序
俺は生まれて間もなく電脳化の手術を受けた。
両親の話は聞かされたことがない。
聞かされたことのない俺にとっては本当に親なんて人間がいるのかどうかすら。
乳児の俺は病院で遺伝情報を抜かれ、すぐに養育院に送られたらしい。
今の時代養育院で育てられた人間の将来は相場が決まってる。遺伝情報を見て運悪く頭の出来がそうでもないならそのまま育てられて機械の整備士かなんかに。運良く「なにか」ありそうなら即電脳化、脳とコンピューターとを繋げて生体の力で情報空間に繋げられるようにする。
俺は運が良かったらしい。幼い頃院長にお前は頭が「まあまあ」良さそうだったと言われた。
俺が生まれた頃世界各国はAIをどれだけ人間に近づけられるかという研究に躍起になっていた。生まれたてのAIを幼い電脳化済みの子供達と一緒に育てるという試みが一世を風靡した。
俺はその試みの行われている研究所に送られAIと共に育てられたAIの名前は「ヤマト」今じゃ未承認だが民主主義連邦で八基ある準ヒト型AIの内のひとつになった。
だけれどやっぱり俺の頭の出来はというと「まあまあ」だったらしい。
研究途中で落第。AI養育には知能不足。
曰く俺といるとAIの方がダメになるとのこと。
その後少しの間養育院に戻ったがAI養育の経験、「まあまあ」の頭の出来でなんとか情報科学研究所附属校に編入できて、寮生活を送っているそれが俺「平野孝」だ。
「たかし」じゃなくて「コウ」な。