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プッツンとキレる瞬間

 僕は光さんにまずいところを見られてしまった。

 それは漫画を万引きするところをだ。

 それで僕は漫画を鞄につめたまま光さんに追いかけられている。


「待ちなさーいあっ君」


 僕は逃げるのに必死だった。

 でも体力もない僕は光さんにすぐに追いつかれ首根っこを掴まれてしまった。


「捕まえたわよ。鞄にしまった物を見せなさい」


「光さんには関係ないことだよ」


 すると光さんは僕の頬を叩いた。


「関係なくはない、いったいどうしてそんな事をするの?」


 僕は何も話すことが出来なかった。


「とりあえずあっ君、悪いことをしたんだから、書店のお兄さんに謝りに行こう。私もつきあうから」


 僕は言われるままに光さんと万引きをした書店のお兄さんのところまでつれて行かれた。


 書店に戻り、光さんは僕を弟と言うことにして、一緒に謝ってくれた。


 書店のお兄さんは言う。


「今度こんな事をしたら警察や学校に通報するからね」


 と。


 何だよ仕事もしないでマンガなんて読んでいるからそうなるんだよ。


 謝った後僕は光さんに手を引かれて、「どこに行こうとするの?もう謝ったから良いじゃないか」


「ちょっと来なさい」


 僕は黙ったまま、光さんに連れられて、連れて来られた場所は誰もいない河川敷の場所だった。


「どうしてあんた事をしたの?」


「・・・」


「黙ってないで何とか言いなさいよ」


 そう言われながら、昨日フライパンで殴られたわき腹を軽く小突かれて、激痛が走り、思わず「ううっ」と言った。


「どうしたのあっ君、私そんなに強くやったつもりはないけれども」


「・・・」


 黙っていると光さんは僕のわき腹を見ようとして、わき腹の辺りの服をめくり、自分でも見るのも痛々しいわき腹の痣が見えてしまった。


「あっ君・・・」


「どうしようも無いことなんだよ。さっきの万引きも学校で僕をいじめる連中に命令されてやったんだよ。学校に行かなきゃ、僕は親に大目玉を喰らうだけ」


「だったら図書館にいらっしゃいよ。親御さんからは私が言っておくから」


「そんな事をしても無駄な事だよ。僕に居場所なんてないんだよ。僕が居るところはまさに地獄だよ」


「大丈夫、私があっ君を守ってあげるから」


「そんな事をされても光さんに迷惑がかかるだけだよ」


「迷惑なんて思っていないよ。あっ君はあのニュースを見て図書館に来たんでしょ。だったら私の責任でもあるんだけど」


「僕は光さんに迷惑をかけたくないよ」


 すると光さんは僕を抱きしめ「あっ君は優しい子なんだね」


 光さんに抱きしめられて、涙が涙腺が故障したかのようにドバドバとあふれだしてきた。

 女性に抱きしめられることは生まれて初めてのことだった。

 まるで僕達は恋人同士じゃないか。

 光さんなら僕の事を何とかしてくれるんじゃないかと、本気で思った。


「あっ君はこれからどうしたいの?」


「図書館に行きたい。学校に行かずに図書館でマンガを読みたい」


「じゃあ、今から図書館に出かけましょうか」


「うん」


 僕と光さんはそう言って図書館の司書として働く図書館に向かった。


「もう、あっ君は泣き虫さんね」


 女性にそんな事を言われて僕は急激に恥ずかしくなった。女の子の前で泣くなんて情けなさすぎる。


 図書館に到着して、光さんは上司に「東条遅刻だぞ」と言われて「申し訳ありません」と注意を受けていた。

 だから僕はその上司のところに行って、「あの町子さんが遅くなった理由は僕がそのあの・・・」なんて言ったら良いのか分からずにあたふたとしていると。


「東条この子は君のニュースでの発言で図書館に来た子じゃないか」


「はい。木之元アツジ君と言って私はあっ君と呼んでいます」


「大事にしてやれよ」


「はい」


「今日もしっかりと頼むぞ」


「はい。じゃああっ君私は司書の仕事があるからマンガでもライトノベルでも読んでいて。そして帰る時、私に言ってね。あっ君の両親に図書館に行くことを説得してあげるから」


「はい」


 僕は安心した。

 でも僕の親はすごく厳しいから、どのように説得するのか、分からなかった。

 とにかく僕は一昨日見たドラゴンボールの続きを読んだ。


 本当に面白い内容になっていて僕は夢中になって読んでいる。

 嫌な事を一気に払拭してくれる面白さだ。


 良くこんな面白い内容のマンガを描ける事に僕は感心する。

 そんな面白い時間もすぐに済んでしまい、夕方になってしまった。

 そろそろ帰らないと父親や母親に大目玉だ。


 ちらりと司書の仕事をしている光さんの方を見る。


 やっぱり悪いよね。


 でもこのままでは僕の生死関わってくることになる。


 司書の仕事をしている光さんに近づいて、「あの光さん」


「あら、あっ君そろそろ帰る時間?」


「はい。そろそろ帰らないと親に大目玉なので」


「じゃあ、私がついていってあげるね。ちょっと待っていてね」


 着替えでもするのだろうか?光さんはカウンターの中に入り、その奥の扉を開いて入っていった。


 待つこと数分、光さんは青いジーパンに黄色いカッターシャツを着て扉の向こうからやってきた。


「お待たせ。じゃあ行こうか」


「はい」


 僕は期待していた。光さんがこの僕の惨劇から救い出してくれることを。


 僕が住む隣町まで光さんは僕の後をついていってくれた。


「まだ星の見える時間じゃないね」


「そうですね。まだ夏が終わったばかりですね」


「今度機会があれば、満点の星空が見えるプラネタリウムに行かない?」


 僕の心はドキリとした。

 それって僕のことを誘っているのか?

 もしかして光さん僕のことを・・・。

 いやあり得ないだろう。


「どうしたの?顔が真っ赤だよ」


「赤くなっていませんよ」


「どうなの?行くの行かないの?」


「喜んで」


「じゃあ、決まりね、今週の土曜に行きましょう」


 今日は木曜日だ。明後日って事だよね。これってもしかしてデート!?

 光さんからデートの約束をしてしまった。


「そろそろあっ君の家に到着するね」


「はい」

 

 僕の家に到着して、光さんは僕の家のチャイムを鳴らした。


「はーい」


 と出てきたのが母親だった。


「あら、アツジ、それにそこの方は?」


「私は東条光と言います。アツジ君の事でお話があって参りました」


 そこでちょうどその時に父親までが帰ってきた。


「どうしたんだ。アツジそれに母さんとその方は?」


「ちょうど良かったです。アツジ君の事でお話があって来ました。私はこういう者です」


 と光さんは僕の父親に名詞を差し出した。


「図書館の司書の東条光!?図書館の方がどうしてうちに来たんですか?」


 立ち話も何だから、母親と父親は光さんをうちの居間に入れた。


 光さんは僕の隣の席に座り、向かい側に父親と母親が並んで座り話し合う事になった。


 母親はとりあえず僕達四人にお茶を差し出した。


 光さんは「最初に申しますと、アツジ君は学校でいじめに耐えられなくなって、私の図書館に来たんです」


 そこで父親は「アツジお前学校が嫌だからって図書館で遊んでいたのか!!?」と僕に罵る父親。


「お父さん落ち着いて聞いてください」


 光さんがなだめる。続けて、光さんは「アツジ君は学校で悲惨ないじめにあっているんですよ」


「だからって何なんだ。だいたいお前がだらしないから、学校でいじめなんてあうんだよ」


 光さんは「アツジ君が学校でどんな悲惨ないじめにあっているかお気づきですか!?」


「聞きたくもないね。そんな話、とにかくお前は何をしに来たんだ」


「私はアツジ君の学校でどれぐらいの辛いことを体験しているか伝えに来たんです」


 すると父親は光さんに熱いお茶をかけた。


 その時僕の中でぷつりと何かが切れる音が心の中に響いた。


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