二話目です。“一週間以上経過、これまで色々あったのに……”
「やあ、
みんな!
突然だけど、
僕、犬です!
僕は、
秋田犬のようで秋田犬でない。
色々な品種を配合した最新で超高性能の素張らし〜……
……雑種です。
うん。
ただの雑種。
一日三食で野川家の番犬を務めさせていただいております。
それに……」
こいつ、
朝っぱらから僕の家の上でなに言ってんだ?
凄まじくムカつくから一発吠えてやる。
〈グルルルゥワン!〉
びくっ!!
「きっ君のた、
ためにだな、
ワタァ〜シが代わりに自己紹介をして……
ひっ!
わくぁっ、
分ったから許してくれ〜〜〜〜っ!」
あっ飛んでった。
ちなみにアイツはあれでも一応、
神様だ。
(見習い以下だけど)
名は
“金剛”という。
(完全に名前負け)
二十歳ぐらいの青年といった容姿なのだが、
真っ白な髪に真っ白な袴、
そういったところから、
少しは神々しさというものを感じる。
(ぴよぴよのチキンだけど)
そして僕は当然、
犬なんて名前ではなく、
かと言って
‘名は無い’
というわけでもないよ。
僕は
“ゴン”っていうんだ。
どうだい?
なかなかハンサムだろ〜?
ご主人さまに付けてもらっんだ〜♪
「ど〜したのゴン。
どろぼ〜でもいた〜?」
お〜起きたばかりなのでしょう。
ぴょんっと跳ねた寝ぐせに、
黄パジャマ姿。
僕が心から慕う、
ご主人さまの登場です。
その格好……
たまりません。
野川家の次女にして、
僕のご主人さまの
“美樹”さまです。
ボディは小柄。
髪は肩に少しかかるぐらい。
めがねが愛らしく、
笑ったお姿なんか、
もうベリ〜キュ〜ト。
まぶしい笑顔……
最高にたまりません。
あれっ?
その手に持っているのは、
僕の大好物ではっ?
早くっ早く下さいませぇ〜〜。
「ちょっ、
ゴン落ち着いて!
あっ、
も〜ゴンっ!
待てっ!」
余りのうれしさに抱き付いてしまった僕に
‘待て’の命令が掛かる。
ご主人さまの命令であれば、
いつ、
なん時、
どんな所でも待ちましょうぞ。
ご主人さまの命令……
ある意味たまりません。
目の前に存在する、
とめどなく溢れる欲望に耐えること数秒、
待望の
‘よし’が出る。
僕は飛びつき、
夢中でご飯にむしゃぶりつく。
その最中にご主人さまが、
えらいえらい、
と僕の頭をな〜でなで、
なでな〜でしてくれる。
ああああ、
もっと、
ご主人さまもっと!
ヒャッホ〜〜〜〜〜〜イ!!♪
(なんなんじゃこりゃ……)
「美樹〜〜。ゴンと遊んでないで早く支度しなさ〜〜い」
「うん、わかった〜〜」
奥で何かトントン、
ジュウジュウ、
としてらっしゃる母さまに呼ばれ、
ご主人さまは戻ってしまわれた。
いい匂いするし、
僕も行きたい。
けど、
行けない。
怒られちゃうから。
恐いもん。
それから、
しばらくして着替えたご主人さまが、
「じゃあゴン、
行ってくるね〜〜」
と、
手を振って、
僕は
〈ワンっ!〉と、
全力の大きな声で返事をする。
んで行ってしまうわけで……
……カム・バ〜〜〜ック!!……
って無駄だね。
――時間が過ぎ、
只今午前の十時ちょい前――
ボク。
イマ。
暇です。
退屈です。
クヤシイです!!
(これ、ほにゃららブングルだね)
この家で僕一匹……
ご主人さまは学校へ。
母さまはお仕事へ。
舞さま(美樹の姉)は、
ご主人さまとは別の学校へ。
……
……ジジイは知らん。
(美樹の親は共働きです)
この時間はいつもなら一匹だけど、
最近は……
多分そろそ……
「待ぁたせたな」
出た……
超ピッチリのオールバック。
顔の半分を埋めるほどでかいグラサン。
雪原のごとく純白のタキシード。
ダンディじゃないのに口に葉巻をくわえてる。
首にモコモコしたなにかをきゅるきゅる巻いてる。
(あきらじゃないよ。
赤信号だよ、
赤信号。
リーダーだよ、
リーダー)
そんなハンパなくダッサい格好をした金剛が両手を広げ、
足をくの字にして、
全体的にクネクネッとしたポーズをとって、
言ってきやがった。
……アホに対応しきれず……
停止中……
カチンコチン……
んでもって硬直中………
………