二十九話目。“白川さんの正体判明”
<ドドド……バタンっ>
へ?
白川さんどっか行っちゃったよ?
「あらら……。
う〜ん……」
あ〜静絵ねーちゃんなんかやったんだ。
「え!?
ん〜多分やっちゃたかも」
なにやったのさ!?
「折角のお客様に高級なお茶じゃなくて、
さっき買ってきた特売品を出しちゃったの。
きっとそれが原因ね」
………。
多分、
違うんじゃないかなー……。
まっいっか。
「けんちゃん」
はい。
「カバンを忘れたでしょ」
へ?
カバン……。
ああーーーー!!
そういえば、
いつの間にかカバン無い!!
………。
逃げる時、
落したんかな……。
うー……。
探しに行かなくては……。
「けんちゃんったら……
もう、
かなちゃんが持ってきてくたわよ」
ありゃ。
静絵さんの手には、
僕のマイバックが。
ってか、かなちゃんって……
あ〜!
白川さんか。
え……
うそお……。
「嘘だったら、
ここには無いわよ〜。
けんちゃんったらホント、
オッチョコチョイね〜」
……あの人が?
カバン確認します。
………。
おおっ、
しかも無傷だ。
中身も無事……。
ん?
何、この紙?
「あら。
これ名刺よ名刺。
白川 香奈子……。
すっごーーい!
あの子、
名刺なんか持ってるんだ。
あっ、
連絡先も書いてあるわね。
そういえば、
まだお礼、
言ってなかったわ」
静絵さん、
電話をかけ始める。
ん〜、
テレビでも見てよっかな。
ありゃ。
もう終わったの?
「うーん……
繋がらないのよねー……。
あっそうだ。
けんちゃん、
どうせ明日、
学校で会うでしょ?
きちんとお礼言っておくのよ。
あと、
その時は私の分もよろしく〜」
でも僕、
喋れないっす。
「あ〜!
じゃあ……」
静絵さんは、
電話の横のメモ書きの紙を一枚取った。
「これに、
……ほら、
けんちゃん書くもの」
僕は、
カバンからお猿の筆箱を取り出し、
静絵さんに渡した。
静絵さんは
さらさら〜とシャーペンで何か書いてる。
「はい!
けんちゃん!」
えっ……。
昨日は、ろくに御持て成しもできなくて、
ごめんね。
静絵
………。
すげえ達筆……。
「ほら、
カバンのお礼っ」
僕に書くよう促してくる。
えっとじゃあ、
かばん届てくれてありがと
けんた
「‘け’が無いわ、
けんちゃん!!」
えっ!?
毛がない!?
うそ!!?
頭を触ってみて……
なんだよ。
あるじゃないか。
「なんでそ〜なるの!!
送り仮名よ!!
ここ、ここ」
あ、ああ〜〜〜
そういう事。
はい、
修正修正、と。
OKです。
出来上がった手紙を、
静絵さんはきれーに二つ折にして、
「はい、
けんちゃん。
明日、
きちんとかなちゃんに届けるのよ」
了解っす。
そんでカバンにしまって、と。
ん、
テレビの中で、
着物で変な頭の人達が騒いでる。
<上様〜〜〜〜〜!!!!>
上様って何?
「えっ。
上様?
ああ〜この人達にとって一番偉い人のことよ。
けんちゃんで言うと、
ん〜……
あの眼鏡の子……
えっと、
名前は美樹ちゃん……
だったかな?
あれ?
ちょっと違うかな?
あってるよね?」
うん、
合ってる。
上様……
なんかいいかも。
そんで、
しばらくして。
あっこれ、
白川さんの名刺……。
か、漢字がなんか並んでる。
読めない……。
おね〜〜ちゃ〜〜ん。
「は〜〜〜い。
な〜〜〜に?」
ここなんて書いてあるの?
「えっなになに。
えっとね、
白川宇宙科学研究所 副所長
白川 香奈子
だって」
………。
スゴイんすか?
それ。
「ん〜どうなんだろ……?
多分、
すごいと思うよ」