第25話 波濤を裂く刃
轟音とともに、海面が割れた。
カイルの刃が一閃し、波が真っ二つに裂け、その勢いで僕たちの船が大きく傾く。
船長が必死に舵を抑え、アルタイルが後方の追撃船に矢を放った。
僕は剣でカイルの斬撃を受け止める。
衝撃が腕を痺れさせ、足元の甲板がきしむ。
「……っ、兄妹の再会にしては物騒すぎる!」
「情けは要らん。お前は――彼女を守れるほど強いのか?」
その間にリリアは魔脈石に手をかざし、光の盾を展開する。
しかしカイルは迷いなく盾を貫く一撃を放ち、その魔力は僕の背中にまで迫った。
「リリア!」叫ぶと同時に、僕は身を投げ出して彼女を庇う。
衝撃とともに視界が白く弾け、甲板に叩きつけられる感覚が全身を包む。
リリアが兄に叫ぶ。
「どうしてそこまでして、魔脈石を奪おうとするの!?
あの日……父と母を殺したのは、やっぱり――」
カイルの表情に影が落ちた。
「……あの日の真実は、俺だけが背負えばいいと思っていた。
だがもう、隠し通せなくなった」
その瞬間、追撃船の甲板で光の柱が立ち上がる。
それは魔脈石の共鳴――しかも、複数同時に。
「まさか……あの船にも魔脈石が?」僕は息を呑む。
カイルは一瞥し、冷たく言い放った。
「俺だけじゃない。議会も、魔脈石を戦の道具に変えようとしている」
海は荒れ、戦いは激化する。
兄妹の刃が交差し、魔脈石の光が波間を染め上げた。
――この海戦が、世界の均衡を決定的に揺るがすことになるとは、まだ誰も知らなかった。