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とある冬の終わりのお話

作者: 山神ゆうき

こんにちは。

企画に参加するのは初めてなので、かなり緊張しています。(笑)

文字数はギリギリですが、ご愛読よろしくお願いします。

冬が訪れて、春が来るハズの冬の終わり。町の人々はその違和感に気付く。


『もう春のハズなのに春の女王様が来ない!そして、冬の女王様も塔から出てこない!』


これはこの国にとってはとても一大事なことであった。


とある国のとある町。この町の中央には大きな塔が建っていた。


町を外れて東西南北に2・3キロ歩くと、そこにはそれぞれ『春』『夏』『秋』『冬』を司る女王様が住んでいる。


北には冬の女王様の神殿。西には秋の女王様の神殿。南には夏の女王様の神殿。東には春の女王様の神殿がある。


春には春の女王様が塔に入り、夏になると夏の女王様が入れ替りで塔に入る。この国はこのようにその季節を司る女王様が入ることで四季が巡ってくるのだ。


しかし現在、春の始まりが一週間と少し過ぎたというのに、春の女王様は塔に現れず、冬の女王様が塔から出てこない状況だ。


このままではいずれ食べ物も尽きてしまう。

その時、困った王様が町に大きな看板を出す。その内容は。


『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。

ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

季節を廻らせることを妨げてはならない。』


その看板を見た町の人々は、褒美が欲しいが為に冬の女王様が出てこない塔に群がりました。


ある者は食べ物を持ってきて匂いで出そうとします。


ある者は装飾品を持ってきて貢物にしようとします。


ある者は大きな布の上にお金を置き、祈っている人もいます。


それでも冬の女王様は出てくることはありませんでした。


町の人々が塔に群がりあらゆる手を尽くしましたが、数日たっても冬の女王様は出てきません。


とうとう痺れを切らした町の人の中には激しく塔のドアを叩く者まで出てきました。


「全く!町の人々はなんで塔の前に群がっているんだい?」


半分諦めていた人々が振り向くと、そこには見慣れない男性がいた。


「あんたは一体誰だい?」


町の人の一人が尋ねる。


「僕はここから数キロ離れた村に住んでいる村人さ。」


男性は笑顔で言う。


「これは祭りかなにかなのかい?」


村の男は不思議そうに町の人々に尋ねる。


「実は冬の女王様が塔から出てこないのじゃ。」


おばあちゃんが答える。そして今、どのような状況なのか村の男性に説明をする。


「そうですか。分かりました。では、僕がこの季節を春にしてみせましょう。」


村の男は自信満々に言う。


「本当にそんなことができるのかい?」


おじいちゃんが優しく聞く。


「ああ。僕に任せてよ。」


そう言うと村の男は南の方角に歩いていった。


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「へぇー。ここに人が来るって珍しいわ。何か用かしら?」


夏の女王様は村の男に訪ねる。夏の女王様は青のドレスを着ている。


「はい、夏の女王様。実は今、冬が終わらないのです。それで冬の女王様のことをいろいろ知りたいのですが。」


村の男は夏の女王様に言った。そう、村の男は冬の女王様の事を知らない。だから冬の女王様がどんな人なのか聞きに来たのだ。


「う~ん。冬の女王様かぁ。あのお方はとても優しい女王様ですわ。たまに他の女王様の神殿に訪問をして、会話などを楽しんでおられますわ。最後に話した会話では秋の女王様に会いに行くと言ってましたわ。」


と夏の女王様は答えた。


(そっか。冬の女王様はとても優しくていい人なんだな。)


村の男性はいったん町へ戻り町の人々に夏の女王様から聞いた冬の女王様はいい人という事を伝えた。


町の人々は「とても優しい冬の女王様はなぜ出てこないのか。もしかして、雪のアートのプレゼントを我々に見せてくれているのではないか。」と幸せな気分になりました。


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「で?何のようかしら?」


村の男性は次は秋の女王様の所へ行き、冬の女王様のことを話した。


「そうね。」


赤いドレスの秋の女王様は思い出すように言う。


「あの冬の女王様はとても嫌な女王様ですわ。きっと塔から出てこないのも何か悪いことを考えているに決まっているわ!」


秋の女王様は目を細めて言う。


村の男性は驚いた。何故なら、夏の女王様は冬の女王様の事を優しい女王様と言い、秋の女王様は嫌な女王様と言うのだから。


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村の男性は春の女王様の所へ向かったのだが、春の神殿の門は固く閉ざされていた。


町に戻ってきた村の男性は、秋の女王様の言っていた“嫌な女王様”という事を伝えた。

すると町の人々の顔が恐くなり、「冬の女王様は生き物を滅ぼすつもりか!」などと言い、再び塔の前に押し寄せた。


「待ちなさい!」


たくさんの町の人々が怒りに任せて塔の門の前に集まっていると、後ろから春の女王様の声が聴こえ、みんな大人しくなった。


「春の女王様、どうしたのですか?なぜ、今まで来なかったのですか?」


町の人の一人が訪ねた。


「ごめんなさい。実は、冬の女王様が塔から出てこないのは私のせいなのです。」


そういってピンクのドレスを着た春の女王様は冬の女王様と話したことをみんなに伝えた。


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それは、秋の女王様がまだ塔に入っているときである。


春の女王様の所へある一頭のクマがやってきました。


「春の女王様。僕は冬は冬眠しますが、最近、冬が短くて冬眠する動物達はなかなか満足に寝れません。どうにかしてください。」


とクマは言いました。ここ数年は冬の女王様が塔に入っても暖かい日があるのは確かです。しかし、女王様の塔へ入る期間は決まっているのでどうにも出来ません。

そこで困った春の女王様は冬の女王様に相談しました。

すると。


「話は分かりました。では、私が塔に長く住み冬を長くします。ですので春の女王様はいつも通りの期間に来てください。それでも私は出てきません。悪者役は私一人で充分です。」


と言いました。

だが、春の女王様は罪悪感から塔に現れず、冬の女王様の悪役を半分買ったのでした。


「そんなことがあったのか・・・・。」


村の男性や町の人々は何故、冬の女王様が塔から出てこないのか分かり、女王様を責めるのを止めました。


「じゃあ、どうすれば冬の女王様は塔から出てくるのだい?」


町のおばあさんは春の女王様に訪ねました。


「それは・・・・。」


と言い、春の女王様は塔の門に近づき。


トン!トン!トン!

・・・・トン!トン!

・・・・・トン!トン!トン!


とノックをしました。


すると、塔の門が開き、中から白いドレスを着た冬の女王様が出てきました。


「あら?もう私は出てきてもよろしいのですか?」


冬の女王様は目をまんまるにして春の女王様に訪ねました。


「ごめんなさい、私が相談を持ってきたせいであなたが悪者になってしまいましたね。本当にごめんなさい。」


そういって春の女王様は涙を流しました。


「いいえ、私も冬を長くして皆様にご迷惑をかけました。春の女王様、皆様、本当にごめんなさい。」


そういって冬の女王様は優しく春の女王様を抱きしめました。

それを見た町の人々から大きな歓声が上がりました。


村の男性は、冬の女王様は冬眠する動物達の為に自分を悪役にしてまで動物達の願いを叶えたことを知り、自分が夏の女王様や秋の女王様から聞いた冬の女王様の話に左右された、と思い恥ずかしくなり赤面したのでした。


それから月日が流れ、春の女王様のおかげでまた季節が巡り始めました。

王様は冬の女王様が塔から出した人は春の女王様と知り、春の女王様に褒美をあげようとしたのですが、春の女王様は「私にも責任があるので。」と言い、断りました。


今ではこの世界にはちゃんと季節が廻ってきています。

町の人々の同意で、冬はいつも以上に寒い日を迎え、冬眠する動物達もゆっくりと眠ることができる季節になりました。

ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] とても優しい冬の女王様にほっこりしました。 全員に優しくするって難しいですね。
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