表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/38

ヒーロー者の小説を書いている僕と菜々子さん

 菜々子さんとエッチかあ、そういうのはもっとお互いの事を知り合ってからやるものだ。

 夏目おじさんは帰り際に菜々子とエッチをするつもりだったかあ、それで風邪をこじらせるなんてアツジ君はついていないな。なんて笑っていた。


 菜々子さんはベットの上で寒くうずくまっている。


「菜々子さん、毛布掛けて上げるよ。それと夏目おじさんから処方して貰った薬もちゃんと飲んでね」


「うん」


 とここは素直に言うことを聞いてくれる。


 先ほど叩いたとき、もうこれっきりなんて思ってしまったが、菜々子さんとの距離を縮める良い機会なった。


 菜々子さんとはもっと距離を縮めてからお互いの事を知りたい。

 エッチはそれからにしたい。

 夏目おじさんはちゃんと静養して薬を飲んでいれば大丈夫だと言っていた。


 時計を見ると午前九時を回っていた。


 図書館に来ないことを光さんが心配するかもしれないので、僕はあらかじめ光さんの携帯に連絡を入れておいた。

 今日は菜々子さんが風邪をこじらせて、僕が看病することになったと言ったら、光さんは菜々子さんにお大事にって言ってくれた。


 テレビはつけっぱなしで寝ながら、菜々子さんはテレビを見ている。

 菜々子さんは良い年してアンパンマンなんて、夢中になって見ている。

 僕は小説の続きを書こうとしたが、なぜかかけなかった。

 そこで気がついたが、いつもライバル意識を燃やしている菜々子さんが休んでいると何か腑抜けしてしまう。

 菜々子さんが風邪で小説を書けないなら僕も書けない。


「菜々子さん。アンパンマンって面白い」


「あたし笑われちゃうかもしれないけれど、アンパンマンみたいな人になりたいんだ」


「何それ!?」


 僕は思わず笑ってしまった。

 そこで気がついたがヤバい菜々子さんを怒らせてしまう。

 案の定菜々子さんは僕に威圧的な目を向けたが、怒りはせず、「アンパンマンって事故犠牲が出来る正義の味方なんだよね。あたしね、私の小説のネタばらしになってしまうかもだけど、そんなヒーロー者の小説を描いているんだ」


「そうなんだ」


「知っている?アンパンマンの作者のヤナセって言う人は本当の正義はかっこわるいんだって。それに作者は遅咲きで六十九歳で花が開いたんだよ」


「そうなんだ」


 六十九歳ってそんな年になるまでアンパンマンを作り上げたのか?

 僕もそれぐらいの情熱で描けられないだろうか?


 アンパンマンは一人では悪のバイキンマンに勝つことは出来ない。

 そのアンパンマンの顔を作るジャムおじさんやその他のパタコさんやチーズに、アンパンマンを囲む子供達がいてアンパンマンは活躍している。


 実を言うと僕も女の子が主人公のヒーロー者を描いている。

 それはアンパンマンのように一人では生きられず、みんなのサポートがあって正義の味方として活躍する物語だ。

 なぜ僕がヒーロー者を描いたかと言うと、何となくビビッと心に電流が流れるように書き始めたのだ。

 この僕の小説が世に渡って欲しいと僕は切に願っている。

 でも世の中そんなに甘くはないだろう。

 小説の書き方をYouTubeで見たが、とりあえず六千冊以上の本を読まなければならないと言われたっけ。

 まず僕達が描く小説は出版社の壁を乗り越えなくてはいけない。

 その出版社は頭がいかれているので何万冊と言う小説を読んでいると言っていた。

 そんな読んでいられるかって話だけど、今僕は菜々子さんが眠っている脇で小説を読んでいた。

 僕は一歩一歩前に進みたい。

 僕が小説を読むスピードはかなり遅い。

 これでは一生かかっても六千冊には届かないと思うが小説家になるって言うのが今の僕の夢である。

 菜々子さんと共に小説を描いていると勉強をするよりも生き甲斐を感じる。

 また一つ僕と菜々子さんの間に夢が生まれた。そんな感じだ。


 テレビをつけっぱなしにして、僕は菜々子さんがベットに横になっている脇で小説を読んでいた。

 読んでいる本は村上春樹の小説『騎士団長物語』であり小説もなかなか面白いとも思える。

 本を読んでいると時間が気になり、もう十二時を過ぎてしまっている。


「菜々子さん。お腹すかない?」


 と聞いてみると菜々子さんは気持ちよさそうに眠ってしまっている。

 とりあえず眠らせておいて、菜々子さんに栄養をつけてもらうために、買い出しに行こうと思ったが、その前に冷蔵庫を開けると、卵が合った。

 そうだ。菜々子さんに卵粥を作って上げようと思った。

 作り方は僕は知っている。

 そして作って上げて、菜々子さんの元へと運んでいく。


「菜々子さん。起きて」


「ん?どうしたのアツジ」


「卵粥作って上げたから食べて栄養をつけてよ」


 菜々子さんが体を起こすと、「凄い汗、アツジ食べる前に私の体を拭いてくれないかしら?」


「ええっ!?」


 僕は驚いてお盆に乗せた卵粥を落としそうになった。


「お願いアツジ、汗でびしょびしょなの」


「タオル貸すから自分で拭けないかな?」


「もうアツジ、何でそんなに私に遠慮しているの?」


「遠慮しているってどういう意味?」


「もう良いよ、タオル貸して、それでアツジ、私が良いって言うまで部屋に入ってこないで」


 僕は言われたとおり、菜々子さんの合図が出るまで台所にいた。


 かれこれ十五分ぐらいが経過した。

 暖かかったはずの卵粥はもう冷めてしまい、また鍋に戻して、暖め直した。


「菜々子さんまだ?」


「良いよ入って」


 入ると違うパジャマに着替えて、僕は暖め直した卵粥を菜々子さんに渡した。


「ほら、菜々子さんこれ食べて、早く元気を出してよ」


 すると菜々子さんは「アツジ、どうして覗きに来ないの?」


「な、菜々子さん、あんた正気ですか?覗くわけないじゃないですか」


「もう良いわよ。あたし手がふさがってしまっているから、アツジがレンゲですくって食べさせてよ」


「手、ふさがってないじゃん」


「良いから食べさせて!」


「はい」と菜々子さんに圧倒されて僕は卵粥をレンゲですくって菜々子さんの口元に運んだ。


 女の子にこうゆう風に食べさせる事は初めてなので凄くドキドキする。


「お、おいしいですか?菜々子さん」


「うん。まあまあね」


 卵粥を食べている菜々子さんは何か妙な色気を感じて、ドキドキした。


 じゃあ、もう食べ終わったことだし、また横になって眠りましょう。


「もう私大丈夫かもしれない」


 菜々子さんのおでこに触れてみる。


「熱は下がったかもしれないけれど、まだ病み上がりなんだからゆっくりしてよ」


「分かっているわよ。うっさいなー」


 と言っていつもの菜々子さんに戻ってしまって僕は安心した。

 さて僕は菜々子さんがベットに横になっているところで本を読み始めた。

 この村上春樹の小説はなぜか引き込まれる文章体になっていて読みやすく、すらすらと頭に入ってくる。

 相変わらずテレビはつけたままで、僕は小説を読みふけっている。

 本に没頭していると時間なんてアッと言う間に過ぎてしまう。


「そろそろ時間かな」


 すると菜々子さんは起き上がり、「アツジ、あたしはもう大丈夫だから新聞配達の仕事に行くよ」


「ダメだよ。まだ病み上がりなんだから、風邪は病み上がりが一番危ないんだよ。また今朝のように配達所に来たら承知しないからね」


 僕は菜々子さんに威圧的な視線を送り、菜々子さんはそんな僕を恐れてか「はい。分かったよ」と言ってくれた。






 ******   ******




 新聞配達の仕事も終えて社長や同僚の渡辺さんは菜々子ちゃんは大丈夫って心配していたが、とりあえず熱は下がっていると言って、みんな安心していた。


 家に帰ると、妹の桃子が来ていて、菜々子さんと何か言い合いになっている。


「どうしてあなたがお兄ちゃんの部屋のベットで眠っているの!?」


 桃子は興奮気味に言う。


 菜々子さんは笑顔で「私とアツジ君はつきあっていて・・・」


 菜々子さんは僕以外の人にツンツンした態度をとれないのだ。

 それで菜々子さんは猫をかぶって笑顔を装って困惑している。


「何をしているんだ二人とも」


「あーお兄ちゃん。私以外の女の子に手を出すなんて!」


「やめろ妙な誤解を生むだろう」


 またさらにやっかい事が増えてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ