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2話 リリゼットの半生




リリゼットの前世、高城綾奈は何処にでもいるゲーム好きの普通の女子高生だった。


綾奈は高校卒業記念として幼馴染の親友、橋下美香(はしもとみか)と一緒に高校生の懐に優しい格安バスツアーで旅行に出かけ高速道路にて飲酒運転のトラックが乗っていたバスにぶつかり、そのまま崖から車体が転落して命を落とした。


そして気が付けば…死ぬ数ヶ月前に親友から借りてプレイしていた乙女ゲーム『聖天使アリシア』に登場する悪役令嬢リリゼット・アルガリータに転生していたわけである。


リリゼットに転生して彼女が『聖天使アリシア』の悪役令嬢(リリゼット)に転生したと気づいたのは7才になって暫くしてからだった。


『聖天使アリシア』の悪役令嬢リリゼット・アルガリータは公爵家の生まれで蜂蜜色の長い髪、黄緑色の瞳の美しい容姿をしており守護獣と呼ばれる白き獣の姿をした精霊獣に守護された国ガルヴァンという国にある貴族の学園に通っていた。


リリゼットは在学中にゲームのヒロイン(アリシア)に数々の虐めを行ったことで婚約者のエドワードを含めた攻略キャラ4人からの制裁で命を落としたり、運良く学園の卒業パーティーまで生き残ったとしても婚約者のエドワードから婚約破棄を言い渡され国外追放もしくはギロチンで処刑されてしまうというどう足掻いても絶望でしかない末路を辿る悪役令嬢だ。


せめて別の中位貴族とでも婚約をすれば学園卒業後の人生はまだマシになったかもしれないが彼女の前世の記憶がはっきりした頃には既にガルヴァン国王夫妻に気に入られエドワードと婚約した後だった。


まだ当時7才でこの国の第一王子と婚約するには早過ぎると両親に相談しようにも今世の両親はリリゼットには無関係でアルガリータ家の威信を保つ為の道具としか見ていない。


『こんな両親じゃゲームのリリゼットは捻くれて育つわな』とこの両親を見て率直に当時幼かった彼女は思った。


そしてノートに悪役令嬢(リリゼット)の末路を思い出しながら今世の自分は『聖天使アリシア』の世界でどう生きたいのかを日本語で書きながら目標を立てた。


そして結論は前世は平民だった彼女には貴族の生活や常識が苦痛で貴族出身者の攻略キャラと結婚する気もなかったので彼女が目指したのは婚約者(エドワード)から婚約破棄をされた後の国外追放ルートだ。


こうして前世の記憶と知識を周囲に隠し、自身に無関心な両親の態度に耐えながら最悪な末路を辿らぬよう彼女なりに"リリゼット・アルガリータ"を演じながら生きてきた。


彼女の生死が大きく関わる学園生活ではエドワードとアリシアに極力関わらず授業以外は食堂のおばちゃん方と仲良くなり調理室を借りて菓子を作ったり学園内の庭園にいる野良の精霊獣と戯れたり他の攻略キャラとなんだかんだで仲良くなったので会話などをして過ごしていた。


『聖天使アリシア』の世界に彼女が転生したなら会いたいと願った人物がいたのだがその人物に会えば自身の死亡フラグが立ってしまう恐れがあったので会えなかったのだ。


その人物とは…、素顔不明、台詞は一言しかない悪役令嬢リリゼットがアリシア暗殺を依頼した暗殺者だった…。


『その依頼、確かに承った』


前世で『聖天使アリシア』をプレイしていた時に少しばかり低い声をした暗殺者のこの台詞を聞いた瞬間、彼女の脳内でゴォーンと鐘が鳴った。


この声に彼女は恋をしてしまったのだ。


彼の声を担当したのは攻略キャラを演じているような有名な声優ではないのだが何度もリリゼットが暗殺依頼をするシーンのセーブデータを個別に保存して何度も聴くほど只々この声と台詞を彼女は愛した。


だが彼は暗殺者、リリゼットの依頼でアリシアを襲撃した際に側にいたエドワードが魔法で放った氷の槍に貫かれ命を落としてしまう…。


普通のプレイヤー側から見ればメイン攻略キャラがヒロインをカッコ良く助ける図のスチルでも綾奈からすれば推しキャラ死の瞬間でしかなかった。


あまりのショックに綾奈はこのスチルを初めて見た後1週間寝込み、冬休みを浪費した。


彼女がエドワードに一切恋愛感情が湧かなかったのはゲームでの第一印象が『(おや)権力(ちから)と金が無ければ自分一人で何もできなさそうな顔と声をしたボンボン』だったのと『暗殺者さんのカタキ!』というのがあったからだ。


だから正直、学園にアリシアが編入してくる前までは纏わりついてくるエドワードを態度や感情が顔に出ぬよう嫌々ながら対応していたがエドワードがアリシアに夢中になってくれて万々歳だった。


それでも会いたかった人物は暗殺者という裏稼業の人間だ。


少しでも関わろうとすればエドワードとアリシアから有らぬ疑いを掛けられてしまう危険があった。


誰だって自分の命は惜しい…。


だから彼女はエドワードから婚約破棄を言い渡されて国外追放追放されてから彼を探してみようと考えていた。


そして卒業パーティーにて彼女に訪れた断罪。


「リリゼット・アルガリータ。お前との婚約はこの場をもって破棄させてもらおう!」


というエドワードの婚約破棄宣言を聞いた彼女は怒ったり悔しがるどころか…。


『婚約破棄!?いやっふぉーい!!』


と内心ではこれまでにない程の歓喜の声を上げていた。


婚約破棄をされ早々に卒業パーティーを抜け出しウキウキ気分で彼女は屋敷へ帰り父から縁切りと国外追放通告を心待ちにしていたというのに彼女に訪れたのは…アリシア暗殺容疑による拘束…。


そしてリリゼットは有罪判決を受け処刑3日前に自害した。


だが自害したはずの彼女が次に目覚めた場所は天国ではなく馬車の中だった…。



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