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五話目です。“最高のビンタをあなたに……”

 僕はいやだったんだ。



 だってこいつさ。


 どう見たって怪しいし、

 変だし……

 こんな奴に付いてったら絶対トンデモ無い目に会う。



 もう、手遅れだけど……

 仕方が無い……

 元に戻るためなんだ。


 我慢しなきゃ。



 はぁぁ……

 なんだか落ち着かないなぁ……。



 鼻や耳で捕らえてた気配がまるで感じ無くなって、

 ものすごく不安。



 見えてくるものなんか今までとは全く違うものだ。


 何て言うべきかなぁ。


 とにかく光ってる。


 数々の光がところどころで……

 うーん、

 放たれてるというべきかなぁ。


 染まってるというべきかなぁ。



 頭の中が一番、

 異変が起きてる。



 今までぼんやりだった感覚がはっきりしてきて、

 無くなっていた記憶は絶え間無く甦って来る。



 今こうやって思ったり、

 考えたりしてる時は、

 中が凄まじいスピードでぐるぐるしてる風に感じる。



 とにかく怖いんだ。


 とても落ち着かない。



 ご主人さま達はよくこんな状態を毎日耐えられるなぁ……

 なんてつくづく思う。



 ああ……

 一刻も早く元に戻りたい……



「やはりまだ慣れないか?」


 少し前を行く金剛が、

 振り向き言って来た。



 僕は言葉は理解出来ようとも、

 発することは出来ないため、

 金剛の皮肉を言い返せない。



 くそぅ……

 成りたくて成った訳じゃ無いんだ……

 ……大体お前のせいで……。



「皮肉ではないぞ。


 本当に君の身を案じて言ったのだ。


 それにこの件に関し、

 真にすまないと思っている」



 ……何故わかっんだ?


 僕が思ったことに言葉を返して来やがった。



「ま、

 私は神だからな。


 君の心の声を読むのは容易いものだ」



 なっ……

 神だと……!



「それよりだな。


 ゴン君。


 いい加減、

 四つん這いで歩くのやめたまえ。

 

 君はもう

‘人なのだから人と同じように行動’してもらわないと困る」



 なんでよ?



「何でもだ。


 さあ地面から手を離して。


 二本足で歩いてくれ」


 ‘チンチン’


(決して勘違いしないでくださいやせ)

 

 が全く出来ない僕にそんな無謀な挑戦、

 有り得ない。



「つべこべ思わずやってみたまえ」



 ぐぅ、

 怖いんだよ!!



「しかしなぁ……

 このペースだと夜が明けてしまう。


 ほら、

 そこの塀に掴まりながらでいいから立ってご覧よ」



 ぐぅ……

 分かった。



 恐る恐る塀に掴まりつつ体を起こす。


 まだ中腰の体勢。



「よし。


 立つんだ!」



 簡単に言うな!!



 くそぅ……

 足がプルプルする。


 だめだ……

 無理っぽい。



「頑張れ!


 足を伸ばすんだ!」



 ……ああっ!


 もうっ!


 どうにでもなれっ!!


 …………あれっ?

 立てた……

 簡単に……



 あまりにもあっさり立てたので、

 拍子抜けしてまった。



「よし。


 次は塀づたいでいいから歩け!」



 歩けぇ?


 ……歩けだとぉ?



 調子こいた金剛を睨む。



「あっ……

 いやっ……

 そのっ……

 すいませんでした。


 次は歩いてみて下さい」



 ……ったく。


 気を取り直して……

 っと。



 まずは左足を前に……

 よし……!


 次は右……

 うおっ!?


 

 バランスが崩れ、

 尻餅を付いてしまった。



「あははははっ!


 しがみついたまんまで歩ける訳なかろう。


 一緒に手も送らないと」



 くそっ!


 すっごい悔しい!



 ふつふつと沸き上る怒りを抑えつつ、

 また立ち上がることに集中する。



「ほら早くやってみたまえ」



 …………プツンっ……

 もうっ……

 限……

 …界……

 だ、

 この野郎ぉぉ!!



「なんだ。


 本当は歩けるでは無いか……

 ……?!


 何故っ!


 なんでっ!?


 来るっ!


 止まれっ!


 ちょちょっ!


 うわぁぁぁぁぁぁ!!



 ……うごっ!ぐうっ!……ぶべっ…」

(……ズガッ!ドゴッ!……ズバァァァァン!!)



 まずローキックを太股にキメ、

 怯んだところを相手の懐に踏み込んでいき、

 みぞおちにボディブローを打ち込む。


 そして、

 更に間合いをこれでもか!

 というぐらいまで詰め、

 上体を大きく捻り……

 いけな〜いお口に、

 零距離フルスイングビンタをぶっ放つ!!



 金剛はよく翔ぶ。


 うん。


 流石は神だね。



 僕はこうして二足歩行を修得した。


 ついでに格闘術も。






(ゴンはまた一歩、

 人に近付きましたとさ)

























「うむ。


 こういうのも嫌いじゃない。


 むしろ、す……」



(キモイ!!)





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