第35話 決戦、魔脈塔
水晶柱が咆哮するような音を立て、眩い光が天井を突き抜けた。
議会の大広間は混乱に包まれ、議員も兵士も右往左往している。
僕はシグルの手から装置を叩き落とした。
「これ以上はさせない!」
だが彼はすぐに短剣を抜き、僕へ斬りかかってきた。
刃と刃が火花を散らし、広間の床を蹴って距離を取る。
その背後で、リリアが魔脈石を高く掲げ、核の暴走を抑えようとする。
「……まだ間に合う! 兄さんの封印は完全じゃない!」
セラが弓を引き、塔の頂上にいる議長を狙う。
矢は真っ直ぐ飛び、議長の持つ杖を弾き飛ばした。
「リリア、今だ!」
僕の声に応え、彼女は魔脈石の光を水晶柱へ放つ。
青白い光と黄金の輝きが衝突し、塔全体が震える。
シグルはその光景を見つめ、わずかに動きを止めた。
「……あいつの言った通りか……」
その隙を逃さず、僕は彼の腕を押さえ、装置を完全に破壊した。
やがて光は収まり、魔脈塔の脈動も静かに消えていく。
大広間に残ったのは、崩れ落ちた議長と、疲弊しきった僕たちだけだった。
シグルは膝をつき、リリアに視線を向ける。
「……俺は間違っていたようだな」
「間違いじゃない。ただ……選んだ道が違っただけ」
リリアはそう言って彼を見下ろした。
塔の外に出ると、夜明けの光が王都を照らしていた。
空は澄み渡り、遠くの海にオルドレア島の影がうっすらと見える。
――カイルの遺志は守られた。
だが、議会の全てが終わったわけではない。
僕たちは静かに頷き合い、次なる戦いへの決意を胸に刻んだ。