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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.3 赤毛の聖女は側にいたい
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魔王様とゴミ掃除③

●視点変更:第三者


「……そもそもなんで今更なのよ。私はここまで一人旅してたんだからチャンスはもっとあったでしょう?」


何を呑気に話しているんだろうな、と思いつつアーシェリカは言葉を続ける。問答無用でしかけられても何とかなるようにはしてあるが、喋ってくれるならそれに越したことはない。ちょっと()()()が怖くなったが、この状況ならある程度誘導すれば口を開くだろう。


案の定、クレイトスはアーシェリカの問いに答える。


「一人だろうが、見通しのいい街道で襲撃なんざ出来んだろうが。それにあまり魔王領から離れた場所だと犯人調査が厳密に行われるだろ。その点、ここなら……な」

「やっぱり魔王に押し付けるつもりね……過激派の考えそうなことだわ」

「本来ならカルビアに向かう途中で仕掛けるつもりだったんだがな。曲がりなりにも聖王国の聖女が魔王領の奴に襲われて殺されたとなれば、ハイランドジアや周辺国の連中も聖王国が戦端を開くことに文句は……何を笑っている?」


ペラペラと口を滑らせていたクレイトスだが、いつの間にかアーシェリカがその顔に笑みを浮かべていた事に気づき言葉を止めた。


「だってあまりにも愚かだもの」

「はぁ?」


アーシェリカの言葉に、不快気に男達が声を上げたその瞬間だった。周囲に唐突に人の気配が現れた。しかも大量に。


その気配の方にちらりと視線を送りながら、アーシェリカは言葉を続ける。


「国の要望で依頼を受けたのに、護衛がこんな可愛い子一人だけなわけないでしょ」


その言葉に、合わせ。左右の森の中から金属のぶつかる音と共に、鎧姿の騎士が森の木々の陰から次々と現れる。その数、合わせて9名。その9名の騎士達はアーシェリカを護るように左右へと陣取る。


「当然他にも護衛はいるわよ」

「……伏兵か。どうやって隠してやがった?」


クレイトスを筆頭にここに来ているのは全員聖騎士だ。範囲の差はあれ周囲の気配くらいは察知する事が出来る。だが、先ほどまではまるで気配を感じることはなかった。


「罠を這ってやがったとはな……俺達の事気づいてやがったか」

「当たり前でしょ。ウチのボスを舐め過ぎじゃないかしら?」

「……だが、だとしたらそれこそお前らの方が舐め過ぎじゃねぇーのか? たかだか2桁にも満たない騎士だけで、聖騎士5名を抑えられるとでも?」


パノス聖王国の聖騎士は程度の差はあれ、戦闘能力において優れたものに与えられる階級だ。そこいらの騎士程度なら倍程度であれば蹂躙できる……クレイトスにはその自負があった。それは他の男達も同様だ。クレイトスの横に立った男が、クレイトスの言葉に続けて嘲るような表情で口を開く。


「むしろ全員揃えて魔族に殺された事にしてやるよっ……!」


その言葉の終わりに合わせて男がアーシェリカの方に掌を向けた。直後、その場所に人の頭位の火弾が出現し……間髪入れずアーシェリカ達の方に向けて放たれる。


アーシェリカの元で爆発が起きる。その爆音の中、クレイトスは声を張り上げた。


「どうせ今のは結界で防がれてるだろ。まずは邪魔な騎士共を殺るぞ」

「「「おうっ!」」」


クレイトスの指示に従い、残りの三人も即座に動く。二人は先ほどの男と同様魔術を、残りの一人は剣を抜き放ち騎士の方へと向かって走る。が、次の瞬間悲鳴があがった。


「なんだ!? 魔術が発動しねぇ!」

「こっちもだ!」


魔術を放とうとした二人だが、その周囲には何の効果も表れず困惑する。

更には突撃した男も、


「ぐごっ!?」


爆炎の中から現れた小柄な姿に衝撃を叩き込まれて、無様に地面に転がされる事になった。さすがに即座に立ち上がったが、ダメージはきっちり入ってしまったようで大きくせき込む。


「は?」


その光景に、おもわずクレイトスの口から間抜けは声が漏れた。アーシェリカの実力は知っているのでさすがに秒殺などとは考えていなかったが……まさか二人が魔術を失敗し、事肉弾戦だけでいえば5人の中でもっともすぐれた男があっさりと殴り倒された現実にだ。


あまりに想定外な状況に、思考が遅れてしまう。


そして、そのまま追いつくことはなかった。次の瞬間クレイトスは突如目の前に現れた金色の何かに光を撃ち込まれ、その意識を消し飛ばしてしまっていたので。


●視点変更:リン


「はい、お仕事終わりっと」

「お姉様、お疲れ様ですわ!」


向こうのクレイトス、だっけ? リーダー格の男を吹っ飛ばした後そのまま森の中へと飛び込びその場を離れた私に、フレアが抱き着いてくる。その柔らかい体を受け止めながらもう一人この場にいる人間──ユキの方に視線を向けると、彼女は微妙な表情を浮かべていた。


「なんというか……お嬢様同志が抱き合っているのを見るとなんとも言えない気持ちになりますね」

「どんな格好していてもお姉様はお姉様ですわよ?」

「それはそうなんですが……」


ユキの言う通り、私は今フレアの姿に変身している。


シェリーに確認したところ、あの面子の中でクレイトスだけ一段上の実力だとの事だった。それでも正直アヤネと()()()()()騎士団の方々だったら対処できたと思うけど……わざわざリスク追う必要にないし、奴等を確実にボコすためにクレイトスだけ私がぶちのめす事にしたのだ。


ただ、現時点で私があの場所に直接姿を現すわけにはいかないから、フレアの姿を借りたんだ。あそこでもし私……というか現時点で魔王が関与しているとなると、いろいろ立てた作戦が台無しになっちゃうからねぇ。

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