横断歩道
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
大学へと向かっている最中。
信号につかまった。
T字路で比較的交通量が多い。
商店街も近く、人通りも多い。
携帯でも使おうかと思い、ふとそれでも時間を見ると。
「あれ?」
声をかけられた。
そんな気がした。
で、前を向いたら、彼女がいた。
手を振る彼女は、緑を少し濃くしたようなモッズコートを着ていた。
ファーが風に吹かれてふわふわと揺れているのが見える。
「おーい」
こっちも手を振り返す。
彼女はそれで立ち止まってくれた。
青信号に変わると一目散に彼女のところへ駆け寄る。
「偶然だな」
「今日は1時限目から。そっちも同じでしょ」
「まあな。おかげで出会えたわけだが」
「いつもあなたが遅刻ギリギリで来るからでしょ」
「だってあの教授、出席取らないからな。こうやってきてるだけでもマシな話だろうさ」
ケケと笑う横で、彼女は何やら怒っているようにも見える。
「ま、ま。怒るよりも笑っているほうが可愛いぜ」
いうと、彼女は、少し俯いて、それから俺に笑いかけてくれた。
今日も、ずっといい天気になりそうだ。