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誰にも迷惑をかけたくない僕

 電話が途切れて、本当に来るのかと、僕は光さんに迷惑をかけているんじゃないかと思った。


 光さんに『待っていて』と言う場所は、近所の河川敷だった。


 僕は光さんが待っていてと言われたここの場所で待ちながら、隣町がきらめくネオンの光りを見ながら待っていた。


 ここって夜になるとこんなにきれいな場所になるんだ。

 しみじみ思いながら待っていて、もしかしたら光さん僕の事を・・・そんなわけない。

 でも初めて会ったのにこんな事をしてくれるなんて、何の義理があってそうしているのか考えた。


 こんなに人に優しくしてくれたのは初めての事だった。


「あっ君」


 色々と考えごとをしていると、後ろから光さんの声が聞こえた。


「光さん」


 光さんの顔を見ると僕の不安は一気に払拭されて、涙がこぼれ落ちそうになった。


「あっ君。お家に案内してくれないかな?私が親御さんに事情を説明して許して貰えるようにして上げるから」


「それはありがたい事ですけれども、そんな事をしてもらう義理なんてないですよ」


「あるよ。ニュース見たんでしょ。それで学校を休んで図書館に来たんでしょ。私の責任でもあるわ」


 僕は葛藤する。光さんが僕の親に事情を説明してくれれば親からの虐待を和らげられるんじゃないかって。

 でも僕は・・・考えている間に光さんは「私は迷惑だなんて思ってないよ」僕の心を読む光さん。


 だから僕は「僕は大丈夫ですよ。光さんの顔が見れて僕は満足ですから」


「本当に大丈夫なの?」


「はい」


 僕は大丈夫だと言わんばかりに笑顔を見せた。

 すると光さんは「分かった。またいつでも図書館に来てね」と言って光さんは帰っていった。


 その立ち去る後ろ姿に「ありがとう光さん」


 すると振り向いて笑顔でウインクしてくれた。


 僕はその姿に僕の心はドキッとした。


 そうだ。これは僕の問題だ。光さんに頼ってばかりでは迷惑をかけてしまう。


 僕は勇気を振り絞って家に帰った。


 時計は午後十時を回っていた。


「おい、アツジ、こんな時間まで学校にも行かずに何をしていたんだ?」


 父親が僕が帰るのを待っていた。しかもフライパンを持って。


「・・・」


 僕は何も言えなかった。


「何とか言ったらどうなんだ!?」


 と罵りながらフライパンで横っ面を思い切り殴られた。


 そこで母親が「あなた顔はやめなさいよ。ご近所に見られたら、私達がアツジに虐待をしているって評判になってしまうから」そして母親は僕に振り返り「アツジ本当に今日は学校にも行かずに何をしていたの?ご近所に知らされたら私達が恥をかくことになっちゃうのよ」


 どいつもこいつも自分の事しか考えていない。


 その後、僕は父親にフライパンで横っ腹を殴られて、「これなら文句はないだろ母さん」


「ちょっとあなた、アツジ泡ふいているじゃない。死んでしまったらどうするの?」


「人間、この程度では死なないよ。

 これに懲りてもうバカな事をするんじゃないぞ」


「とにかくアツジご飯できているから、食べてちょうだい。片づかないから」


 ここは地獄なのかと僕は恐ろしかった。

 このような地獄の中で食べる気も失せていた。

 でも食べなきゃ何をされるか分からない。

 ちなみにメニューはカレーライスとサラダだった。


 母親は僕の食べる姿を見て穏やかな笑顔で、「明日からちゃんと学校に行くのよ」食事を食べながら、僕の目の前が歪んで見えた。


 夜、フライパンで父親に殴られた痛みに耐えられず、眠れなかった。


 そして僕は人知れずに呟いた。「光さん助けて」と。


 そして必然的に朝はやってくる。


 その日僕は良い夢を見た。


 光さんが出てきて、光さんと幼稚園児に紙芝居を披露している夢を。


 本当に良い夢だった。


 また学校をさぼって図書館に行こうかと思ったが、そんな事をしたらまた父親にフライパンで殴られるだろう。

 仕方がない学校に行こう。


「アツジ起きなさい」


 一階から母親の声が聞こえてきた。

 僕は制服に着替えて、下に降りていった。


 居間に行くと、父親は新聞を広げて、僕に気がつくと、「アツジ、挨拶はどうした?」


「あっおはようございます」


「よし、今日はちゃんと学校に行くよな」


「はい」


「昨日みたいにさぼったらどうなるか分かっているよな」


「はい肝に銘じて置きます」


 父親との会話に昨日のフライパンではたかれる地獄を思い出しながら、僕はおののく。


 でも学校は地獄へのゲートみたいなところだ。


 朝食も終わり、妹は元気よく学校に出かけて、僕はおののきながらも学校に出かけた。


 学校には行きたくない。


 また学校をさぼって、図書館に行ったら僕は父親に大目玉だ。

 でも学校に行くしかない。

 また図書館に行って光さんに助けを求めたいが、僕はやめておいた。

 昨日の件で迷惑をかけてしまったし、またSOSを出しても光さんに迷惑だ。


 学校に到着して、校門が地獄へのゲートに見えるのは気のせいではない。


 教室に入ると、僕をいつもいじめる連中たむろっていてにやにやと笑いながらこちらをみている。


「木之元、おはよう。昨日学校に来なかった事に俺達は寂しかったよ。夏休み中にお前、俺達の連絡を拒否っていただろう」


 図星だ。僕は何も言えずに黙っていた。


「何しかとしているんだよ」


「僕に黒板消しを投げつけてきた」


 バフンと胸元に当たり、黒板を消すチョークの滓がのどにつまりケホケホっとせき込んでしまう。


「木之元、お前ちょっと裏に来いよ」


 不良五人につれて行かれた場所は校舎の裏側だった。


 不良五人はタバコを取り出して、「校舎の裏のタバコはおいしいな。よう木之元も吸うよな?」


「僕は・・・」


 断ろうとすると「ああん!」怒りを露わにして僕を睨みつける。


「じゃあいただきます」


「俺のも吸えよ」「俺のも」「俺のも」・・・口にタバコを五本くらいくわえさせられて、火をつけられて、吸い込むと僕はせき込んで五本全部のタバコを地面に落としてしまった。


「何だよ木之元、俺達の大事なタバコを粗末にしやがって」


 そういって僕は昨日フライパンで殴られた横腹にけりを喰らい僕は激しい激痛に襲われてモガいた。


「何だよ軽くやったのに、そんなに痛かったかよ」


「ごめんなさい。ごめんなさい」


 謝ったら、「日本は整った国だから土下座っていうのが本場だと思うんだけど」


 だから僕は即座に土下座をした。


「俺の靴をなめろよ」


 僕はすかさずなめた。


「良い心がけじゃねえかよ。なあ、木之元お前も学校一時間目の授業をさぼるよな」


「はい」


「よし」


 そういって僕の腕にタバコの吸い殻を突きつけた。


「あちちち」


「灰皿が声を出さないだろ」


 そう言われて僕は歯を食いしばって耐えた。


「なあ、木之元、俺欲しい単行本があるんだけど、今からちょっくらまびって来てくれない」


「そんな万引きなんて」


「ああん!」


 怒りを露わにする不良の中心人物の藤本。


「分かりました」


「さすが俺達の親友の木之元君」


 今日は学校は始まったばかりで授業は会ったが、すぐに下校の時間になった。


 下校時にとある商店街の本屋の前で藤本達は僕に漫画を盗んでこいと言われて、本屋の中に入った。


 誰もいないことを確認して店員も仕事をしていなく新聞を見ているだけであった。


 僕が藤本に言われた本を取り、鞄に入れると、「あれ、あっ君?」


 と光さんにまずいところを見られてしまった。


「何をやっているのよあなたは?」


「ごめんなさい」


 と言って僕は本屋から出ていき、光さんは僕の後を追いかけてきた。


「待ちなさーいあっ君」


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