十話目です。“ヘクシ”
ズズズッ……
重三さんお茶をすすり、
ふう…と、
息をつく。
「よし。
とりあえず今日中に家族構成だけは決めなくてはな」
まだ追加するんですか?
(ファミレスでこのセリフ言った事がある……
どーでもいいか。)
「そういったことを含め話し合いをするのだ。
まあ、
やはり、
父母は必要であろう」
うーん。
憧れはあるけど……。
正直、
なんか強烈な奴が出てきそう。
「強烈?
どういう意味かね?」
あっいや……
何でもないです。
どうぞ続けて下さい。
……ハア…………。
んっ。
金剛が近寄ってきた。
僕の耳元で囁く。
「言いたいことはわかるぞ健太君。
母上クラスのキャラと共に過ごすとなると相当なもんだからな。
心配はいらん。
君にも決める権限がある。
あと、
もし、
母上が嫌であれば今のうちに言っておいた方がいいぞ」
僕はそれを聞き、
ついつい静絵さんに目を向ける。
…………目が合ってしまった。
「ん〜?
な〜に〜?
ど〜したの?
けんちゃん?」
はてなが大量に出てきた。
ここで、
もし静絵さんに姉になる事をことわ……
「馬鹿……!
聞こえる!
本当に言うつもりか!?」
何すんだよ!
金剛が僕のこと押し倒してきやがった。
「いいか。
君はまだ喋れない。
だから心の声を聞かないと意思疎通ができない。
不用意に思うのはやめたまえ。
言いたいことはわかるか?」
……発言には注意します。
「うむ」
金剛の言う通りだ。
あのまま最後まで喋って、
静絵さんに聞かれていたら……
まあ、
悲惨なめに合っていただろうな。
…………このくずが、
って言われて……。
一方、
問題の静絵さんはというと、
僕らを見てじゃれ合ってると思ったのか、
「あらあら。二人ともすっかり仲良くなっちゃて。お姉ちゃん、うらやましいわ〜」
なんて言った。
良かった。
気付かれてない。
僕は胸をほっとなで下ろした。
「……で、
終わったかね?」
ちょっと寂しい思いをした重三さんが言った。
続けて、
「どうするかね?」
うーん……
でも僕は静……
お姉ちゃんだけで十分かと……
「そうか。
静絵はどうだ?」
「けんちゃんが初めてお姉ちゃんって呼んでくれた〜!
うれしい〜!
もう、
ギュってしたげる!」
〈ぐえっ〉
お、
おね…え…ちゃん……
し…げ……ぞ…う……
…さ……ん……
…が……
……き……
……
…い……
……………て…………………。
「えっ?」
やっとお姉ちゃんがチョークから開放した。
一瞬だけ光輝く世界がみえた……。
「……話を聞け、
静絵。
……ふう………
健太の家族だが、
お前以外に誰を用意するのか聞いておるのだ」
静絵さんは少し考え、
そして口を開いた。
「う〜ん。
この家にいるのは別にわたしだけでいいんじゃないかしら。
あっでも、
いつの時でも頼れる親戚ってのは必要よね。
やっぱり」
「ふむ。
では誰に来てもらおうか」
「白紗音は当分は無理よね」
おっでた。
金剛の姉ちゃんか。
「雑凶処理の最中だからな。
まあでもひと段落済み次第、
ここに来てもらおうと思ってる」
金剛……
雑凶ってなに?
「雑凶とはな。
生けしもの全てが思ったり、
感じたりする不幸の一つだ。
その中でも突発的なものを雑凶という。
最近は特に多く、
量が膨大でな。
けっこうな数の神がつぎ込まれているが、
なかなか減らない。
むしろ増える一方だ」
ほっときゃいいじゃん。
「バカ。
世界が崩壊する」
……じゃあ無理か。
(話をもどして、と)
「白紗音……
良かった。
……来れるのね。
…………他に来てもらえそうなのは?」
「今のところだと蝉零と電じいぐらいが話がついてる」
ここでなんでか金剛が吠えたー!
「蝉零!?
なんで!
あんな奴っ呼ばなくていい!」
取り乱しすぎっしょ。
落ち着きなさいって。
「え〜いい子じゃない。
そういえば、
こんちゃん。
いっつもあの子のこと嫌がるけど、
どして?」
金剛はさらに声を大にして、
「なんでも!」
金剛さんよ〜
答えになってませんぜ。
「そんなことはどうでもいいが、
(どうでもいいんだ……)
静絵よ。
確認だがお前一人で本当にいいんだな?」
「えっ?
いいわよ。
しげっち。
今さらなに?
も〜しか〜して〜わたしのこと心配してくれてる?
うふ。
か〜わい〜い」
重三さんの鼻の頭を人差し指でつんっと突いた。
「茶化すな。
ただお前も人として過ごさねばならないのだぞ?
負担はかなりのものになるはずだ。
それでもいいのか?」
「だ〜いじょ〜うぶっ!
いざとなればわたしの女神パワーでなんとかなっちゃうんだから!」
女神パワーって……何?
金剛は少しあきれ顔で、
「私も知らん」
だって。
……ふぁ〜あ…………
しまった。
あくびが出た。
「……とにかく、だ。
今日のところはここでお開きにしよう。
もうそろそろ戻らないとな。
健太。
眠いだろう。」
はい……。
「よし。
金剛。
健太を送って行ってやれ」
「わかりました。
父上。
それでは行ってまいります」
「ん〜じゃあ、はい!」
静絵さんが僕の頭をポンっとはたいた。
のえ〜〜〜〜!
目の前が光に包まれる……
止んだ……。
ほえ?
また視界が白黒だ。
「この姿でもけんちゃんかわいい!
もう!
おねえちゃ……」
「静絵!
そこまでだ!
ほら、金剛。
さっさと行け」
「はい!」
「プーッ」
静絵さんまたふくれっ面で。
お美しいけどブリっ子は似合いませんよ。
そして僕らは静絵さんから逃げる?ように外に脱出。
ぽぽぽんを後にした。
・・・・・・この日の朝・・・・・・
・・・・・・・野川宅・・・・・・
「ゴーン!
朝だよー!
ご飯だよー!
起きてー!」
…………ZZZ……。
「ゴン。
いいな〜気持ち良さそうに寝てて。
初夢でも見てるのかなぁ。
きっといい夢なんだろうなぁ」
…………ZZZ…………
〈ヘクシッ!〉……ZZZ……。
「!!!」
この日。
僕は風邪をひきました。
……ああっさむっ!
(次話はまた一週間以上経過となり、
三話目の続きになりやす)
「こんなの読んでる奴なんか振り回してなんぼだよな」
(……まあな)