七話目です。“なんて神々しい土下座”
僕たち三人は居間へとやってきました。
居間にはもっさいおっさんが腕組んで座っていました。
“重三”
ビックサイズのお顔。
スキンな頭。
口の周りにひげがびっしり。
目を細め、
常に眉間にシワがよってる。
体つきなんか見れば、
熊ぐらいなら三頭は仕留めたことがありそう。
(もち、素手で)
金剛が小声で僕の耳元でささやいた。
「あれが私の父上だ。名は重三と言うのだ」
そうか……
……ってぜんっ!
ぜん似てねぇー!
本当かよ!?
「紛れも無く私は金剛の父だ。
ほう。
君がゴンか……
なかなかいい目をしておる。
それより金剛よ。
こっちへ来なさい」
「……はい」
金剛が重三の元へ駆け寄る。
しばらく何か話したのち二人、
奥の部屋へ行ってしまった。
見た感じあまりいい雰囲気には見えなかったな〜。
「あらあら。
こんちゃん。
かわいそうに……」
…………どういうこと?
「えっ?
……あ〜そのうちわかるわよ」
……ってか静絵さん。
僕が何思ってわかるんですね。
「まあね。
こんちゃんから自分がどういう存在かは、
もう聞いてるでしょ?
その親戚となると……
まあ必然的にね」
そうでした。
静絵さんは金剛のお母さまでしたね。
「お姉さんよ。
お・ね・え・さ・ん!
間違えないようにね」
……はい。
気をつけます。
(多分、金剛のほうが正しい)
ふう、
それより金剛大丈夫かな。
さっきの静絵さんの発言からしてとんでもないことが起こりそう。
「この!ばぁかもんがぁぁ!!!」
!?!
重三さんの怒号がこだまする。
深夜だけど……
大丈夫かな?
「なにがかしら?」
こんな大きな声をご近所さんたちに迷惑では?
「心配ご無用!
この世界で今っ、
私たちの存在を感じられるのはゴンちゃんだけ。
だからあの人の大声でも周りの人にはな〜んにも聞こえないのよ」
ふぅ〜ん。
じゃあ大丈夫か。
お?
出てきた。
あれ?
重三さんだけ?
金剛は?
「金剛のことは放っておけ。
次は、
ゴンよ。
そなたに話がある」
つ、
次は僕ですか?
僕、
何も、
悪いこと、
して、
ない。
「いやいや。
勘違いするでない。
そなたには話、
というよりもお願いがあるのだ」
ここで静絵さんが不思議そうに聞く。
「あら?
ゴンちゃんに何を今さらお願いするの?
すべてOKした上でここにいるのではなくって?」
「いや、
な。
実はそうではないらしいのだ」
「どういうことかしら?」
「金剛の不注意により、
人の姿に変えてしまったみたいなのだ」
「えっ。
じゃあゴンちゃんは何も知らないってこと?」
「おそらくな」
静絵さんの表情がにこやかから一変。
険しい表情となる。
そんなお顔もまた美しい……
何言ってるんだ、
僕は。
「ゴンちゃん。
しげっちのお願い、
聞いてあげて」
「……その呼び名はやめろ……
……ふう、
さて。
ゴン。
そなたはすでに人になってしまっているのだが、
その姿のままで今から伍周期ほど……
ん?
違うな。
五年間ほどこの世界を生きてもらいたい」
冗談だろ……
なんてつっこみ、
もう通用しないか。
僕のこの変貌っぷりの時点でなんでもありだ。
重三さんは話を続けた。
「見返りなんてものはない。
だがな、
そなたの送る日々、
人生はとても充実したものを約束しようぞ」
あの〜正直…僕、
犬のまんまでも十分、
充実してるんですけど……。
(ガバっ)
突然、
重三さんは僕の目の前で立ち膝をつき……。
「うちのばかを救えるのはそなたしかおらんのだ!」
両手の平とおでこを床につける。
これって世にいう土下座ってやつですか!?
「この通りだ!頼む!」
え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?
「私からもお願いします」
静絵さんも隣でおしとやかに土下座を決める。
そんな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?
この状況で拒否をするなんて……
……無理……。
……わかりました。
「本当か!?
ありがとう!」
「ゴンちゃん。
あなたならそう言ってくれるって信じてた」
ああ……
どーなるの?
……これから…………。