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勇者パーティーから追放されたナイトが国やパーティーを追い出された者に出会う話



土の四天王「くっ……私は四天王の中でも最弱……それを忘れるな。ぐふっ……」


 魔王軍四天王の一人、土の四天王は倒れた。


 しかし、喜ぶ声は聴こえない。満身創痍の勇者PTはその場で腰をおろす。強敵との戦闘で疲れきっていた。


 賢者は蔑むような目をナイトに向けた。


賢者「今回の事ではっきりした。ナイト、お前をPTから追放する」


ナイト「なっ!どうして……!」


 聞き返しながらも、ナイトには心当たりはあった。自分でも前々から思っていた事だ。


賢者「盾持ちがタゲ固定出来ないなんてあり得ないだろ!」


 そう、最近は敵対心(ヘイト)をどんなに稼いでも後衛を狙う事が多くなっていた。


 忍者が笑いながら話しかけた。


忍者「ナイトさんがそんなに残りたいなら今度から素手にしましょうか?」


ナイト「黙れ! ……これには理由があるのだ」


賢者「皆で話し合った結果、決まった事だ。消えろナイト。装備は置いていけよ?」


 こうしてナイトは追放された。




 数ヵ月後―――

 

 なけなしの金を渡され追い出されたナイトは一番安い剣と革製の防具を買って、その日限りで消えるような駄賃で魔物退治をして過ごしていた。


ナイト「あいつらは大丈夫だろうか」


 今日の魔物退治を終えたナイトは空を見上げ、追い出されたPTを心配していた。


 その時、遠くから悲鳴が聴こえた。女の声だ。鉄がぶつかるような音も聞こえてきた。


 急いで向かうと、馬車を数匹の魔物が襲っていた。


ナイト「今助ける!」


 装備は安物でも元勇者PTだ。一瞬で魔物を切り伏せた。


 魔物に驚き、腰を抜かした従者に声をかける。


ナイト「大丈夫か。お怪我はないか?」


従者「え、ええ。ありがとうございます。お強いのですね」


ナイト「当然の事をしたまでだ。今度から気を付けろ」


???「お待ち下さい!」


 無事を確認したナイトは謙虚にも去ろうとしたが、馬車の中の人物が呼び止めた。中から出てきたのは綺麗な女性だ。


従者「いけません! お戻り下さい。聖女様」


聖女「助けられてそのままという訳にはいかないでしょう」


ナイト「聖女?」


聖女「はい。ナイト様、お噂は聞いております」


 噂、という言葉にナイトは反応した。役に立たず勇者PTから追い出された、というのは噂になっていた。


ナイト「聖女様に覚えて貰えていたとはな」


聖女「いえ、私は国を追い出され、今は聖女ではありません」


ナイト「馬鹿な! 聖女を追い出すなどありえない!」


 聖女は国を守る結界の要となる存在。不在となれば国の一大事。魔物が攻めこむ絶好の機会だ。


聖女「新たな聖女が現れました。私の力を大きく越えています。あの方が入れば国は大丈夫です」


ナイト「そうですか……それはなんとも……」


聖女「ですので、あなたの力になるために向かっておりました。今は聖女では無いので少女とお呼びください」


ナイト「なぜ俺に……?」


聖女「昔、お会いした時に……その……一目惚れです!」


 こうして元聖女である少女を連れて行く事になった。




 少女を連れたナイトがギルドで魔物退治の報告をしていると、冒険者PTが喧嘩していた。


冒険者A「お前役に立たないんだよ! PTから出ていけ!」


狩人「お、俺だって精一杯やっているんだ」


冒険者B「黙れ寄生野郎! お荷物はとっとと消えろ。装備は置いていけよ」


 どっかで聞いた話だった。ナイトは興味を持ち、PTを追い出された冒険者の元へ向かった。


ナイト「おい、大丈夫か?」


狩人「ナイトさん! 恥ずかしい所を見せてしまいました。僕は役立たずでした。当然です」


 ナイトと少女は話を聞いた。


 落ち込んでいた冒険者は、狩人であった。追い出されたPTでは索敵と遠距離からの狙撃を担当していた。


 先日、新しくPTに入った魔法使いは火力があり、索敵をする能力も高い。そして可愛い女の子だった。男だけのPTに訪れた一輪の花。


 魔法使いが加入した時点で狩人の未来は決まっていた。


狩人「だからいいんです。放っておいてください」


ナイト「お前それで良いのか?」


狩人「えっ?」


ナイト「俺が見た所によると、お前には才能がある」


 その言葉に狩人は驚き、目を見開いた。


狩人「……えっと?ありがとうございます。でももうPTは」


少女「遠回しに言うから誤解されるのですよ。ナイト様はこう言っています。俺達のPTに加わらないか、と」


狩人「良いんですか! こちらこそお願いします」


 少女は笑顔でナイトとのPTに狩人を加えた。


ナイト「いつPTを組んだんだ?」

 

 こうして狩人が仲間になった。




 数ヵ月後――― 魔王城にて


王子「貴様は王として、相応しくない! 人間と和平などありえない。よって貴様を倒し、俺が魔王となる」


 魔王国第一王子は自分の父である魔王に向かって宣言した。


魔王「いつまでも争っていては国が疲弊するばかりだ。王として、よく考えろ」


王子「ふん、黙れ、老いぼれが。貴様の力だけは頂いてやる」


魔王「なにを……ッ!?」


 第一王子の体から滲み出す闇が魔王に絡み付き、力を奪い取っていく。


魔王「くっ……なんだこの力は! まさか禁術……ッ!!」


王子「ふはははは!素晴らしい力だ。これで貴様も用済みだ」


 玉座から転げ落ちる魔王を踏みつけ、第一王子は宣言した。


王子「今から俺が魔王だ!魔族は俺に従え!」


 新たな魔王の誕生に魔族は沸き立った。


魔王「くっ……このままで済むと思うなよ」


 絞りカスとなった魔王は最後の力を使い、魔王城から遥か遠くまでワープした。


王子「ふん、雑魚が……負け犬の遠吠えとは良く言ったものだ」


部下「よろしいので?」


王子「捨て置け」


 部下の言葉に適当に返事をしながら、王子は玉座へと座った。




 ナイトは三人で森へと探索に来ていた。


ナイト「やはり連携は最高だ」


少女「上手く決まりましたね」


狩人「ナイトさん格好良かったです」


 絶対に破れない強固な要塞と化すナイト。

 

 全てを阻む結界と回復能力を持つ少女。


 遠く離れた場所からも狙った場所に百発百中の狩人。


 PTを組んでから徐々に連携が合うようになってきた三人はギルド内でも有数のPTとなっていた。


ナイト「あと一人、前に出て戦える仲間が入れば俺達はもっと上へいける」


狩人「ナイトさんを抜ける魔物がいるとは思えませんが……」


少女「前衛最高のトップランカーですからね」


 三人が仲良く話していると、ガサリと茂みに何かが落ちる音が聞こえた。


狩人「僕の索敵で見つけられないなんて……!」


ナイト「何者だ。出てこい」


???「その声はナイトか?」


 この声、いや……まさか、とナイトの脳裏によぎった。勇者PTと旅をしていた時に聞いた魔王の声に似ている気がした。


魔王「どうやら成功したようだな」


 茂みから現れたのは老いぼれた魔族であった。


ナイト「貴様……魔王か?」


狩人「魔王!?」


魔王「いかにも……ッ! と言いたい所ではあるが、今の我は魔王国から追放された、ただの老いぼれよ」


少女「確かに魔力を感じません。これで魔王だと名乗られた方が疑わしいぐらいです」


 少女の言葉に狩人は警戒を緩めた。


ナイト「魔王は剣技も一流であったと聞く、警戒を緩めるな!」


 ナイトの言葉に狩人は顔を引き締めた。


魔王「ふははは!」


ナイト「何がおかしい?」


魔王「いや、なに。魔力を持たぬ我をそこまで警戒するとは魔王冥利に尽きるというものよ。ナイトよ、我と手を組まんか? 世界を征服した暁には世界の半分をやろう」


ナイト「断る」


魔王「冗談だ。力を貸して欲しい。このままでは我が国民に多数の死者が出る」


ナイト「聞こう」


 魔王は経緯を話した。


少女「なるほど……つまりただのお爺ちゃんという訳ですね」


魔王「うむ、少女よ、その通りである。ナイトよ、これでも手を貸してくれんか?」


ナイト「……勇者たちはどうした?」


魔王「そんな奴等もいたな。勇者はナイトに謝っておった。追い出してごめん、とな」


ナイト「……そうか」


 ナイトは腰の剣に手をかけた。慌てて少女が抑えにかかる。


少女「だ、駄目です! ナイト様。一大事ですよ!」


ナイト「勘違いするな」


少女「えっ?」


 腰の剣を抜くと、魔王に手渡した。


ナイト「お前の力を見せろ」


魔王「良いだろう」


 魔王はニヤリと笑うと剣を鞘から抜く。「安物じゃな」一言いうと目の前に木に向かって剣を振る。


 狩人達からは一度しか振ってないように見えたが、木は細切れになった。


魔王「こんなものだ」


 剣技の反動で貸した剣は半ばからポキリと折れた。


 こうして魔王が仲間に加わった。




 その夜、宿屋にて


 ナイトは一人、夜空を見上げていた。


ナイト「こうした月夜の日は昔を思い出す」


少女「昔、何かあったんですか?」


 物陰から少女が話しかける。ナイトは無言で夜空を見ていた。


少女「返事くらいしてくれてもいいじゃないですか」


ナイト「今日は月が綺麗だ」


少女「クスッ。何ですか、急に」


 ナイトはそれっきり無言だった。少女はそんなナイトの隣に座ると一緒になって月を眺めた。




 次の日、四人は集まり予定を立てていた。


ナイト「魔王……お前の息子を倒せば終わるのか?」


魔王「いや事態はかなり深刻だ」


 魔王の説明によると世界の敵が現れたらしい。奴等は色々な国に潜伏しているようだ。目的は全ての生物の消滅。魔王国の王子も世界の敵から力を与えられ従っているようだ。


ナイト「なんだそれは? そいつは何がしたいんだ」


魔王「奴は安眠こそが真の目的だ。生き物が増えて、世界が(うるさ)くなったからこの世から消し去りたいらしい」


少女「なるほど、寝太郎さんと名付けましょう」


狩人「少女さん、そんな事いってる場合では……」


魔王「まずは近い国から奴の力を与えられた信奉者を倒す」


少女「……近いというと結界を張っている国ですか?」


魔王「ああ、そうだ」


少女「聖女とか言われていたり?」


魔王「少女が追い出されたのは邪魔だったからだな」


少女「よし! そこは最後にしましょう」


ナイト「まずはそこから攻めるとするか」


 ナイトの決定に魔王と狩人は頷いた。少女だけはイヤイヤと首を振っている。


少女「ナイト様とずっと一緒にいるのー! 倒したら聖女になっちゃう!」


 こうして、世界を救う為の旅が始まった。





 遠い未来―――


 魔王、少女、狩人はあるべき場所へと帰った。ただ一人、ナイトだけが寝太郎に挑んでいた。


ナイト「くっ……強い。このままでは……!」


寝太郎「良くぞ我相手に、ここまで粘ったものだ。トドメだ」


 ナイトに強大な力が迫る。


ナイト「くっ……」


 人影が攻撃を防いだ


勇者「よぉ、ナイト。お前のせいで国を追い出されたぜ」


ナイト「勇者……? お前、死んだはずじゃ?」


賢者「やれやれ……。貴方を追放した事は謝りません」メガネクイッ


ナイト「賢者!」


忍者「空蝉だ」


ナイト「忍者!」


勇者「今だけは力を合わせてやる」


賢者「勇者PTの復活だな」


ナイト「ああ、お前らが入れば百人力だ」


 更に人影が駆けつけた。


???「もう俺には縁のない話しだと思っていたんだがな……。家を追い出されてしまっては仕方がない」


???「こいつかっ!こいつのせいで俺は国を追われた……ッ!!」


???「倒した所で追放された事実は変わらない。無意味だ」


???「へぇ、俺以外にも『追放されし者』が存在したんだ……」


???「これで……これで終わりだ。俺は追い出されたなど認める訳にはいかない!」



 以下延々リピート


===========

======

===



寝太郎「馬鹿な……ッ! なんだこの人数は……。あまりにも卑怯ではないか! 私は寝ていたら住んでいた星から追い出された。だから生物のいない星を探しだし、安住の地として寝ていたかっただけなのに」


ナイト「貴様も追い出されたのか」


寝太郎「そして貴様の真の敵は我ではない。奴の名は『全てを追い出す者』。このままでは宇宙が追い出されてしまう」


 地響きが鳴り響く。


ナイト「な、なんだ?」


寝太郎「奴め、もう嗅ぎ付けてきたか。ナイト、手を貸せ。奴は『追放されし者』でないとダメージを与える事は出来ない」


ナイト「ああ、良いだろう。俺には帰るべき場所がある。行くぞ!」



 to be continued...




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