学校なんて行きたくない
暗い部屋で一人。
夏休みが終わる最終日、僕は震えていた。
また学校に行ったら、僕を排泄物呼ばわりして、雑巾の絞った水を飲まされたり、蝉の抜け殻を口に入れられたり、散々な目に遭うんだろうな。
親もスパルタで僕が学校でいじめに遭っている事を知っていても聞いてもくれず、『いじめを受けるのはあんたがしっかりしないからだ』と罵られ誰も僕の事を理解してはくれない。
いじめる連中は、嫌らしい笑みを浮かべながら何もできない僕にいじめる。
明日が怖かった。
夏休みは本当に僕にゆとりをくれた。
学校に行かなくても済むからだ。
毎日パソコンの前で大好きなラフライブの歌を聴いていたり、そのアニメを何度も見て過ごしていた。
でもそれも今日でおしまいになる。
僕は明日学校に行かなくてはいけない。
そんな時である。
つけっぱなしのテレビを見てみると、ここ数年で夏休みが終わる時に自殺してしまう学生が多くなっていることを僕は知った。
さらにテレビを見ていると、
「学校に行きたくない君達、もし来れないなら、図書館においでよ。
図書館には漫画やライトノベル何かがあるよ。
もし学校に行きたくないなら、図書館においでよ」
心温まる声色でテレビに放送されていた。
そうか図書館か?
でも学校をさぼった事がばれたら家に大目玉を喰らうだろう。
でも学校に生きたくない。
でも親や先生に大目玉を喰らいたくない。
だったら死にたい。
でも何度も自殺を試みたことがあるが、全部失敗に終わっている。
どうして僕がこんな目に遭わなくてはいけないんだ。
そして必然的に朝はやってきて、学校に行く時間になってしまった。
凄く憂鬱な気分だった。
学校の事を思い出すと、そんな勇気はないが死にたくもなってくる。
僕が今楽に死ねる薬が合ったらそれを飲んで死んでしまいたい位だ。
でも死ぬのは怖い。
夏休み終わる頃、楽に死ねる方法をネットなどで調べてみたが、楽に死ねる方法は薬を大量にお酒で飲むことと書いてあった。
それを実行しようと思ったが、僕にはそんなお金などない。
時計は午前七時を示している。
「アツジ、朝だよ起きなさーい。学校に行く時間でしょ」
母親の言う現実から逃れたいと必死に思ったが、僕は観念して、制服に着替えて、二階から一階の居間に向かった。
僕は返事をせずに、一階の居間に行く。
そこには六年生の妹と新聞を広げた父親と、朝ご飯の準備をしている母親が居た。
「今日から学校ねお兄ちゃん」
ニコニコしながら僕に言う妹の理彩。
「お前は学校が楽しいのか?」
「うん。楽しみ、また学校で友達と一緒に会えるから」
「そうか」
「ところでアツジ、お前のこの成績は何だ?」
通知票には五段階形式で一と二しかなかった。
本当はもっと勉強して、そんなひどい成績は取らなかったのだが、いじめる連中は僕に期末や中間になって零点を取るように指示された。
「うっわーひどい成績、どうしたらこんな成績になるの?」
妹の理彩が言う。
「どうしてそれを」
通知票は誰にも見えないところに隠したつもりなのに。
「昨日母さんがお前の成績が心配で学校に押し掛けたところ、先生方に見せてもらったのだよ」
「それはその何て言うか・・・」
「言い訳するんじゃない!!」
僕の顔面に向かってお皿を投げて来た。
コメカミに当たり、その激しい痛みに私は悶えた。
「あなたそれはやりすぎでしょ」
「これくらいの事は当たり前の事だ。小学校の時はもっと良い成績をとっていたじゃないか・・・それが何だ。この成績は?来年はお前は受験なんだぞ。こんなところで怠けている場合じゃないだろう」
目の前が歪んで見えた。
まさにここは地獄何じゃないかとさえ疑い始めた。
父親が僕が痛みを感じている間、何か僕にバリ雑言な事を言い放っていたが、恐怖で何も言い返せなかった。
「目が痛いよお父さん」
「これぐらいの事で学校を休むつもりか?ああん」
僕の父親は厳しい。うちは亭主関白で母親も妹も父親の事を何も通用しない。父がそうだと言ったらそうなってしまうのが原則だ。
こんな父親死んでしまえば良い。
父親は一流大学卒で、今はある上場企業の取り締まりに従事している。
威厳があって厳しいし、会社でも父親は部下達にガミガミ文句を言い散らしているらしい。
コメカミに痛みを感じながら僕は鞄を持って、朝ご飯も食べずに学校に向かった。
学校に行きたくない、学校に向かう度に足がすくむ。
コメカミが痛いよ。誰か助けてよ。
そこで頭の中に昨日テレビで言っていた事を思い出した。
『学校に行きたくないなら図書館においでよ』
と。
図書館に行ってみようかな?
でも学校を休んだことが親にばれたら、僕は父親に大目玉だ。
でも学校に行きたくない。
僕に心安らぐところがない。
ここから図書館に行くには隣町まで歩いて行かなくてはいけない。
行こう図書館に。
図書館に到着して、自動ドアが開きだし、僕は中に入ってしまった。
恐る恐る入ると、中は年寄りでいっぱいだった。
僕のような中学生はこの中にはいない。
とりあえず空席に座って、鞄を抱きしめながら終わったと思った。
学校をさぼってしまった。僕は帰ったら母親や父親に半殺しにされる。
だったら家出をするしかないな。
図書館は静かで高齢者の新聞を開く音だけが響いた。
僕はうずくまって鞄を抱きながら震えていると、僕の肩を小突く感覚がした。
恐る恐る顔を上げると、円らな瞳にブロンド色の髪に整った顔立ちに灰色のスーツ姿の女性が僕の前に現れた。
「ねえ、君、学校は?」
そう言われてさぼってきたなんて言ったら何か後ろめたくなり、黙っていた。
「やっぱり来てくれたんだね。君昨日のニュースを見て図書館に来たんでしょ」
「はい」
「そっか」人差し指を唇に触れて、「図書館は楽しいところだよ。君はライトノベルや漫画なんかに興味はない?」
「ライトノベルは読んでいないけれど、漫画なら」
「じゃあ、漫画のコーナーに行こう」
そう言って僕の腕を取り、僕は立ち上がったと同時に鞄を落として、そのまま女性の行く方向へ漫画のコーナーに向かった。
漫画コーナーに誘われて、女性は「君はどんな漫画を読むの?」
「ドラゴンボールとか・・・」
「ドラゴンボールかあ、それならあるよ巻数全巻」
ずらりとドラゴンボールが並べられていた。他にもハンターハンターやマギや七つの大罪などがある。
僕は心がときめいた。
僕の家では漫画は禁止されていて、買ってはいけないことに父親に言われている。
僕がドラゴンボールを読むと引き込まれるように読んでいった。
「どお?気に入った?」
「はい!」
ドラゴンボールこんなに面白い物語だったなんて、次々と読んでいって僕は読むことに没頭していった。
面白い。本当にこれ全巻読んで良いのかな。
図書館がこんなにいい場所だとは思っても見なかった。
十巻ぐらい読んで僕はさすがに面白いけれど、目が疲れて、ちょっと休憩にしようと思った。
それにお腹も空いてしまった。
今日は新学期が始まったばかりで、お弁当を用意していない。
すると漫画を進めてくれたお姉さんが来て、「ねえお腹空かない?」
「ええ、まあ」
「じゃあ、お姉ちゃんが何かごちそうして上げるよ」
「そんな、そんな事をしてもらう義理なんてないでしょ」
「そういえば君何て名前なの?」
「木ノ本アツジです」
「へえーアツジか、これからあっ君って呼んで良い?」
「別に良いですけれど」
「私は西本光、光って呼んで良いからね」