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第二十三話

第二十三話です。

「あ、そうだ。君からユーリに言っておいてくれないか?」

「優利ですか? もしかしてあいつジェイクさんにご迷惑でも……」


 互いに席から立ち上がりその場を移動しようとした時、ジェイクさんがこちらに話しかけてきた。

 どうやら優利についてだが、なんだろうか?


「迷惑ってほどじゃないんだけど、彼に派手に動きすぎないようにって伝えておいてくれないかな?」


 あいつ結構派手なことしてるのか?

 あの悪魔はどんな手を使って情報を集めているか想像もしたくはないけど……ん? 彼?


「ジェイクさんは優利が男だって知っているんですか?」

「立場上、人を見る目はあるからね。それで……彼なんだがね。あまりうちの職員から人気を集めると、彼が男と知れた時の衝撃が計り知れないものになりそうなんだ。うちの仕事上、職員に穴が出るのは非常に困るからさ……」

「あいつにはきっちりと説教しておきます」


 一度、優利には倫理観とかその他諸々を教えなくてはならない気がする。

 いつかとんでもないことをしでかしそうな親友の姿を思い浮かべた俺は、頷きつつもギルド長と別れの挨拶を済ませ、冒険者たちのいる広間へと戻る。

 まずは優利を探すか。多分、そこらへんにいるだろうし。

 昼時になって人が混んできたんか、先ほどよりもギルド内には人が増えている。

 周囲を確認しながら優利を探していると、肩に誰かがぶつかってしまい軽く突き飛ばしてしまった。


「ふぐ!」

「っ、あ、すいませ——!?」


 明らかにこっちに非があるのですぐさま手を指し伸ばして、息が止まる。

 ギルドの床にしりもちをつき、腰を押さえていたのはつま先から頭までを包み込むような真っ黒な外套を纏った人物だったからだ。


『頭からつま先まで黒い外套で覆っている怪しい奴よ』


 女神の力が及ばず、尚且つ警戒するような存在によりにもよって俺はショルダータックル気味にぶつかってしまったのだ。

 どうしよう、次の瞬間首が物理的にとんでいるかもしれない。


「え、えと、その……」


 その人物……彼? いや、声からして彼女か?

 彼女は俺が差し出したまま止めた手を戸惑うように見つめ恐る恐る手を伸ばしてきた。

 まるで、自分が手を伸ばしていいのか迷っているような仕草に疑問を抱く。

 女神の忠告通りの奴ならば、関わるべきじゃないと考え、咄嗟に引っ込めようと引こうとするが——、


「……ぁ、ぅ」


 それはまるで、諦めと悲観、そして寂しさが込められたような、そんな悲し気な声だった。

 その声を聞いた瞬間、俺は反射的に引き戻しかけた手を伸ばして、黒い外套の人物の手を掴んだ。

 とりあえず立たせてから、怪我がないか確かめる。

 立たせてみると俺よりも背が低い。


「大丈夫ですか? 怪我は?」

「……な、ないです」

「ならよかった。それでは、俺はこれで……」


 このまま何事もなく、自然を装ってその場を離れる。

 正直、人違いかもしれんが用心には越したことはない。さっさと優利見つけて帰ったらポーションの試飲だ。

 しかし、そうはさせるかと言わんばかりに外套の人物は俺の腕を掴んだ。


「待って!」

「な、なんですか?」


 思わず声が上ずってしまう。

 俺の腕を掴んだまま、彼女はフードですっぽりと覆われた自身の顔を指さした。


「あ、あの私達どこかで会ったことない?」

「少なくとも頭をフードですっぽりと覆われた人とはあったことないんだが……」

「はっ、そうだった……! で、でも……」


 どうしてか周りをきょろきょろと見回す目の前の人物に首を傾げる。


「夢で見た人と瓜二つ。でもでも、こんな偶然ある? いつも変な夢ばかり見てるのに、最近の夢はなんか楽しかったし……もしかしたらこれは女神さまがくださった贈り物……?」

「あの、もう行ってもいいでしょうか?」

「だ、駄目!」


 グイィ、と見た目から想像もつかない力でギルドの柱の影の方へ引っ張られていく。

 ポーションなしだと自分はこれほどまでに貧弱な事実に地味に傷つきながら、外套の人物を見やると突然胸倉をつかまれ引き寄せられた。


「うぐぉ!?」


 眼前にはフードに覆われた目の前の人物の顔。

 どうしてこんなことをするのか問いただそうと口を開きかけると、目の前の彼女は躊躇するようにフードを外した。

 露わになる素顔。

 その素顔を見た俺は、今日何度目か分からない驚愕の表情を浮かべる。

 なにせその素顔を見たのは、初めてではなかったからだ。


「わ、私はアイラ。アイラ・アルテミア!」


 女神と同じ顔。

 いつものような自信に満ち溢れた表情でもなく、イラっとくるドヤ顔でもない。

 不安と緊張と、決意を感じさせる俺の知らない表情を浮かべた彼女、アイラは俺の胸倉を掴んだまま慟哭するように続きの言葉を口にした。


「お前は私とダンジョンへ行くべきだです! よろしくお願いしますだ!」


 ちょっと待って、テンパりすぎて言葉おかしくなってる。

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