三話目です。“一。二。三パツとなります。何かが。”
え〜、
……引き続き硬直中なわけなんだけど……
うわっ!
「はぁぁ〜〜〜〜。(溜め息)
君が、
“ボス!
お待ちしておりやした!”
とか言ってノってくれれば良かったのに。
わからないかな〜〜〜〜〜。
お陰で切り上げてしまったではないか」
ん〜なもん解る訳ない……。
だいたい、
お前はボスじゃない。
ただのアホだろう?
あと、
切り上げってなんだ?
わかんねぇ……。
とりあえず……。
ムカつくから吠え…。
「るのは無しだぞ」
いきなり、
光に近いっぽい速さで接近してきて、
手で直接、
鷲掴みするように僕の口を塞いできた。
「何度も同じ手を喰う私ではないのだよ。
ゴン君。
いや……
健太君かな?
アッハッハ……
………。
すいませんでした。
(慌てて手を放す)
あの、
二度と致しませんので睨むのやめてくだ…ああっ吠えないで、
(土下座になって)
ごめんなさいぃぃ……」
やっぱ、
こいつはチキンだ。
あまりにしょぼ過ぎる。
どうせ又さ、
あの場所に行かなきゃなんないんだろうな……。
「一緒に行って下さいますか?」
こいつはことごとく、
僕が思ったことにつっこんでくるな。
「こう見えても私は神ですから」
また……
調子こくと吠えるぞ……。
「そそそんな、滅相もございません。」
はぁ(溜め息)、
ほら、
行くならならもう行こう。
時間なくなるだろ。
「はい、了解です」
そう金剛は返事をし、
僕の頭の上に手をかざす。
体からは黒い粒が放たれていき、
その分だけ徐々に消えていく。
その現象が終わった時には、僕の姿は完全になくなっていた。
「終わりました」
よし、
じゃあ行くぞ。
「はい」
そうして僕ら二人は家の出口……
ではなく、
その逆の方向へ歩を進める。
壁を難なくすり抜けて行く。
ちなみに僕のこの状態は金剛の話によると、
意識だけの状態らしい。
言うなれば幽霊だ。
まぁ僕の実体はすでに、
今から向かうべき場所に着いているのだが、
意識が入ったまんまだと、
ものすご〜く、
ハンパな〜く、
えげつナ〜イ事になるらしい。
でも、
意識だけなら思うがままにいろんな所に行けるんじゃなーい。
なんて思っちゃうけど、
ところがどっこい。
意識だけだと力がほんの極わずか、
もうちょびっっっっとしかないからスロォリィ〜にしか動けない。
僕の場合だと、
金剛のお陰で移動が出来るけど
(あいつは一応神だからそれなりの力はあるわけで)
本物の幽霊さんは、
その場から動くことすらほとんど無理らしい。
と、
言うよりは存在することに一分一秒と必死らしい。
だから、
力を生むもの、
えっと例えば、
火とか水とかその辺?
……あとは生き物かな。
そういったものからお裾分けしてもらったり、
強奪したりと、
日々、
大変みたい。
この話を聞いた時、
僕は、
どんなに嫌な亡くなり方をしても、
おとなしく成仏しようと思った。
あっ!
そうそう。
でさ。
ご主人さまもそうだけど、
人様はよく、
幽霊を怖がるけど、
金剛はそれが理解できない、
と。
大した危害を加えられないし、
よく狙って息を吹き掛ければ簡単に消滅するらしい。
しょぼっ!!
まるでロウソクの火じゃん。
つーか、
金剛。
お前神なのにそんなん言っていいのかよ。
なんて心の中で思っていたら、
例のごとく心を読んできてこう答えた。
「ああ、
いいのいいの。
あいつら勝手に残ってるだけだし。
どうなろうと知ったこっちゃない。
私の場合、
君の方が千億倍怖いよ」
……この時、
僕は正直、
神というものに対し、
幻滅した。
あれ?
話が脱線しちゃたな。
えっと、
そんな理由だから、
金剛とのんびり話しながら目的地
(まだ教えやせんぜ)
に向かうしかない。
ってことはまず、
話かけなきゃな。
うっし。
金剛。
おい金剛おいって、
なぁ。
聞いてんのか。
おい。
こら。
なあ!
僕が呼んでんだろ!
お〜〜い!
はげ、
ヘタレ、
チキン。
ぶりぶり男爵。
オゲレツちょんまげ。
ピータン最高。
パパイヤ食べてぇ……。
むっひょ〜〜〜!!
……なんか空しい。
ったく反応しろよな馬鹿。
「ムッ、
失敬な。
私は馬鹿という名ではなくだな。
(ちゃんと最初、呼んでたから)
尊敬する父上がつけた立派な名があるのだよ。
金剛だ。
そう……
金剛……。
最高だ……。
びゅーちふぉー……。
なんていい響きだ……。
(うわぁ……
上見上げて語ってるよ。
危ないな。
こいつ)
そもそも金剛の意はだな。
元来……」
やばい、厄介。
自分の名前自慢はいいから。
そんな事よりさ、
なんで僕を選んだんだ。
他にもいっぱい居るだろう。
僕である必要はないはずだ。
「そんな事とはどうい……
……まあ、
よい。
君の質問に対する答えなのだが……」
ん?
なんだよ。
僕の顔をじっと見てる。
「…
……
…………こ、これを聞いても怒らないでくれるかな?」
……いいとも〜!
とでも言うと思ったのか。
金剛。
「ひぃっ」
(なっさけねぇ声)
……その発言がある時点でけんか売ってるようにしか聞こえないけど……
善処するよ。
「………」
言えよ!
「散歩中の君を見掛けた時、私より弱そうに見えたから」
こ、こいつ……(怒)
「ひぃ!
すいませんすいません。
大きめの犬で恐くなさそうなのなんてなかなかいなくて、
困り果てて途方にくれてとりあえず適当にブラブラしていたら散歩中の君を見つけてそれで黒い犬に怯えているとこ見た時、
!よっしゃ。
(ココだけビビリモードから切替えて拳を作ってガッツポーズとってる)
……って、
思っちゃたんです。
すいませ〜ん」
謝りながらも数々の怒らせ要素を振り撒いてくる。
もう、
こいつ、
嫌だ。
僕、
もう、
やめたいんだけど……。
「そそ、
そ、
そんな……
ここで今、
辞められてしまったら協力すぃ、
してくれている父上と母上に申し訳がたちません。
(途中、かんだよ……)
それにあの時、
承諾してくれたじゃないですか。
どうか、
どうか!
お願いします!
お辞めになられないでくださいませ!
お願いしゅましゅ!!」
(‘しゅましゅ’って……
前、
普通に言えたじゃん)
もう、
いいよ……。
「御許しになられますか?
それともなられませんか?
なる?
なるのですね。
(ここ、
ドレッシングの種類を客に聞く時のファミレスの店員っぽく)
はい、
有難うございます!
それでは今日の内容についてだが……」
(切替え早っ)
あの時、
確かに認めちゃったけどさ……
あんなん流れでそうなっちゃうよ。
はぁぁ(タメイキ)
……あれはご主人さまもみんな眠ったころ、
ぐらいだったな。
いきなり出てきたんだよ……。
得体も知れない。
へんなやつがさ……。
「おい!
それって私のことか?!」
(落ち着きなさい。
その通りだし)
「ぜえっったい!
みとめんぞーーーーー!!!!」