繋がる・・・。
「何時まで、起きてるの?」
哲平からのメールは、頻繁なものに、なっていた。
・・・いったい、いつ、送信する暇があるのだろう?・・・
と、一葉が不思議に思うほど、哲平からの、メールは、早く、返信もすぐきた。一葉が、帰宅し、食事の支度をしていても、それは、続き、夜は、寝付く瞬間まで、メールは、続いた。
・・・いい加減、無視して寝よう・・・
と思っても、哲平を思うと、邪険にも、できない。一葉も、弟をかまうような気持ちで、哲平にメールし、その内容は、次第に、エスカレートしていった。おもえば、最初は、一葉の、本のイタズラ心だったかも、しれない。・・・・が、哲平は、常に真剣で、こんな事を聞いてきた事も、あった。
「ねえ、あの内容は、ご主人とベットにいる時にうったの?」
涙目になっていた。
「そんな事ないよ」
一葉は、はっとし、否定した。ここん所、夫婦の間は、冷えており、もう、別室で過ごすだけの間である。
「仲、悪いから。」
そう、告げると、哲平の顔は、明るくなった。
「もしかしたら・・・・・」
一葉は、感じていた。哲平が、もう、自分に、愛情を感じている事を・・。そして、自分も。
「ねえ。」
一葉は、メールした。
「いま、哲平の、自宅、近くまできている」
と。何と、答えるのか。すぐ、メールの返事は、きた。
「じゃ、俺も、すぐ行くから」
街中の、レンタル屋である。
「本当に?」
一葉は、
「そこで、待ってる。」
と、伝えた。勿論、最初は、冗談であったが、すぐ、行くと言われたら、行かない訳にいかない。一葉は、コートを、1枚はおると、あわてて、夜の街に、出て行った。
「まさかね。」
いる訳が、ない。でも、いたら、どうする?一葉の、心が、震えた。
「もしかしたら、あたし・・・」
こんなに、どきどきするのは、何年ぶりだろう。いるはずがない。そう思いながら、30分待った。どこかで、期待してる。一葉は、待ちきれなく、なっていた。彼に逢いたい。
「どこにいるの?」
一葉は、彼にメールしてしまった。彼からの、メールは、すぐ、戻ってきた。
「まさか、本当にくるとは、思わなかった。待ってて」
哲平は、車を、走らせ、息咳切った顔で、一葉の前にあらわれた。あわてて、出てきた割には、これから逢う一葉に、気をつかったのだろう。ジャケットをはおり、うわさ通りの、お坊ちゃまの格好である。
「お茶でも、飲む?でも、こんな処、誰かにみられたら、困るだろう。車にのって」
哲平は、一葉を、自分の車に、乗るよううながした。
「どこに行く」
車は、夜の街へと走り出した。彼は、運転しながら、一葉の家族の心配をした。やはり、一葉には、家族があるのである。
「こんな所、誰かに、見られたら、どうするの?」
それらを、心配しながら、哲平は、一葉に
「おれ、一葉さんなら、いいと思います。」
意味深の言葉である。何度も、
「好みの女性は、一葉さんみたいな人」
何度も、繰り返し、哲平は、いった。
「うん。でもね。哲平君では、親子になっちゃうじゃない?」
笑顔で、一葉が、応えるた。
「えぇ!」
と、哲平の顔は、曇った。後から、聞くと、親子と言われたのは、かなりショックだったらしが。
ほんの、1時間のドライブを、終え、遅くなるからと、哲平は、元の場所に、一葉を送り届け、二人は、別れた。帰宅後、一葉にメールが、届いた。
「一緒に買い物に行こう!」
というメールだった。
「いつ?にする?」
「合せる!」
「じゃぁ!忘年会のある。その日」
平日で、たまたま2人は、休み。2人は、新幹線で、隣街に向かうというわけだ。その日の、夕方は、2人の職場の、忘年会があるため、どうしても、時間の都合上、新幹線という訳になったのである。この日。2人の関係は、お互いが、気をつけていたのに、かかわらず、かわってしまうことになる。
その日、朝は、近くのショッピングセンターで待ち合わせをし、哲平のマンションの駐車場に、一葉の車を停め、新幹線ホームにむかった。2人は、恋人きどりである、新幹線にのっている間、哲平は、広いシートに腰をおろしているに、一葉の、体に、よりかかってきた。
「狭いのかな」
一葉は、その時、あまり気にとめなかったが、今思うと、哲平も、その時、一葉と同じ気持ちだったにちがいない。寄り添う哲平の気持ちが、嬉しかった。自分の気持ちも、哲平とおなじである。買い物をし、哲平にみたてて、もらいながら、洋服を買った。
「こんなの、どう?」
一葉が、哲平にえらんだのは、ストライプのマフラー。哲平によく似合う。
「いいよ。悪いから」
哲平は、嬉しそうに、遠慮した。
「これ、プレゼント」
一葉は、哲平に、今日の記念とさしだした。照れくさそうに、受け取りながら
「じゃ、俺は、ケーキ買うから」
「甘いの。嬉しい。でも、何処で、食べるの?」
「うん。俺のマンション。」
「へぇ・・・」
駅ビルで、一葉、お勧めのケーキを購入し、帰路。哲平のマンションにむかい、買ってきたケーキを食べた。洋ナシのタルトであった。
「タルト好き?」
「うん」
「でも、食べきれないね?」
二人は、笑った。
「疲れた?」
「俺。マッサージできるんだ」
「へぇ。いやらしい」
「まさか」
リンパマッサージの資格を持っているという哲平は、一葉の脚のマッサージをはじめた。ケーキを食べる為という事と、これから、出席する忘年会に着替える為、哲平のマンションにいたわけだが、一葉には、哲平が、何を考えているのか、わからなかった。男1人住まいのマンションにノコノコついてきて。軽い女とみられないか、それとも、普段から、女性とは、そおいう付き合いをしている男なのか。哲平は、一葉の、脚のマッサージをしている。確かに、資格をとっているだけあって、マッサージは、上手だ。真剣な顔で、一葉の脚を、マッサージしている。眼差しが、何故か愛おしく感じてしまった。 思わず、一葉は、哲平の右手をつかんでいた。その手を、自分の右胸に重ねていた。
「えっ?」
哲平は、驚いたが、拒まなかった。メールで、さびしくて、仕方の無い夜、哲平に抱きしめてくれと、頼んだことがあった。哲平は、ふざけながら、
「いろんなコースがあるんですけど・・・」
って、答えったっけ。ごく、自然に、一葉は、哲平の手をとっていた。すると、哲平の、左手が、一葉の体を包んでいた。思わず、一葉は、哲平の顔を見上げた。そこに、哲平の眼差しがあった。本当に思わず・・・。だった。
・・・ごめんなさい。そんなつもりじゃ・・・。
一葉の唇が、哲平を求めていた。哲平は、拒否しなかった。その後、2人は、どうしていたか、覚えていない。ただ、いつまでも、哲平が、一葉を抱きしめていた。それだけを、一葉は、覚えていた。もう、引き返す事は、出来ない。一葉は、自分の気持ちに嘘は、つけない事を確信した。このまま、いったら、2人は、大変な事になる。でも、一葉には、哲平と一緒にいる事が全てに思えた。そして、哲平は、これから、彼女と一緒にいる事であらゆる事で苦しむ事になろうとは、思わなかった。あの時、マンションに入らなければ。後で、傷付かずに、すんだろうに・・・。思いのままに、一葉は、哲平を求め、哲平は、一葉を求めたんだと思う。20代のまだ、若い哲平は、一葉を、ひたすら、追いかけはじめていた。そして、一葉も、渡っては、いけない橋を渡ってしまう。それは、年明けての、1月。哲平のマンションで、晩御飯を食べる事が、2人の習慣になりつつ、あった時である。ごく普通に、哲平は、一葉を誘い、一葉も、彼を受け入れてしまった。
「この次の休みは、何してるの?」
カレンダーを、横目でみながら、哲平は、一葉の予定を聞くようになっていた。
休みがあわなければ、2人で、休みをあわせ、時間をつくり、哲平のマンションで過ごす日が、増えていった。多い時では、週に2回、逢う事が、増えていった。
「とくに、ないよ」
「じゃぁ。逢おう!」
「うん」
一葉は、笑った。自分を、思ってくれている。嬉しい。本気で、自分を求めてくれるのが、嬉しいが、答えられない現実が、一葉を、待っている。だから、哲平の、思いが、強ければ強いほど、辛く感じる時があった。
「帰らないで」
帰宅の準備をしはじめると、哲平は、邪魔をしはじめた。
泣き出しそうな顔をして、帰らせまいとする。どんなに、一緒にいても、一葉の持つ現実が、哲平を苦しめた。衣服を、身につけることさえ、邪魔をする。
「もう、帰るの?」
「だって、哲平。ここは、私の家でないもの」
「!」
・・・あっ・・・
と、いう顔をしたまま、哲平は、目を伏せた。
「ごめん」
一葉も、まずい事をいってしまったと、後の言葉を探ったままだ。
見送る時、いつも、哲平は、寂しそうな顔で、一葉を見送った。
「気をつけて」
見送る彼の顔が、寂しそうだった。
1度だけ、一葉を自宅まで、送ったときが、あった。突然。
「一葉の旦那がうらやましい」
ポツンと哲平は、つぶやいた。
「哲平」
・・・あぁ、でもね。・・・
一番、苦しいのは、一葉だ。哲平とすごした後、自分の家族と逢う。
・・・いったい、どんな顔で逢えば、いいんだろう。いつまで、続くんだろう。・・・
哲平を、本気で愛していながら、この苦しい報われない恋を終わらせ、心穏やかに、家族の中にありたいと願う気持ちがわきおこる事もある。若かったら、哲平の元に行けるのに。でも・・・。自分には、子供がいる。突きつけられる現実。一葉の我儘。エゴと呼ばずとして、何と言うか・・・。彼を繋ぎとめておいて、いいのか。
・・・それでも、哲平を愛している。・・・
この、矛盾。一葉は、自宅に着くと、すぐ到着メールを送った。
・・・只今、到着。・・・・
・・・お帰り・・・
すぐ、彼からは、返信が来る。こない日は、なかった。
彼を心配させないために、メールを打つ。いつまで、続くか、わからない恋にとらわれて。
バレンタインが、間近にせまっていた。
「ケーキつくる」
「誰が?」
「哲平が。」
「何で、俺が?」
「教えるから。」
当然、哲平の部屋ですごした。
「もっと、一緒にいたい」
「旅行に行こう」
「行きたい」
2人は、旅行の計画に行こうという話しで、盛りあがっていた。
「行き先は?何処行きたい?」
「那須」
「わかった」
行き先は、一葉の、行きたがっていた那須になった。温泉をまわり、美術館めぐり、後は、一葉の好きな買い物だ。
「じゃあ。ラーメンも食べる」
哲平の意見で、名物のラーメンも食べる事になった。念願の、1日中一緒にいられるのである。2人のテンションは、上がり、ますます離れられなく、なっていった。




