第33話 王都潜入
王都レグナスの外壁は、夜でも燦然と輝いていた。
魔脈塔から放たれる光が街全体を包み込み、まるで大陸の中心そのもののように見える。
僕たちは馬車に紛れ、南門へと向かった。
セラが先頭で衛兵に通行証を差し出す。
「影の会議からの使節団だ」
衛兵は一瞥すると、無言で門を開いた。
王都の内部は活気に満ち、人々が大集会に向けて広場へと集まっている。
露店からは香辛料の匂いが漂い、遠くで楽団が演奏を始めた。
だが、その賑やかさの裏で、黒衣の兵士たちが警備を固めている。
アルタイルが低く囁く。
「……気を抜くな。どこに目があるかわからない」
僕たちは事前に決めた通り、二手に分かれた。
セラと僕は議会の塔へ向かい、リリアとシグルは裏路地から地下排水路を探る。
塔へ向かう途中、セラが小声で言った。
「この通行証は、カイルが生前に私へ託したものだ。
あの人は……最初から、議会の中枢に踏み込む計画を立てていた」
やがて、魔脈塔の巨大な扉が目の前に迫る。
中に入ると、天井まで届く水晶柱が中央にそびえ、その周囲を議員たちが行き交っていた。
その光景は美しくも、不気味だった。
セラが目で合図を送る。
「……行くぞ」
一方その頃、リリアとシグルは地下の排水路を進んでいた。
湿った空気と、時折響く水音。
壁には古い刻印が残され、そのいくつかはカイルが使った符号と同じだった。
「兄さん、やっぱりここを通ったのね……」
リリアは胸の奥で水晶片を強く握りしめた。
その時、地上から鐘の音が響き渡る。
――議会の大集会が始まった合図だ。
そして僕たちは、それぞれの経路から同じ一点――議会の中枢へと向かっていた。