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(1)3人の女性兵士に守られている


1970年4月26にユーゴスラビア(現スロベニア)の寒村で、

私は、地球上での人生をはじめました。


ユーゴに住んでいた頃は、

まさか私がのちにアメリカ大統領になる人と結婚し、

ファーストレディになるなんて、考えたこともありませんでした。


当時のユーゴスラビアは、社会主義国家でした。

民主主義国家のアメリカのファーストレディになるなんて、

誰が想像できたでしょうか?


父は国営の自動車工場で働く共産党員でした。

母は子ども服メーカーで働いていました。

あまり裕福な家ではありませんでした。


私が異世界と現実世界を行ったり来たりできるようになったのは

10歳のときでした。


私はママの影響で洋服やファッションに興味を持っていました。

ママが私の誕生日に赤い花柄のワンピースをプレゼントしてくれたのです。


それを着て、私は姿見の前でいろいろなポーズを取っていました。

まるでファッションモデルになったような気分でした。


ランウェイを歩くモデルウォークをやってみたり、雑誌の表紙で見た顔の表情をしてみたりしました。


そうやって、時間を忘れて鏡に映った自分の姿を眺めてうっとりとしていたのです。


すると、鏡のなかに私の体が吸い込まれてしまったのです。ビックリしました。


え? 嘘、嘘、嘘!

ここはどこ? 私は誰?


見知らぬ場所で、私は、ひどく怯えていました。


1918年7月17日深夜、ロシアの大都市エカテリンブルクのイパチェフ館でした。


そこに、ロシア最後の王家、ロマノフ王朝のニコライ2世一家が幽閉されていたのです。


ロシア革命後にできた秘密警察の処刑部隊が屋敷にゾロゾロと入ってきました。

家族は地下室で待機させられていました。


処刑部隊の制服を着た隊員がニコライ2世に銃口を向けます。

次の瞬間、地下室に何発もの銃声が鳴り響きました。


「きゃぁーーー!」

悲鳴があがりましたが、その声も次なる銃声でかき消されました。


ニコライ2世の妻も5人の子どもも、処刑部隊の銃弾に斃れたのです。

銃撃の音と塵や煙で部屋は充満していました。

続いて主治医や召使らも銃殺されました。あるいは銃剣で突き刺されたのです。


処刑が終わり、現場の司令官はレーニンの秘書官に暗号電報を送りました。

その内容は、


『家族全員が皇帝と同様に運命を共にしたことをスヴェルドロフに知らせる。公式には一家は疎開中に死亡したこととする』



実は、ニコライ2世の血をひく者が難を逃れていました。



末娘。


それが私です。10歳で女王になった形ですが、戴冠式もなにもありません、

家族が全員処刑されたことの驚きしかありませんでした。


悲しいとか、悔しいとか、怖いという感情も、そのときは湧いてきませんでした。

ただただ、ビックリしたというのが正直な感想です。


国王軍の制服を着た3人の女性兵士が、10歳の少女の私をを屋敷から連れ出し、馬車に乗って街を抜け出したのです。


女性兵士の1人は大きな剣を腰につけていました。

東洋人のような顔立ちです。

黒くて長い髪に黒い瞳、エキゾチックな雰囲気を持った女性でした。


もう1人の女性兵士は背中に矢をつけ、弓は手に持っていました。

金髪にブルーの瞳、ウエストがくびれたスリムな女性でした。


もう1人は銃を持っていました。

赤毛の聡明そうな女性で、私を見ながらメガネを指で動かしていました。


私はあまりの恐怖に心の動揺が収まらずいつまでも泣いていました。

横に乗った剣の女性兵士が私を胸に抱きます。


ママの胸に触れた感じがして安心感が広がりました。

対面に座った2人の女性兵士も心配そうに見守っていました。


馬車は深い森のなかへ入っていきました。


馬車は小さな丸太小屋の前に停まりました。


3人の女性兵士と私は馬車を降りました。

御者が「落ち着いたら迎えに来る」と野太い声で言って、馬車を走らせました。

馬車はすぐに見えなくなりました。


私は、剣を持った女性兵士に支えられながら小屋のなかに入りました。

小屋のなかは夏なのにひんやりとしていました。

リビングと食堂が一緒になった広いスペースがあり、その向こうに寝室があるようです。


リビング部分の椅子に私は、女性兵士の手を借りて座りました。

3人の女性兵士は私の前にひざまずきます。


「女王陛下。私たちが命をかけて、あなたさまをお守りいたします」

剣を持った女性兵士がそう言い、3人は同時に両手を組んで頭を下げました。


「私はプレアデスから転生した魂」

剣を持った女性兵士がそう名乗りました。


「私はオリオン」

弓を持った女性兵士が言います。


「私はシリウス」

銃を持った女性兵士が言いました。


「そして、あなたさまは、アンドロメダ。女王陛下には重要な役割があります。その使命を果たすために、私たちは全力でお支えいたします」

私は、もう泣いていません。

何か自分はスゴイ人間なんだという氣になってきたせいか、力が湧いてきたのです。


「私の使命とは?」

私は静かに尋ねました。



でも、そのとき、急に頭が痛くなって、目の前が真っ白になりました。


そして、氣がついたら、ユーゴの寒村の私の家のベッドで寝ていました。

鏡の前で倒れていた私をママが見つけて、ベッドまで運んでくれたんだそうです。


お医者さまも来てくださったみたいです。

お医者さまは、何の問題もないと言って帰っていかれたそうです。


ただ、私の内面は問題だらけでした。


私が記憶を失ったときに見たのは何だったのでしょうか? 

単なる夢でしょうか? 


それとも、本当にロマノフ王朝の末裔が私なのでしょうか?



実は、これが、単なる夢ではないということが証明されたんです。

私が異世界で経験したことが、現実世界に大きく影響を及ぼしていたのです。



異世界と現実世界はつながっていたのです。



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