三十一話目。“囲碁なんてやったことないがな”
……おい、
あの時はよくも逃げてくれたなあ、
金剛……。
「おいおい、
別に逃げたわけでは無いぞ。
場の空気を察してだな」
問答無用!!!
「ひいいぃぃ!!
す、すまなかった健太君!!
以後気をつけ…ぐべッ」
僕のダイビングヘッドバッド炸裂ーー!!
見事、
金剛の顔面に直撃〜〜〜!!
あ、
ちなみに僕は、
もう犬の姿に戻ってます。
只今、
金剛と二人で家に帰宅途中です。
「まあ、なんだ。
あの子とはうまくいったのか?」
はあ?!
うまくいくぅ?
……訳ないだろうが。
こっちは一回、
死にかけたというのに。
「ほう、
死にかけたのか。
大丈夫だ。
別に心配することは無い。
蘇生ならまかせたまえ。
何度だって生き返らせてやるぞ」
そうか、
なら安心だ……。
……なわけねーーだろ!!!
そーゆう問題じゃねーっての!!!
僕はまた、
金剛に頭突きを繰り出す。
「ぐばあッ!!」
「ふっ……。
相変わらずダメなやつだな」
あ!
あんたは静絵さんのとこで、
金剛と一緒に現れた人……
ってか神?
「そうか。
君はまだ、
私の事を知らなかったな。
名は蝉零だ。
私も、
君のサポートとして協力させてもらう。
以後よろしく」
金剛とは違い、
やけに落ち着いた雰囲気。
一言で言うと、
クールって感じ。
「私もまだ、
君を知らないのだが?」
あッ……
すんません。
えっと、
ゴンっていいます。
健太ともいいます。
えー……っと、
………。
……以後よろしく。
「囲碁もよろしく〜〜!!」
……金剛、
その持ってる囲碁盤、
どっから出したんだよ……。
……ってか、
うっさい金剛!!
「お前だまれ!!!」
僕の三度目の頭突きと、
蝉零さんのミドルキックが、
いいタイミングでヒット!!
インパクトの瞬間、
白黒の碁石が、
そこらじゅうに飛散する。
金剛、
碁石を拾いながら嘆いた。
「ぐぬぅ……。
君たちは、
加減というのを知らないのか。
ツッコミの域を超えてるではないか」
お前が悪い!!!
「お前が悪い!!!」
僕と蝉零さん、
金剛を置いて先へ。
「おい。
碁石拾うの手伝ってくれないか」
一人でやっとれ!!
「一人でやっとれ!!」
―――――
寂しく一人、
金剛は拾っている中、
ポツリとつぶやく。
「何もあんなのはないだろう。
……ジョークが通じない奴らだな」
そして、
最後に、
「………。
でも放置プレイも嫌いじゃあない」