後部座席の方もシートベルトしましょう
駅を出て、ロータリーまで来ました。
タクシーで行くのかな?
あ……違う。
絶対アレだ……。
ワゴン車が止まってるその前に白衣の青年がこっち見てる。
けっこう背丈があり、スラリとした体格。
掛けているシャープな眼鏡がインテリな感じを醸し出す。
けど今まで見てきた人間の中では一番まともっぽい。
「お待ちしてました所長、どうぞお乗りください」
助手席のドアを開け、白川さんを誘う。
頭を下げ、右手で招く姿がとても紳士的。
かっこいいっす。
「もう所長はやめてよ、それに何で白衣なの?
恥ずかしいから止めてって言ったじゃん!」
真っ赤な顔して白川さんが怒る。
あんまこうゆう姿見ないなあ。
「すいませんお嬢様」
「お嬢様もやめて!」
「では何とお呼びすれば……」
「香奈子でいいってもう何度言ったじゃん!!」
「了解しました、では香奈子様お乗りください」
「様って……ああもういい!」
頬を膨らませ怒ってますよって表情しながらドスンとシートに座った。
白衣の青年は白川さんが座ったのを確認した後ドアを静かに閉める。
「ではお客様、どうぞ」
今度は後部座席のスライドドアを開ける。
あれ?そういえば普通は客の方が先じゃない?ってどーでもいいか。
はいは〜い、失礼しま〜す。
ってなわけで 僕が始めに乗り込む。
「健太、もっと奥に詰めてくれ」
次には蝉零さん。
「んっしょっと、はい、どっこいしょ」
し、静絵さん……何故?
後ろ座ってよさ。
ここすんごい窮屈なのにうしろガラ空きじゃんか〜。
「だって〜けんちゃんの隣がいいも〜ん」
隣、座って無いじゃん!
痛っ!
つ、詰めすぎっしょ!
「仕方ない、私が退くとするか」
ナーイス蝉零さん!!
窮屈から開放されてほっとしやした。
後ろに蝉零さんが座ってくれて助かった。
他にも意味あるけど……。
「はいけんちゃんシートベルトしましょうね〜」
そんぐらい一人で出来る……痛たぁ!
空いとるのに何で詰めるさ〜!!
もうぎゅうぎゅうですよ!!
<カチッ>
ってこれ一人用だから狭いって!!
シートベルト一つに二人って間違っとるっしょ!!
必然的に静絵さんと密着状態に……。
ぐ、ぐるじい……。
<ガララッ>
んえっ!
ドア開いた?!
んで白川さん乗って来たし、前に居たじゃんか〜何で来るさ〜?
「なんでにやけ面なの……」
なんかぼそっと言った今なんかぼそっと言った。
オ〜ウ……顔コワいね〜……。
<カチッ>
白川さん、シートベルト解除。
「お姉様、こちらにも有りますので……」
「だって〜それ、壊れてるもの〜」
白川さんが静絵さん側のシートベルトを引っ張り出そうとしても全然出てこない。
「ホントだ……では助手席にお座りになって下さい、お客を危ないめに合わせるわけにはいかないんで」
後半、敬語じゃないし……。
「え〜………………そ〜お?じゃあ前に乗ろうかしら」
静絵さん、出た、お、前乗った、やけに素直だなぁ。
「後でお仕置きだ後でお仕置きだ後でお仕置きだ……」
隣で白川さん、なんか呟いとる。
コワいっす……。
やな予感……。
恐怖の種がまた一つ増えた。
ボン・ジョヴィ……いいよね。
これ、たま〜に歌詞の一部を引用させてもらっちゃてるけど……。
判る人には判るってとこかな?
聞いてない奴、絶対聞け!!もうすげぇんだから!!