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許せない気持ち

「お前何かに関係ないだろ!!」


 父親はいやこの人は言って僕は父親に殴りかかった。


「何をするんだこのくそおやじ」


「何だお前、父親に向かってそんな態度をとって良いのか」


 おやじを殴り、おやじは倒れて、おやじにまたがり、おやじを殴り続けた。


「よしなさいあっ君」


 光さんは止めに入ったが、そんな事つゆ知れず、僕はおやじを殴り続けた。


「そうよアツジ、こんな事が世間様にばれたら、元も子もなくなるわ」


 僕は母親に向かって「世間の事しかお前等は気にしていないんだろ」


「・・・」


 黙り込む母親、妹が帰ってきて、「ちょっとお兄ちゃん、何しているの」妹の声にも無視して、僕はおやじを殴り続けた。


 そんな時、光さんが体当たりをして僕がおやじを殴るのを止めてくれた。


「どうして止めるんだよ。光さん」


「あっ君どんな事があっても暴力はいけないよ」


 悲しそうな顔をする光さん。


「だってこいつは光さんに熱いお茶を浴びせたんだよ。そんな相手許せる?」


「許すも許さないもないよ。でも暴力はいけないよ」


「だってこいつは昨日僕が学校に行かなかっただけで、フライパンで僕の顔やあばらを思い切り叩いたんだよ。

 しかも光さんにまで暴力を振るうなんて許せないに決まっているよ」


 するとおやじは「お前なんか出てゆけ、今後その顔を俺に見せるんじゃない」


「上等だよ。出ていってやるよ」


 僕は居間を出て外に出た。

 するとその後を光さんは僕の後を追ってきた。


「待ってあっ君」


「何で光さんがついてくるの?」


「あっ君家出って、宛はあるの?」


「無いけれど、もう僕は要らない人間なんだ。僕に居場所なんてない」


「じゃあ、私の家に来る?」


「そんなの光さんに迷惑だよ」


「迷惑なんかじゃないわ、私がそうしたいだけ、あっ君はあのニュースを見たんでしょ。私の責任でもあるわ」


「良いの?」


「ええ、大歓迎よ」


 僕は光さんの家に泊まることになった。

 光さんの家は、図書館の近くの隣町の小さなアパートに住んでいる。

 アパートの中に入ると、こじんまりとした六畳一間の家だ。


「お、お邪魔します」


「どうぞ」


 と光さんは僕を歓迎してくれている。


 僕はボーッと立ち尽くしたまま、辺りを見つめていた。


「ほら、ボーッとしていないでベットのところに座りなさいよ」


 僕は遠慮がちにベットの上に座った。

 何か女の子特有のいい匂いがする。

 本当に僕はこんな事をして良いのだろうか?

 女性の部屋に入ったのは妹以外に生まれて初めての事だった。


「あっ君、お腹空かない?」


「ええっ、まあ」


「今焼きそばを作ってあげるからね、ちょっと待っていてね」


 エプロンを着る光さん。


 焼きそばを作りながら光さんは言う。


「どんな事があっても暴力はいけないよあっ君」


「でも、おやじは光さんにひどいことをした」


「大丈夫だよ私は、でも嬉しいよ。私のためにそこまでしてくれたことに」


「いやそれは男として当然の事ですよ」


「何、生意気な事を言っているの?暴力は絶対にいけないよ」


「でもおやじも学校でいじめる連中も、暴力を掲げて僕に仕掛けてくる」


「とにかく明日またあっ君の家に行くわよ。もしかしたらあっ君の思いが伝わったかもしれないから」


「そんな事はないよ。もうあの家には戻れないよ」


「分からないじゃない。確かに暴力はいけないけれども、あっ君の思いが伝わっているかもしれないわ。だから明日また家に戻りましょう。私もついていってあげるから」


「はい」


 本当は帰りたくないのだが、こうして光さんの家にやっかいになりたくなかった。

 そんな事をしたら光さんに迷惑だよ。

 光さんは本当に良い人だ。

 こんな人が僕の彼女だったらなあ。


「さあ、出来たわよ。光特性オム焼きそば。召し上がれ」


「はい。いただきます」


 僕は箸をとり、オム焼きそばをいただく事にする。

 それはもうおいしいオム焼きそばだった。

 光さんがベースにしている焼きそばの麺を見てみると、僕はあの焼きそばを知っている。

 あの焼きそばは一袋三人前で百円を切る安さの代物だ。

 それなのにこんなおいしい焼きそばを作ることが出来るなんて、それにこんな僕にご馳走してくれるなんて、最高だった。


 僕が食べている向かい側で頬杖をつきながら僕の食べるところを見つめていた。

 そんな風に見つめられると、僕は恥ずかしくなり「何ですか?」と聞いてみる。


「うん。ちょっと嬉しいだけだよ。私の料理を食べてくれた人は男の子の中であなた一人だけよ」


 そう言われるとすごく嬉しくなってしまう。

 まさか光さん僕に気があるんじゃ。

 いやそんな事はない、食卓のところに窓がうっすらと僕の顔を映しだし、自分の顔を確認してみると、不細工な僕の顔が映し出されている。

 そうだよ。今までに女の子に持てたこともないのに、こんな美人でかわいい、光さんが僕に好意を持つはずがない。

 ここに呼び出されたのも、光さんがニュース局に頼んで図書館に来たことに責任を感じているだけなんだ。

 でなければ、僕の事をここまでしてくれるはずがない。


 オム焼きそばを食べ終えて、シャワーまで貸してくれた。


 僕が終えると、光さんは無防備にも程があるように、同じ部屋の中にいる僕の事は何も感じていないのか?シャワーを浴びた。


 光さんがシャワーを浴びる姿を想像していると、心臓がバックンバックン鼓動が張り裂けそうだった。


 光さんが俗室から出てくると、スポーツブラとスポーツパンツで出てきた。


「ちょ、ちょ、光さん。僕は男なんですよ。女の子としての自覚はないんですか?」


「何々?あっ君私のこんな姿を見て欲情してしまった?」


 にやにやと嫌らしい顔つきで僕に言う。


「とにかく、上に何か羽織ってください」


「分かりましたよ、あっ君」


 と言うわけで、光さんはネクリジェを羽織ってくれた。


「これで良いかなあっ君」


「はい」


 ネクリジェの光さんも色っぽいがさっきのブラとパンツよりかはましだ。


「さてあっ君は今日は疲れたでしょ。私はレポートをやらなくちゃいけないから、あっ君は先に休んでいて」


「はい」


 言われたとおり、僕は光さんが使っていると思われるベットの上に、寝転がった。

 光さんは気を利かせてくれて、居間の電気を消して、光さんは蛍光灯をつけて勉強している。

 部屋は静まり返り、光さんのシャーペンを書く音しかしない。


 人の家に泊まるなんて生まれて初めてのことだ。

 しかも叶わぬ恋を光さんの家では。

 でも今日は本当に疲れていた。

 明日一緒に僕の家に行こうだなんて、無謀にも程がある。

 あの家に帰ったら僕は何をされるか分からない。

 学校に行けば、いじめにあうし、家に帰ったら・・・僕にはもう居場所なんてない。

 今日は光さんの家に泊めて貰えたが、このまま僕を泊まらせ続ける事は迷惑になってしまう。

 光さんが言う、僕の両親が今日の事で反省してくれると言っていた。

 僕はそうは思えない。





 ******   ******





 いつの間に眠ってしまったのか?僕は目覚める、寝ぼけ眼をこすって時計を見ると、午前六時を示していた。


「光さん?」


 !!!どうして僕と同じベットの上で眠っているの!!!?


 ちょうどその時、目覚まし時計が鳴り出した。

 驚いた僕は「ひゃっ!!」と大声を出した。


 光さんが起き出して寝ぼけ眼をこすって、「おはようあっ君」と言って目覚まし時計を止めて、「んん」と延びをして、ベットから降りた。


「さて、朝の運動に行きましょうか、あっ君」


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