間がたつのも早い。

 お昼になり、以前と同じように、パン屋の裏口まで言って、光さんはスマホを起動させて、以前と同じように敬子さんに失敗したパンを分けてもらうことにした。


「おいーす光、それとあっ君だっけ」


「いつもありがとう敬子」


 僕も恭しくお辞儀をする。


「光、あっ君はもう光のこれ?」


 小指をつきだして言う。


「そうじゃないわよ。私はあっ君の保護者みたいな者だよ」


 それを聞いて僕は落胆する。

 光さんは僕のことを保護者みたいな者でしか見ていないなんて。

 僕は光さんの事をかすかに期待していたのかもしれない。

 そうだよね。僕と光さんがそんな関係になれるはずが無いもんね。

 光さんは僕にとって女神様だ。

 そんな女神様とお付き合い出来るなんて、そんな事はないよね。


 光さんがパンを受け取り、僕と光さんは日陰の中で、パンを食べていた。

 今日はメロンパンとソーセージパンをご馳走してくれた。

 メロンパンとソーセージパンはとてもおいしかった。

 これのどこが失敗したパンなのだろうと、不思議に思えるほどおいしかった。


「今日もパンがおいしいね」


「そうですね」


「何敬語を使っているの?私の前ではタメ語で良いって言ったじゃん」


「うん。分かった」


「よろしい」


 夏休みが終わったばかりでまだ残暑はある。


「さておいしいパンもいただいたことだし、そろそろ私は仕事に戻るね」


 そんな光さんを見て、僕は素っ気なさを感じた。

 光さんは僕の保護者みたいな者で、その気はない。

 僕は光さんに気づかぬうちに心を奪われてしまったようだ。

 でも僕の今の現状を打破するためには光さんの力が必要だ。

 僕の両親は心配していると言っていたが、それは今日、光さんと一緒に僕の自宅に戻り、確かめてみないと分からない。

 だから僕は今、光さんに恋心を抱いている場合じゃないのだが、やはり光さんが僕のことを保護者役と言われて、かなり落ち込んだようだ。

 だったら僕の両親が家出した僕に何もない事を期待してしまうが、僕はこれ以上光さんに迷惑をかけたくない。


「そうだよ。迷惑はかけられないよ!」


 僕は鉛筆の音しか聞こえない、静かな図書館で声を上げてしまい、周りの人の注目が集まってしまった。


 ここが図書館だと言うことに僕は「すいません」と静かに言って、勉強を再会させた。


 勉強は嫌いじゃないが、僕は学校が嫌なのだ。

 みんなして僕の事を嫌がらせやいじめなどを僕にしてくる。

 小学校の時に僕は受験してしまえば良かったのかもしれない。

 本当はまじめに勉強をして、良い高校に入って大学まで行くつもりだった。

 それなのに僕は何もしていないのに、いつの間にかいじめの的になってしまっていた。

 だから今は光さんに恋をこがれている場合じゃないのだ。

 いじめが犯罪になるって言っていたけれど、自殺しなければ警察は動かないのが今の世の中の現状だ。

 光さん、期待しても良いんだよね。

 僕はあなたの事を憧れに止めておくよ。


 そして夕方になり、僕は光さんに「さあ、あっ君の家に行くわよ」


 僕の心は複雑だった。

 もし両親が僕のことを理解してくれれば、光さんの役目も終わってしまう。

 そうだよな終わって良いんだよな。


 僕のうちに行く途中、光さんは、「大丈夫だよ。あっ君の両親は理解してくれているから」


「本当ですか?」


「本当よ」


 そして僕の家にたどり着いて、僕の家のベルを鳴らす光さん。


 そこで出てきたのが、母親だった。


「アツジいったい今まで何をしていたんだい」


 そこで父親も現れて、「アツジ悪かったな。今日お前のクラスの担任に聞いたよ。クラスでいじめを受けているって。お前はだらしなくもないのに、勝手に俺の解釈で決めつけてしまったことに・・・」


 母親は僕を抱きしめる。


 父親は僕の事を反省してくれた。


「もう学校に行かなくても良いぞ。それで昨日はどこに泊まっていたんだ」


 そこで光さんが「私の家に泊まらせました。アツジ君は勉強もしっかりやって、学校に行かずとも図書館で勉強すれば、力も付いてきます。もし学校以外に通う場所がなければ、こちら側でフリースクールなどがあります。だからその事も視野に入れて考えてください」


「色々とご迷惑をおかけしました」


 母親が礼をする。


「アツジお前の事をしっかり見てやれなくてゴメンな」


 あの父親が僕に謝るなんて滅多に無いことだ。

 それほど僕の事を心配していたんだなあ、としみじみ思った。


「今日のお夕飯はすき焼きよ。もしよろしければ、光さんでしたっけ、どうですか?」


「じゃあ、ご相伴にあずからせてもらいます」


 家族が僕の事を理解してくれた。

 本当はみんな僕のことが心配だったんだ。


 光さんを招き、すき焼きはもう準備が整っていた。


 僕は幸せだった。


 こんなにも家族に愛されていたなんて。

 一昨日はフライパンで横っ面とわき腹を叩かれたが、父親も本気でやった訳じゃない。


 光さんも僕の家ですき焼きをご馳走になり、ご満悦のようだ。


 そこで母親が「光さんでしたっけ、いつまでもアツジの事をよろしくお願いします」


「任せてください」


 と光さんは言う。


 すき焼きも食べ終わり、僕の父さんと母さんが僕の事を心配してくれたことに、感謝感激雨嵐であった。


 そこで父親が言う、「今後の事はお前とじっくりと話し合って、お前が満足するようにするからな」と言ってくれた。


 光さんは僕の図書館の女神様だ。

 そんな女神様にまた会いたくて、明日が待ち遠しかった。


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