二十七話目。“ハーイ!ボンジュール!”
「あっ、
もうこんな時間」
只今、
午後4時過ぎ……。
こんな時間……
かなぁ?
「えっ?
カナりん、
もう帰っちゃうの?」
「うん。
ちょっとこれから用事があってね。
急ぎ、
ってほどでもないけど、
早めに帰ったほうがいいかな〜なんて」
……ん?
なぜに僕を見る?!
「……ふう〜ん。
用事ねえ」
だでなんで僕を見る?!
ん……
ご主人さまが僕の肩に手を置く。
「犬岸くん。
ご愁傷様」
なぜ!?
で、しばらくして、
玄関前で……。
ご主人さまが……。
「お二人ともお幸せにー!」
なぜ!?
ってか僕の家すぐそこ(庭の犬小屋)
なんすけど。
なにこれ。
……もしかして、
白川さんと出なきゃいけない流れっすか!?
……ちらっ。
うわ……
めっさ笑顔……。
不気味だ……。
もう観念するしかないよなあ……。
そんなわけで白川さんと一緒に、
ご主人さまの家を後にしました。
ああ……
愛しのマイ・スイート・ホーム……。
ハア……
とりあえず、
静絵さんのとこ行くか……。
「ダーリンは帰り道どっち?」
うーん、
どっちだっけ……。
いつもの散歩コースと逆だから、
確か、
「……右」
「えーー!!
ホント!?
じゃあ私と一緒だね!!」
マジっすか……。
まあ、
もう諦めてるさ。
そんで、
帰り道を歩いてるのはいいけど……。
なぜか白川さん、
僕のちょい後ろを歩く。
んー……
この十字路、
どっち行けば良かったっけ。
迷って、
僕が立ち止まれば……。
すぐ後ろで、
白川さんも立ち止まる。
あ、怪しい……。
「……先、
……いいよ」
先に行ってもらおうと促して見たものの……。
「えっ!?
ああ〜〜!!
私の事は気にしなくていいからっ。
うん」
もしかして。
付いてきてるだけ?
こうなりゃやっぱ……。
逃げるしかない!!!
うおおお…………!!!
とにかく猛然とダッシュ!!!
「あっ!!
待てええ!!!」
ここは多分、
左でいいはず。
次は、
真っ直ぐ!
また左ぃ!!
おっ!
あそこに見えるのは、
ぽぽぽん!!
でもまだ油断は……
あれ?!
白川さんいないし……。
やった!
僕、
見事に逃げ切れた!?
あたりを見回してみても、
誰も居ないね。
いやいや、
あの塀のかどっちょに潜んでるかも……。
ここは一度、
ぽぽぽんを素通りして、
あっこ曲がって、
しばらくこの辺の様子を見てみよう。
はい、
ぽぽぽん素通り〜。
よし、
ここからちょい待ってみようかな。
……1分経過。
誰も来んね〜……。
……3分経過。
<ワン!!>
はう!!
お〜〜う、
隣の家の同志
ですな。
あら、
飼い主の嬢ちゃん。
変な目で見ないで。
……5分経過。
飽きてきた……。
眠い……。
……10分経過。
まあいいっしょ!!
来ないし!!
うん!!
僕、
よくやった!!
あのデビルからよく逃げ切った。
さ〜て、
静絵さんのとこ行きますか。
!!!!!!!!!!!
はい!
急いで、Uたーんっす!!
なんで…………。
なんで……。
なんでなんで……。
なんでーーーーーー!!!!
なんで白川さん、
静絵さんと一緒に居るの〜〜〜〜!!!!
あっ、
一緒にぽぽぽん入ってった……。
何、
僕はどうすればいいの?
本当にどうしよう……。
隣の〜家〜の〜レトリバーに〜も〜
は〜い!ボンジュール♪
知る人ぞ知る……。
あのフレーズ。