魔王様とゴミ掃除④
ぶっちゃけた話、こいつらを片付けるだけなら簡単な話なのよね。いくら対魔族を得意とするパノス聖王国の聖騎士といえど、中堅どころかそれ以下程度なら私一人でも一掃できる。上位の聖騎士複数か派閥トップが来ない限りは問題ないかな。こちとら一応魔王の一角なんですよ。
ただ、今回はぶち殺せばいいわけじゃないからねー。
というかここで聖騎士が殺害されるなり行方不明になったりしたら、間違いなくパノス聖王国は私のせいにしてくるだろうし、それを理由にして魔王側と戦端開く事、それにハイランドジアに協力することを求めてくるでしょう。なので脳筋解決はできないのよね。
まぁあとシェリーの立場上の部分もあるし。
なので、連中のやろうとしていることの逆をしてあげることにしました。
奴等のやろうとしていることバラしたら、立場悪くなるの奴等の方じゃない?
というわけで本拠から必要な人員を呼び出しました。
わが魔王領の誇る魔導技巧の技術者、ヘイゼル。
何かを隠すのならお任せ、”ディスアピア"ユーリック。
植物操作なら自由自在! カレンティア。
いずれもうちの勢力では幹部的な子達。それを大放出である。
それらの人材をしかけて仕掛けた内容をざっくりと説明すると。
まず街道を封鎖させたのはシエル。ヴリトラ使えば崩落させるのも元に戻すのも楽勝だからね。そうして人通りの少ないこの森にルート変更したと見せかけたってのはまぁわかるよね。
そうして奴等の目的が果たせそうなルート……魔王領の近くを通る、ほぼ人の通行もない森を利用する事で奴等をおびき出したのである。
ちなみに森にしたのはそれ以外にも理由があって。
姿を現すまでハイランドジアの騎士団の存在を隠蔽していたのは、ユーリックのディスアピアの能力。
そして奴等の口を滑らせたのが、カレンディアの能力だ。さまざまな植物を操る彼女の扱えるものの中には、そういった効果を持つ花粉のようなものを散布する事も出来る。その結果は先ほどのやり取りだ。
話聞いた時に「滅茶苦茶ヤバイブツなのでは?」と思ったけど、効果としてはそれほど強いわけではなく、せいぜいその時頭の中で考えている事を口に出しやすくなる程度の効果らしい。言ったらまずいと強く思って言えば通用しないって話だった。
多分あいつら自己顕示欲が強いタイプなんだろうなー。状況下的に殺すんだったら話しても問題ないって考え方があっただろうし。シェリーに上手く言葉を引き出して欲しかったんだけど、その必要もなく完全に自滅してくれたわ。
……それはそれとして、やっぱりヤバい植物なのでは? 無味無臭らいしし。私はあまり言ったら不味い事とか彼女達の前では考えてないからいいけどさ。
結果として、この場での目的はほぼ達した。後は連中を殺さずに捕縛する事だけだけど、一応実力的にちょっと面倒な奴はフレアの形を借りた私が仕留めたし(殺してはないけど)、残りはアヤネとハイランドジアの騎士団で問題なく対応できるでしょう。
ハイランドジアの騎士団は聖騎士には劣るけどそこまで貧弱というわけではないし、数はこちらが勝っている。そこに更にカレンディアの薬と私の能力による強化も入れたので、聖騎士と言えど奴等程度の実力なら負ける要素はない。
あ、私の強化は自身の血に魔力を込めて供与する事で対象の身体能力を上昇させる技。私って結構小器用なんだよ? 長時間使用しちゃうと不味い事になるんだけど、短時間であれば支障はない。
範囲に対する制御が大分こなれてきたユキの能力も使って、連中の初手も潰したしね。奴等にはもったいないくらい完璧な作戦ね!
とかいっている間に終わりそうね。後は、メインの仕込みがうまく行ってれば完璧なんだけど。
ぎゅっぎゅっと抱き着いてくるフレアの感触を楽しみながら(同一人物が抱き合っているようにしか見えないので、ユキが微妙な表情を続けてるが)
とか思っていたら、耳に着けたイヤリングから魔力の反応を感じた。それに応じてイヤリングの装飾を操作すると、耳元で声が流れ出す。
『リン様、ヘイゼルです。映像、つつがなく各国大使に見ていただけました』
よーし!
ヘイゼルの扱う魔導技巧のアイテムの中には、別の場所で撮影した映像を投影するというテレビカメラみたいな道具も存在する(さすがに途中でいくつか中継器をかませないといけないらしいけど)。今回はそれを使って、ハイランディアの王城で鑑賞会を開いてもらったというわけ……パノス聖王国が魔王領と隣接している諸国を陥れようとしているっている情報を掴んだという理由で、友好国の大使たちも含めてね。
単純に現場の人間だけだったらのらりくらり逃げられたかもしれないけど、ここまですればもはや言い逃れはできないでしょう。
ミッションコンプリート!




