菜々子の気持ち
そんな、光さんがエイトマンにぞっこん中だなんて。
「アツジショックだったでしょ」
また嘘をついたら菜々子さんを怒らせてしまうので僕は正直に「うん。驚いたし、嫉妬もしたよ」
菜々子さんは目を細めて「嫉妬したんだ」
「はい」と菜々子さんには嘘は通じないので正直に僕は言った。
すると菜々子さんは僕の目を見て、近づいてきて、何をされるのか恐れて、目を閉じた。
ビンタはされるんじゃないかと思ったが、菜々子さんは僕を抱きしめて「光さんの事を忘れさせるぐらいにして上げるから」
それは菜々子さんと一心同体になるんだと僕は覚悟した。
そして僕の家に到着して、僕の鼓動はバックンバックンと激しく鳴り響き、家のドアを開くと、鍵は閉めたはずなのに開いている。
どうしたものかと思って、中に入ると、妹の桃子がエプロンをつけて台所に立っていた。
「お帰りお兄ちゃん。今日は桃子特性のハンバーグを作るから待っていて」
そして妹は菜々子さんを険悪な目で見つめる。
「あなたが、お兄ちゃんの彼女?」
すると菜々子さんはにっこり笑って「はい。あなたは妹の桃子さんね」
桃子は僕に威圧的な視線を向けて、「お兄ちゃん。桃子が知らない間に、その人と同棲していたの?」
「同棲はしていないよ。ただ今日は・・・」本当の事を言ってしまうとまずいので「今日は菜々子さんと一緒に僕の家でご飯を食べる約束をしたんだ」と嘘を言っておいた。
桃子は菜々子さんをじっと見つめて、菜々子さんは妹をにっこりと笑って対応している。
「本当は二人でやるつもりだったんでしょ?」
「やるって何を?」
「そんな事を妹の私に言わせるつもり?」
「別に言わせるも何もないよ。僕と菜々子さんは今日は一緒に僕の部屋で食事をする事になっただけだよ」
「だったら桃子も今日はお兄ちゃんの所でお泊まりする」
ええー、と口から驚きの声が漏れそうだったから、僕は両手で口元を抑えた。
「兄妹水入らずの方が良いもんね。私は帰るね」
と言って菜々子さんは帰ってしまった。
本当は妹がいなければ、菜々子さんとやれるはずだったのに、がっかりしたようなホッとしたような気持ちであたふたとしていた。
察するに菜々子さんはがっかりしているだろうな。
そんな事を思っている僕を見て桃子は「お兄ちゃん、やっぱり菜々子とやるつもりだったんでしょ」
「やるって何を?」
「また同じ質問、お兄ちゃんはあの菜々子とエッチな事をしようとしていたんでしょ」
「そんな事をするはずないじゃないか」
と嘘を言っておいた。
「そんなの嘘に決まっている。お兄ちゃんは桃子の物だもん」
「いつからお前の物になったんだよ!!?」
「とにかくあたしはあの菜々子って言う人を認めないから」
事がややこしくなってしまった。みんな桃子のせいだ。
せっかく菜々子さんと出来るのに、とんだ邪魔が入ってしまった。
でも半分はホッとしているんだよな。
桃子がいるおかげで菜々子さんとはする事はなくなった訳だ。
もし神様のいたずらなら、神様はまだ、早いと言っているのかもしれない。
そう思った方が良いな。
菜々子さんには後でメールで謝っておこう。
妹が料理をしている間、僕はニュース番組を見ていた。
何か複雑な気持ちだ。
ホッとしているのか?残念に思っているのか?
きっと菜々子さんは残念に思っているだろう。
それは仕方が無いことだよな、エッチしようとしたら、僕の妹が来ていて、出来なくなってしまったのだから。
とりあえずご飯は出来上がり、妹のハンバーグを堪能した。
「これおいしいよ」
「でしょ、隠し味にお味噌を入れているんだから」
「へえーハンバーグの隠し味は味噌か、本当においしいし、ご飯が進むな」
食事が終わると、桃子は家に帰っていった。
泊まると言うのは嘘だったのか?
とにかく菜々子さんにメールを送るにしよう。
『妹が入る事は計算外だったけれど、本当にゴメンね』
と。
すると僕の家にノックの音がして、「はーい」と言ってドアを開けると菜々子さんだった。
「菜々子さん、どうして!?」
「どうしてって、とんだお邪魔虫がいたから、そのお邪魔虫が帰るのをずっとあんたの家の裏庭で待っていたのよ」
「ずっと裏庭で三時間位の待っていてくれたの?」
「だって私達は恋人同士でしょ」
「外以外と寒かったんじゃないか?風邪ひいていない?」
すると菜々子さんはくしゃみをした。
僕は菜々子さんのおでこを触ると少しだけ熱があったのを感じた。
「しばらくここで横になっていた方が良いよ」
「良いわ、それよりも私とするんでしょ」
また菜々子さんはくしゃみをした。
「ダメだよ菜々子さん。安静にしていなきゃ、風邪ひいているじゃないか」
すると菜々子さんは僕をベットに押し倒した。
「アツジは私とするんでしょ。それにこれ・・・」
僕にコンドームを差し出した。
菜々子さんは風邪をひいているのにも関わらず本気で僕とするつもりだ。
仕方がない、ここは男の力を利用して菜々子さんを引き離したが、菜々子さんにどこにそんな力があるのか分からないと言うくらいに僕のズボンを脱がそうと必死になっている。
ズボンは脱げなかったが、菜々子さんが力を入れる度に菜々子さんの息が激しく顔は真っ赤だった。
菜々子さんのおでこを触ってみると、凄い高熱だと言う事が分かった。
そして荒い息を吐いて、意識を失ってしまった。
「菜々子さん。菜々子さん!」
こんな寒い中三時間も外で妹が帰るのを待っていたのだろう。
それは風邪をひいてしまうわ。
意識を失った菜々子さんを目の当たりにして、僕はパニックに陥った。
「どうしよう」
そうだ。菜々子さんのおじさんである夏目おじさんのスマホの番号を控えているんだった。
夏目おじさんに来て貰うしかない。
夏目おじさんに連絡した。
「もしもし、木之元ですけれど、夏目おじさんですか?」
「君はアツジ君かね!?どうしたの!?」
「菜々子さんが大変なんです。菜々子さん気を失って凄い高熱で・・・」
「菜々子が!?」
心配の口調になる夏目おじさん。
「菜々子は今、どこにいるんだ!?」
「僕の家です!とにかく今、住所を教えますんで」
僕は夏目おじさんに僕の家の住所を教えて、それから夏目おじさんが来るまで、菜々子さんを安静にさせるように指示され、菜々子さんを僕のベットに寝かせて、布団を掛けておでこに冷たい水を絞ったタオルを頭に乗せておいた。
菜々子さんは息を荒くして、「アツジ・・・あたしとするんでしょ」と恥ずかしいことを言っている。
そんな事をこれから来る夏目おじさんが来て聞かれたら何て言われるか、その事も心配になった。
それよりも早く夏目おじさんは来ないかな?
そして二十分ぐらいに白衣を着た夏目おじさんはやってきた。
「菜々子は大丈夫なのか!?」
「とにかく凄い熱で意識がないんです」
「君という者がついていながら何をしているんだ」
と怒られて僕は反省させられる。
菜々子さんは息を荒くして、「アツジ・・・私とするんでしょ」
「何を言っているんだこの娘は?」
「それは色々とありまして、とにかく菜々子さんを何とかしてください」
「分かっておる」
夏目おじさんは診察を始める。
菜々子さんの上着を脱がして、聴診器で鼓動を確かめようとしているのか菜々子さんは「アツジ、やっとその気になってくれたんだね」と夏目おじさんに抱きついた。
「これは重傷だよアツジ君」
「重傷ってそんなに悪いんですか?」
「いや、ただの風邪だが、重傷なのはここだよ」
と頭を指さした。
「なるほど」
と僕は恥ずかしくなって、今すぐに殺して欲しいほどの羞恥心にかられている。
こんな彼氏で申し訳が無かった。




