第1話 異世界の真実
4年前、異世界に巻き込まれた健太はウルフに助けられ、どの様な人生を歩んでいるのか?
その生き様を描くのだが、この異世界はなんと・・・
俺の名前は木下健太、まだまだ学舎に通わなければならない16歳。
あの事件からあっという間に4年が経った。本来なら高校生だが、俺がいる世界では高校だの中学だの言うのはない。あるのは学舎一つだ。
この異世界に来てから、この世界の言葉を聞き、喋り、会話が出来るようになるまで2年かかった。ここの国ピカトーレンに住んでいる人間は約800人、いや、この異世界には人間は800人しかいないらしい。しかし、人間の他にも様々な種族が存在するのだ。例えば、異世界に来た時に襲ってきたオークや猫も別種族だ。もちろん助けてくれたウルフもそうだ。命の恩人のジャスラックは、我が国を代表する先陣隊長、今も何処かで我が国を守っている。もちろんの事だが、俺の両親はこの世界にいない。それをどう思ったのかわからないが、今はジャスラックの紹介で、風車の廻る祈祷場が俺の家で、そこで働きながら学舎に行っている。祈祷場は俺たちの世界で考えたら教会の様な場所で、俺だけでなく、親を戦争で亡くした者が俺を含み6人程いる。まぁ、孤児院みたいな教会と言えば分かりやすいかもしれないが、居心地は悪い。何故ならば、そこにいるクソジジイ、ウルフの・・・
「こりゃ〜!健太!キサマ、まだ庭の掃除を適当にやりやがって!」
そう、ウルフのアラフだ。もちろん住ませてもらっている事は感謝しているが、いちいちうるさい。勉強しろだの掃除しろだの御飯つくるの手伝えだの本当に細かいジジイなのだ。しかもウルフの足は人間よりも早い、尚且つ4つ足で走ると車並みだから逃げれない。
そんな事から今回も
「はーいはいはいな!ちゃんとやりゃーいんでしょやりゃー!」
この会話がいつものパターンだ。
今日も朝から庭掃除ごときで俺は怒られてしまった。
とはいえ、怒られているのは俺だけではない。
「じゃから、違うわボケー!さっさと塩をふれー!」
怒られているのはおそらくリザードマンのマルスとノーラであろう。クッソー、今日の掃除当番は人間の俺とリサ。マルスとノーラは料理当番、洗濯担当はウルフのデニスとロビンと、種族ごとのグループに分けられてはいるものの、人間の俺の相棒リサは俺と性格が反対で全く折り合いが合う気がしない。学舎ナンバー1の成績を誇り早寝早起き1番乗り、リサだけはアラフのクソジジイに認められている。歳は俺の一つ下の女だが、力だけはバカがつく程の力持ち。将来はピカトーレンの王になりたい等と夢を見てるバカ女だ。俺自身、嫉妬しているわけではないと思うんだが、俺はリサが嫌いだ。まぁ、ほぼ毎日喧嘩はしているわけなんだが、そもそも、アイツはすぐ・・・
バシ!
「あんた。何度言わせるのよ!掃除はねぇ、上からやっていくものなのよ!」
「いってえな!!何も頭を叩く事ないだろ!?」
「叩けばわかるんじゃないかと思ってさ」
本当にムカつく女だコイツは。
とはいえ、リサも俺をいつもムカつくと言っているからお互い様ではある。
リサがこの祈祷場に来たのは3年前。両親をオーク達に囚われ行き場のなくなったところをアラフじじいが引き取った。そんな、事情だから、リサにも可哀想なところはあるのだが、一日中怒ってるような奴と正直一緒にいたくはない。
等とリサにイライラしていると、時間が過ぎている事に気付いた。
「やべ、このままじゃ学舎に遅れる!もう流回矢が1周してるじゃねーか!」
ササっと掃除を済まし、全員でご飯を食べる。ここから学舎までは歩いて流回6分の1かかる。
流回矢ってのは早い話時計だ。時計が24時間なら流回矢は4時間しかない。つまり長い針が24周して1日を示す時計に対し、流回計は4周なのだ。とはいえ。この異世界にも太陽があり、朝、昼、夜がある。地球と変わらない恐らく24時間だと思う。流回計の1周は時計で例えると6時間だ、それの6分の1だから、学舎までは1時間かかるのだ。
「よし、食った!デニス、ロビン、学舎行こうぜ!」
いつも学舎にはこの2匹?いやこの2人と行く。仲は良いし、朝飯食べるスピードが俺と一緒だから、一緒に行くのが習慣ついてきた。まあウルフ族って狼や犬系だから食うのも足も早いから俺と気が合う。
それとは真逆にリザードマン達は足が遅い。マルスとノーラは兄妹らしいが、何をするのも遅い。正直イラっとする事は多いが、力を蓄えて一気に放出する不思議な力を持っている種族だそうだ。
俺やリサの人間はウルフ族とリザードマンの3種族と国を築き、ここ、ピカトーレンが出来た。しかしこのピカトーレンと対立する国が2つある。
一つはアニルハ国。この国の主な種族は猫族が占めている。俺がこの異世界に来た時に、馬に乗って追いかけてきた猫族を見て以来見てないが、猫族には奴隷としてピクシーがいる。そのピクシーが厄介な種族で猫族に服従し、偵察に来ては盗みを働きアルニハへ持って帰るという手口を繰り返す、言わばアルニハ山賊と言われており、アルニハ山脈一帯を支配下にしている。
そしてもう一つはミナハブ帝国だ。うちのピカトーレンに比べて3倍は大きく、軍事力もあるらしい。
エルフが主体の国で、オークと共に同盟を結んでいる。基本的に知略に優れたエルフに敵はいないが、オークの力のみで戦おうとする欠点がある帝国。それがミナハブ帝国だ。
この3つの国は150年前から対立し、血を流してきた。ここ5年は大きな戦争はないらしいが、10年に一度は大きな戦争が起こるらしい。
それぞれ戦争目的があるらしいが、戦争理由の歴史を調べてもはっきりとした理由がわかっていない。
しかし領土拡大してその場所に自分達の種族を増やすというのは生き物の本能なのかもしれない。
噂ではエルフは長寿で250年生きるという。エルフの人口は2万と聞くから攻められてしまうと想像したくはない。
まぁ、この異世界にはいろんな摩訶不思議を見てきた。正直早く日本に帰りたい。
等と考えながら学舎に向かってる途中、突然デニスが言いだした。
「そうだ、健太よ、アルニハ山脈の手前辺りに3日前に空からデッカい石が降ってきたのは知ってるだろ?」
「ああ、あれか?隕石じゃねえかあれ?」
「インセキ?なんだそれ?猫達の新兵器か?」
どうやら隕石はこの異世界には珍しい表現だったみたいだ。とはいえ隕石とは限らないし、デニスの言う通り、猫達の新兵器かもしれないのだ。
「わかった!デニス、ロビン、勉強終わったら見にいくぞ。」
「よっしゃ!リサ達はどうする?」
どうする?っていかにも連れてってあげようよー見たいな顔でロビンは言ったが・・・
「いや、やめとけ、アイツが絡むとまず行く事を阻止されるかジャスラックにチクられる。それにリザードマン達が来てみろよ、アイツらは遅いんだから、猫に見つかったらやべえよ」
それを言うとロビンも納得した表情をしてくれた。
と思ったのも一瞬であった。
「へぇ〜、今回はあたしも連れてってもらおっかな〜。」
「ゲッ!!リサ!!」
なんでこんな時にリサがいるんだ!
いつもは学舎にいく時は近くにいないのに・・・
「不思議な岩がアルニハとピカトーレンの境目に落ちた話は私も知ってる。あんた達ならきっといつか行くんじゃないかと思ってたわ!?」
さすが人間の女の勘・・・
「でね、でね、あの地域ってさ。アラフのじいちゃんが言ってたんだけど、古代遺跡が過去に発掘されたらしいんだけど、その遺跡にあたしすっっっっごい興味あるのよ。お願い!連れてって!!」
以外だった。確かに勉強等に興味のあるガリ勉リサが今、目を輝かせている。
「健太、いんじゃねーか?以外とリサは反射神経良いから役に立つぜ?」
デニスは賛成のようだが、こういう時に女になり、おねだりするリサには頭にくる
「いや、ここは俺達3人で行く!お前らはまっすぐ帰れ!」
って言ってしまった。なんかスッキリした。リサめ、ざまーみろ。
「ふ〜ん、そういう事を言うんだ?また勝手な行動して、ジャスラックに見つかってしまってもなんともないんだ?」
ギク!
「猫族と出会ってしまい、もしなんかあったら、アラフじいちゃん、祈祷場にいられなくなるし、自分達もいられなくなるんだけどいいのかな?」
ドキ!!
「私達6人いたらさ、まず見つかりっこないよ、チーム祈祷の連携さえあればさ!」
・・・
「わ、わかった、リサ!お前も連れて行くから、ジャスラックだけには言わないでくれ!何度も助けられているし、もう迷惑かけたくない、だから4人で現場に行くように変更するから・・・へ?6人?一体どういう意味だ?」
「どういうってマルスとノーラも連れていかないと、猫が出て来たら私たちだけじゃ逃げ切れないわ!?」
むぅ、確かに俺たち6人が揃えばとりあえず陣形は作れてある程度の戦いはできる。
「でもあのリザードマン達興味ないんじゃないか?」
「学舎授業終わるまでに何とかしてね、健太!」
エッ?
俺があいつらを説得しないといけないのか?
とはいえ、今の俺は立場的に不利である。
「わかった!あいつらを説得してやろうじゃないか!任せとけ!リ・・・」
い、いない?もしかして言いたいことだけ言ってさっさと学舎に行きやがったのか。やられた、とはいえ、マルスとノーラをどうしたら隕石落下の場所まで連れて行くか、学舎に行きながら考えなきゃな。あいつらは食い意地は悪い。そこを狙って説得をしよう。
流回矢が2週した。昼の12時みたいなもんだ。
この世界では昼飯はない。1日2食、朝飯と晩飯が定番で、稀に間食ておやつ、つまみ食い、食い逃げ等で生活している。
ん?おやつ!それだ!俺はひらめいた。
学舎の丁度休憩時間にタイミング良く目の前にマルスとノーラがいた。
「おーい、マルス達〜、学舎終わったらよう、チーム祈祷孤児6人でカリチュパの実を食べに行こうぜ!?」カリチュパの実はコイツらリザードマン達の大好物だから嫌とは言わないはずだ。
「へ?カリチュパの実って今のシーズンじゃないと思うんだけどどこにあるの?」
しまった!そうだった。カリチュパの実は後90日先だった。
「なんか、アルニハに近い場所なんだけど、一年中カリチュパの実がなる場所があるらしいぜ?」
って言ってみたが、普通に考えてそんな単純な場所に食い物の木があるわけない。ここは別の手を考えて・・・
「わかった!楽しみにしてる!みんなで行こう」
「お・・・おう」
そうだ、リザードマンはオーク同様そこまで頭は良くない。単純な奴らで助かった。これでリサに顔向けできる、ウシシシシ。
そうして流回矢が今日2週半したところで、学舎が終わる。学舎を出て南へまっすぐ進むのが帰る道だが、目的地は西にある為、西へと歩く。6人だけ。
目的地はそこまで遠くなく、野原を歩く事の多い難しくない道のりだ。横にはきれいな川が流れ、湿っ地帯を得意とするリザードマン2人は川を渡ったり野原を歩いたりを繰り返している。一方で、ウルフの2人は歩くスピードが早く、なかなか落ち着かない様子。
「遅い!早く行こうぜ!?」
って既に4回聞いた言葉だ。意外にもその言葉に対し、リザードマンのマルスとノーラは受け応えており、急いでいる様子。俺とリサはマイペースなもんだった。
そして、荒れ始めた坂道を登りきったデニスが
「ついた?ここじゃないか?」
と丘の上で言っている。隣のロビンも丘の向こう側を見ていた。
俺やリサ、マルスやノーラも小走りになり丘の上までたどり着いた。そして一体何があるのか見てみた。
そこは、本当に隕石だったのか、大きな物体が落ちてきて、円形に地面をえぐり出したような光景であった、半径50メートルくらいはありそうだ。
「よし、このえぐられた場所に移動しよう」
俺達6人は丘を降る。丘とはいえ元々は丘ではなく、隕石がきっとこんな形にして丘になったのだろう。丘を降りるとそこには俺にとって衝撃的な物が目に写った。
「なあ、健太、これって遺跡じゃない?」
とリサは言う
「カリチュパはどこだどこだ?」
2人声を合わせてマルスとノーラは騙された実を探している。
「かなり昔の遺跡じゃないか?古代文字も書いてある」
とデニス
「こっちは教科書で言ってた古代の箱じゃないか?」
ロビンはそう言っているが・・・
改めて俺は考えた。
これは遺跡なんだろうか、古代文字はスピード落とせと日本語で書かれた看板、50と書かれた制限速度50キロの標識、古代の箱は車だ。俺は思わず日本語で
「スピード落とせ?なんだここは、ここは異世界じゃないのか?」
と、言ってしまった。
「すぴいど?健太大丈夫?あんたってたまに独り言言うけど。わけのわからない言葉使うよねー」
リサに言われてしまった。
「なあ、リサ!この遺跡って何年前の物かわかるか?」
こいつは頭が良いからもしかしたら知っているかもしれない。
「教科書によると確か3億年以上前って書いてなかった?健太あんた教科書見なさいよ!」
3億だと!3億年前にもしかして日本は、いや、地球は無くなった?3年前に地球がなくなった?俺がタイムスリップした?
等と考えていると頭が痛い。しかも良くまわりを見るとまだまだ遺跡の爪痕が見えてきた。
道路と思われるアスファルト、そして屋根の瓦、劣化したガードレール、そしておそらくテレビだろうか?俺が住んでいた環境の数々だ。その中で1番目についたのが、
「この標識・・・勝利塾の看板・・・」
俺が通っていた勝利塾の看板だろうか、かなり錆びれてはいるが見つかった。間違いない、ここは異世界じゃない。地球だ!
「ほほう、ニャンとお主この古代語が読めると見える。詳しく聞かせてはくれんかの?」
「誰だ!」
聞き慣れない声に、俺達6人は円陣となり身構えた。
「フォッフォッフォ、ガキなんざ取って喰いはしないさ」
猫族だ、しまった、出来事が衝撃すぎて警戒心がなくなっていた。
第2話に続く