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アウトサイドラバー

作者: ハルチカ
掲載日:2011/09/26

描写はないですが、途中「殺人」等の発言があります。

苦手な方は見ることをおすすめしません。

ご理解ください。

 目が覚めると、部屋の中はまだ薄暗かった。殺風景な部屋がぼんやりと視界に映る。

さっきから、誰かがドアを叩いている。それも消え入りそうに弱弱しく、絶え間ない。


「だれ…?」


外に向かって問いかける。もっとも、このドアを叩く人間は、一人しかいないのだが。

相変わらず、音は止まない。

返事がないのをいいことに、俺はゆっくりと寝返りをうった。



ふと、音が窓のほうから聞こえることに気づく。

ベットから僅かに離れた窓に目をやり、ようやく俺は理解した。

今日は雨が降っている。





ガラリと窓を開けると、湿った風が頬を撫でた。腰掛けたサッシがギシギシと音を立てる。

鉛色の雲が重く街にのしかかり、無機質な建物が冷たい雨にその身をさらしている。

黒と灰色の世界は、今の俺の気分そのものだ。



このところ、仕事がひとつもない。

つまり俺は、一人もヤッてないってことだ。


麻薬中毒者が薬を求めるように、俺は殺人を望んでいる。

狂っている。ああ、そうかもしれない。

でも


だから、なに?


狂っていて結構。

平和な人生なんて、まっぴらさ。




パシャパシャと水を跳ねる音がして、階下を見下ろした。


すぐ目の前の通りを、男が一人歩いてくる。

全身黒ずくめのひょろりとした男は、この雨だというのに傘もさしていない。

本人はそれを全く気にしている様子もない。



…まるで、この世に降り立った死神だな…


なんていう俺のすばらしい想像は、奴が道端のツツジを見て立ち止まるなんて動作で台無し。

どこの世界に、花を見て喜ぶ死神がいるんだよ。

俺のため息をよそに、奴は顔をほころばせる。色とりどりのツツジの中で、奴だけがモノクロ写真のようだった。



…あ…



俺の中にある光景が浮かぶ。


様々な花が咲き乱れる花畑。そこに横たわる奴の肌は、ハッとするほど色が白い。

俺は奴にそっとと近づき、細い首筋に右手をかけた。

銀のナイフを持った手をゆっくりと振り上げ…



「…おい!」



急に思考が遮られ、目の前にはまた灰色の街が広がっていた。

さっき見た鮮やかな花の色がチラついて、軽く眩暈がする。


見ると、いつの間にか奴は真下まで来ていた。



「窓開けっ放しで、何やってんだよ。風邪ひくだろ。」


「…あともう少しだったのに…」


「え?」


「全身ずぶ濡れのお前に言われたくないって言ったんだよ!さっさと中入れ!」




言われてようやく気付いたらしい。自分の体を見回して軽く身震いすると、奴は視界から消えた。

くっくっ…と笑いながらズルズルと床に降りる。



そのまま、どっかに消えろよ。

どうやら俺は、お前までヤルみたいだぜ?




ふいに扉が開く。

無表情で現れた奴はずんずんと俺に向かって歩いてくる。


一瞬俺の想像がばれたのかと思ったが、奴はエスパーじゃない。

すぐに奴の投げたタオルが視界を覆った。



「ちゃんと拭いとけ。出先で倒れられたら困る」



動きを止め、奴に視線を投げかける。奴は静かに頷いた。



「仕事だ」



ニヤリと笑ってみせると、奴は肩をすくめてみせた。



奴がコーヒーをいれている間に着替えをする。

奴と同じ黒いスーツを着て、ネクタイは苦しいからしない。

銃に手を伸ばしかけて、傍らのナイフが目に入った。


左手で掴んだナイフは冷たく、とてもなめらかだった。



コーヒーいれたぞ、という奴の声に、ああ、と返事をして、

そっとナイフを袖に滑りこませた。






仕事がある。

標的がいる。


どうやら俺は、お前をヤラなくて済みそうだ。

嬉しいのか、悲しいのか、よく分からない。




END

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― 新着の感想 ―
[良い点] ツツジのとこがよかった。花を見る死神なんているかよみたいなとこ。あそこがいい表現だと思いました。 [気になる点] できれば、実際の殺人シーンもあるとよかった。 [一言] 殺人稼業の悲しみみ…
2011/09/26 10:03 退会済み
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