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愛しているから、別れる。

「俺、感染したかもしれない」

哲平から、突然のメールに一葉は、驚いた。会社で、C型感染者の注射針を、謝って、指にさしてしまったらしい。いわゆる針刺し事故である。

「すぐ、水で洗い流したし、俺、悪運強いから・・。」

C型肝炎は、血液かんせんである。感染の確率が多いのは、針刺し事故である。性行為で、感染する事もあるし、口内に傷がある場合、キスで感染する事だって、考えられる。

・・・これは、あたしは、ためされているの?・・

一葉は、自分の行いが、悪いが為、哲平がいろんな目に合うと、思っていた。この所、哲平が、健康を害しているのは、自分のせいでは、ないか。この前、腰を痛めた時、哲平は、

「入院したら、一葉に付き添ってほしい」

とせがんでいた。今回の、C型肝炎感染は、どう考えれば、いいのか。その週末、約束どうり、哲平のマンションに一葉は、いた。

「俺、我慢するから」

哲平は、一葉の、膝の上にいた。自分は、感染したとしても、自分が選んだ事だから、仕方がないとして、自分の子供達は、どうなんだろう。20年後、一葉の、この行動で、万が一、感染し、苦しむ事になったら・・・。それでも、この目の前にいる彼を感染が怖いからと、放り出す事が、出来るのだろうか・・・。

一葉は、迷った。感染が怖いからと、彼を突き放す事は、出来ない。

両手で、彼の頬を抱え、そのまま、唇を重ねて、しまった。感染してない。それを、信じよう。もし、心配な時は、自分も、検査するしかない。一葉は、一時の感情に押し流されてしまった。ここまで、一葉が、決心したのに、やはり、哲平は、まだ、若く、経験がなかった。一葉の、思いは、彼に通じでなかったのか、やはり・・・。不倫の重みに耐えかねたのか・・・。彼の、周りで、何事か、変化が起きてた。それは、おそらく、あのメールの、元彼女であろうか。一葉を、凍りつかせるメールが、その1週間後、届いた。それは、哲平が、何日か、旅行で、休んだ後だった。今までになかったのだが、連絡が、とれなくなった日が続いた。そして、出勤してきて、すぐの、メールだった。

・・・もう、一緒にいられない。好きな子ができた。その子と、一緒にいたいから、これから、気持ちを伝えようと思う。突然でごめん・・・

予測できた事だった。以前、哲平に

「好きな子が出来たから、わかれようって、言うんでしょ!」

「俺をそんな風に見てたわけ?」

言い争った事が、あったのだ。案の定、予測どうりでは、ないか。

・・・わかったよ。その子に幸せにしてもらって・・・


一葉は、覚悟していた。こんな時が、いつか、くると。でも、つい、この間、逢い。ずーっと、一緒にいるだけで、満足だと言ったのは、哲平では、ないか。ほんの、1週間前の事なのに。一葉は、仕事中だったのに、ショックで立ってられなかった。

・・・もう、愛されてないのだ。今まで、何度も、一緒に居たいと言っていたのは、誰だったのだ?どうして、1人じゃないんだ?と言ったのは、誰だったのだ?哲平でなっかたのか?・・・

「嘘つき」

一葉が、全てを、犠牲にしなかったのが、せめてもの救いだった。やはり、彼は、まだ若く、経験がない。他に一緒に居たい人がいるなんて、感染しているのを知って、関係してしまった一葉に、ひどくないのか・・・。だが、予測できた事だった。

 それでも、一言、聞きたい事がある。一葉は、夜、彼に携帯をかけた。

「・・・・」

が、切られてしまった。

・・・どうして、1週間やそこらで、好きな人が出来たっていえるの?あの時、どうして、関係をもてたの?・・・

それだけが、聞きたかった。が、携帯はきられた。もう1度かけてみた。

「・・・・」

が、でない。

・・・もう、わかった。あなたの望みどおり2度連絡はしない・・・

最後のメールを送り、一葉は、メアドをかえた。

・・・もう、彼とは、連絡しない。・・・

傷つきたくは、なかった。哲平から、もらったお守りとペアのチョーカーを箱に入れた。そして、会社の彼のロッカーにそっと、押し込んできた。

・・・終わったのだ・・・

何度も、別れを繰り返し、それでも一緒にいたいと思っていたのに、やはり、哲平は、若く、他の女に恋をした。解りきった事でないか・・・。もう、自分は、彩はなく、若い女と比べられるのは、耐えられない。自分達は、10歳も違うのである。

・・・ここで、別れてしまえ・・・。

哲平の事は、全て、忘れるのだ。あの、朝月の事とだって、前兆にすぎなかったのだ。

「哲平は、チャラ男だから、あげるわ」

一葉は、帰り際、悔し紛れに、朝月に言い放った。朝月だって、すきあらばと、哲平を狙っていたのである、自分が降りたいま、もう関係ない。そう、一葉だけは、そう思っていたのだが、ある日、突然、携帯がなった。哲平からだった。

「でない」

一葉は、無視した。哲平とは、終わりにしたのだ。もう、繰り返したくない。傷つけられるのは、もう嫌なのだ。彼は、感情的に彼女を追い詰める。携帯は、1時間置きになった。メアドを変えたから、哲平から、メールは届かない。電源を切っていても、携帯は、哲平からの、着信を知らせていた。・・・でるしかない。一葉が、哲平からの携帯にでると、恐ろしく、興奮した哲平の声だった。

「あなた、俺達の関係を、周りの人にはなしただろう?」

「何のこと?」

「朝月にいっただろう?」

また、朝月とは、メールで繋がっているのである。朝月に哲平をあげると言ったことで、朝月が、2人の関係を疑ったらしい。

「俺は、ようやく、この職場になれたの。お願いだから、土下座でもなんでも、するから、誰にもいわないで」

「あたしかまわない」

一葉は、イジワルな気持ちになった。

「お前、だってこの職場に居られなくなるぞ」

この期におよんで、哲平は、自分の身の保全をいうのか。

「冗談よ。あたしだって、子供がいるんだから」

「朝月と俺が付き合ってると、思っているのか?だとしたら、それで、嫌味を言ったのか?今、ようやく、分かったよ。何て、女なんだ」

「どうして、そう相手の傷つく事がいえるの?」

「誰が、そうさせたの!」

真っ直ぐで、冷たい哲平の声。もう、一葉を愛している哲平の声では、なかった。

「なんなら、俺の好きな人みますか?」

これ以上、ひどい言葉は、ないと思う。自分の気持ちに正直な分、平気で人を傷つける。どうして、一葉が、哲平の好きになった女に会わなければならないのだ・・・。別れたくないなんて、一言も言ってないのに。

「だいたい、いつも勝手に判断して・・・・。思い込みで・・・。で、結局、未練で電話してきて・・・。終わったから、今更、いいんだけど。」

哲平は、感情的に続けようとした。

「もういいよ。もう・・・」

つらくなった一葉が言うと

「また!いつも、自分勝手で・・」

哲平の怒りは、とまらなっかた。一葉が、メアドを勝手に替えた事を怒っているのか、とまらなかった。

「やっぱり、無理だったんだよ」

哲平は、つぶやいた。やっぱりでは、ない。哲平が、本気で、望めば、自分は・・・。でも、もう。駄目だ。

「哲平聞いて・・・」

一葉は、彼との関係が、辛くなっていた。

・・・もう辛い。哲平のこの真っ直ぐさが好きだった。でも、自分は、彼といると傷つき、なんとボロボロになり事か・・・。

激しい恋愛なんて、したくない。静かに愛されたいだけだった。哲平は、振り回し、奪うだけ、奪ってさってしまう恋。

・・・もう、疲れた。彼と、本当に終わりにしよう。・・・

「あのね。聞いてほしいの」

一葉は、冷静に話しかけた。哲平は、誤解だったことが分かり、少し、落ち着いていた。

「結婚記念日が近いの」

別れる時期には、丁度いいのよ。と、説明するように、一葉は、結婚記念日が、近いと、説明した。こんな不安定なまま、結婚記念日を、迎えられないと、日々、悩んでいたのだ。それだけ、哲平の事を、愛し、悩んでいた。だが、

「お祝いしなよ」

哲平は、怒っている感じだった。

「そのつもり。でね。やりなおそうと思っている」

一葉も、ひらき直った。

「そうしてほしい」

哲平の声は静かになっていた。そんな事、言ってほしくないのだが・・・。

「やっぱり、無理だったんだよ」

携帯の向こうで、哲平が、寂しく笑うのが聞こえた。鼻で、軽く笑い。そして

「さよなら」

力強い短い声だった。きぱっりと。

「じゃあね」

一葉も、携帯をきった。涙がとまらなかった。終わったのだ。せめて、顔を見て、終わりにしたかった。でも、逢ってしまったら、また、始まってしまう。もう、終わりにしたい。彼を好きになれば、なるほど、自分も相手も傷つく。どうして、自分は、哲平と友達でいられなかったんだろう。すれ違えれば、良かったのに、どうして、彼を不倫という目に合せてしまったんだろう・・・。せめてもの、救いは、彼に好きな人が出来た事じゃないか。自分は、2度と、彼に逢っては、いけない。こんなに、自分勝手な哲平を、いまでも、愛してる。一葉は、メールした。

・・・消えようとして、ごめんなさい。うらまれても、当然。自分を大切にしてくれる人を思わなかった事を哲平に教えられた。本当に、ごめんなさい・・・

替えていたメアドを哲平に告げた。もう、やりとりは、ないだろう。

・・・うらんでなんかないよ。今まで、ありがとう・・・

哲平からの最後のメールとなった。

 いまでも、一葉は、哲平を愛してる。でも、それは、もう、夢の中での事と思う事にしている。哲平は、どんな事があっても、一葉を忘れないと言ったが、新しい恋に埋もれてしまっているだろう。最後に一葉は、哲平にメールした。

・・・・哲平は、まだ若い。これからたくさんの恋をするでしょう。だから、哲平とは、哲平に好きな人ができるまでにしようって思ってた。子供が大きくなるまで、普通の家庭でいられるようがんばる。哲平の処には、戻らない。哲平もそうだと思うんだ。哲平といられて、幸せだった。・・・・。

 山形でみたあの花火は、忘れない。あの2日間があるから、しばらくがんばる。自然と哲平の姿を探してしまうかもしれないけど、この恋・・。もう、終わらせる。不倫なんて、お互いしてはいけない。それでも、いまでも・・・・。哲平。でも、この恋は・・・。


それから・・・。哲平へ。

哲平。結局。あなたは、元彼女の薫と、復縁していたのね。あたしには、「好きな人が出来た」と、言ったのは、嘘だったのね。そして、「その子と、ずーっと、一緒にいたい」と、言ったのは、真実。でも、どうして、あたしに、本当の事を言ってくれなかったの。そうすれば、一緒にいり間に、他に好きな人を、作ったんだ・・・。って、思わず二、すんだのに。でも、この後の、告白には、驚いたよ。

「どんな形であれ、俺に幸せになってほしいと言った思いだけは、かえないでほしい」

そう・・・。哲平。我儘だよ。

何があったの?と、聞くあたしに、あなたは、簡単に、

「子供ができました」

と、返信してきたね。きっと、あの、8月の、ワイナリーで、メールを、見つめていた頃の、赤ちゃんだよね。つらかったっよ。あたしと、一緒にいたのに、彼女を、妊娠させていたなんて・・・。そして、「結婚する」

それは、あたしには、衝撃的だよ。哲平。もう、忘れよう。あたしが、どんなに、がんばっても、哲平を幸せにする事は出来ない。あなたの嘘も我儘も許そう。それ以上に、あたしは、嘘をついたのだから・・・。

「もう、忘れたい」

あたしの言葉に、あなたは

「わすれてほしい」

そう、言ったね。

「今後一切、連絡もせず。お互いに触れない。お互いの幸せを、影から、応援しよう」

それが、最後の言葉になったね。何が、真実だったか・・・。それは、二人にしか、わからない。きっと、その時の二人の愛し合う気持ちは、真実だったと思う。ただ、上手く、育てられなかっただけ。きっと、今でも、あたしは、哲平を、愛してる。だから、彼と、元彼女の結婚を、暖かく、見守ろうと思う。そして・・・。生まれてくる子供のために。哲平と逢えて、良かった。これ以上、あなたの傍にいる事は、よそう・・・。


・・・心。強くなれ・・・                      一葉。



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