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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.3 赤毛の聖女は側にいたい
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魔王様と王都ハイランディア⑤

俺の言葉に、アーシェはぽかんと口を開けた間抜けな顔を晒す。


だがすぐに立ち直ると、今度は眉を顰めて口を開く。


「……本気で言ってるの?」

「本気も本気、大本気だけど?」

「聖王国と魔族が協定を結ぶなんて無理に決まってるでしょ」

「いや聖王国となんて一言も言ってねぇよ」


それは無理難題過ぎるからな。だが聖王国は魔族絶対ぶっ殺すマンも多いが、魔族から人間に対する被害を減らしたいと考える人間もそれなりに存在する。


「協定を結ぶのは、魔族の領土と隣接している国々だ」


そういった国々と魔族が不戦協定を結ぶことは、間違いなくそういった連中に対しては実績となるはずだ。


「……それだとしても、無理難題だわ」

「どうしてだ? 過去に事例がない話じゃない」


人族と魔族の長い歴史の中、魔族と人族が手を結んだ時期はないわけじゃない。特に一勢力同士くらいでの不戦協定なら何度も結ばれている。


「さすがに魔族全体に不戦協定を結ばせるのは無理だが、ある程度の規模なら十分可能なレベルだぞ」

「……どのくらいの範囲までなら可能なの?」


よし、興味を示してきたな。


そしてこの問いには割と明確に答えられる。


「半分以上は可能だな」

「そんなに?」

「まず【変貌】……ようするに俺と、【暴食】は問題なく可能だ」

「そうね、【暴食】は人間に対してとても友好的だと聞くし」


俺の女神……【暴食】の魔王、アージェ(アーシェと名前が似ててややこしいが)は人の街で人間達と一緒に料理に舌鼓をうったりしているような女性で、その街が属する国もそれに対して何か余計な事をするようなことはしない賢い国だ。ここはすぐにでも締結可能だろう。


「それから【破眼】【怠惰】も問題ないだろうな」

「その二人に関しては殆ど情報がないのだけど……大丈夫なの?」

「この二人は相手から手を出してこない限り反撃をしない……というか二人とも引きこもりだから問題ない」


実はこの【破眼】と【怠惰】、実力でいえば魔族の中でTOP2なのだが完全なことなかれ主義で本人たちが動く気もなければ部下たちにも余計な面倒を引き起こさないようにすらさせている。契約とかの締結は全部こっちで代行してやる必要はあるが、面倒が起こる可能性が減るとなれば否とはいわないだろう。


正直ここまでは現時点でも人間とは争っていない勢力なので、今の状況でもさして変わらないのだが、人間としては明確に約定を結べた方が安心感はあるだろう。


「でもここまでかしら? 残りは人間と戦争中だし……一つは正体もよくわかんないけど」


【死霊】の事だろうな。アイツは表に出て目立つ動きをする事はまずない。裏でいろいろ画策する陰気臭い奴だ。人間側にはさしたる情報はないだろう。……情報としては流してしまってもいい気もするが、それはまた後の話にするとして。


「まあ、【獣化】は無理だな。人間を食料として見てるし」

「……っ!」

「……いっておくが、これは人族が牛や馬を食料として見ているのと同じだからな」

「……」


まぁそう言われてはいそうですかと納得できないのは解るけどな。自分達が食料と見られて憤りを感じるのは当然の事だろう。だが許されざる事だと考えるのは傲慢だ。この世界は弱肉強食、喰われたくないなら力で抗うしかない。人間が動物を殺し食料とするのと何ら変わらないこの世界の摂理だ。姿かたちは似ているとはいえ、我々魔族と人族は異なる種族なのだから。


「とにかくあそこは無理だ。というか俺達が人との戦端を開くのを望んでないせいで、食人をするような連中は軒並みあそこに流れ込んでるからな。あそこをなんとかしちまうと、他の魔王領にそういった連中が紛れ込んでしまう」


なので、【獣化】の領土と隣接している国の連中は今後も頑張ってくださいとしか言えない。


「……【幻惑】は?」


とりあえず【獣化】に関しては納得してくれたのか、それとも諦めたのかこれ以上話すのはやめたらしい。話を進めようとしてきたので、それに素直に従って答えを返す。


「アイツの場合、不戦協定の乗る可能性もなくはないがいつ裏切るかわからないので。そういった協定には含めたくない」


とにかく信用ならない男なので。楽しそうであればろくでもない事をやりかねない男なので【獣化】よりよっぽどタチが悪い。それこそ協定を崩壊させるために一度参加した後に裏切るとか普通にやる男だ。なので絶対に仲間には入れない。


「あとは、【樹海】も無理よね。となると半分以上じゃなくて半分では?」

「いや、【樹海】はいけるぞ?」


あれが人間と戦端を開いたのは、人間の国が【樹海】の王ドリアネの森に資源を目的に侵略をしようとしたからだ。彼女は基本的に魔王の中では温厚な性格で、人間が仕掛けてこない限りは手を出す事はない。そもそもあいつら基本的に森から出ようとしないし。


そして最近その侵略しようとして国も代替わりが起こり、新しい王は魔王側との闘争に消極的らしい。そりゃそうだ、実際これまでの戦いで資源は殆ど確保できず、むしろ物資や人材を消耗しているだけだからな。魔王側から休戦の話を持ち込めば一も二もなく受けるだろう。まぁ他の連中と違ってドリアネにはちゃんとした説得が必要になると思うが。


「【変貌】【暴食】【破眼】【怠惰】【樹海】。これだけの勢力と不戦協定を結んだとなれば、かなりの実績となるんじゃないか?」

「それは確かにそうだけど……」


よし、ここは押しどころだな。

そう考えた俺はベンチから立ち上がると、アーシェの前で跪いてその手を取った。


「ななななな何?」

「俺はお前を失いたくはないんだよ」

「なっ、にゃ、にゃんの話!?」


猫の話はしてないぞ、という突っ込みは抑えて、言葉を続ける。


「これは確定している話ではないんだが、お前の後を追うようにして移動しているパノス聖王国の連中を捕捉している。何か話を聞いているか?」


その言葉に、顔を赤くしてわたわたしていたアーシェの動きが止まった。そして無言のまま首を振る。


「この地方に何人もの聖騎士を送り込んでくる理由は、二つしか考えられない。一つは魔王領への侵入或いは侵攻。もう一つは」

「民間人気の強い私の抹殺ね」

「そうだ。お前を抹殺し、その責をこちらに押し付けてくる可能性が高い」


アーシェは防御能力は非常に高いが、攻撃能力に乏しい。それでも失敗した事や調査によって事実が発覚する事を恐れて彼女を暗殺するなどという暴挙に出る事はなかったが、今回魔王領の側に来たことでその暴挙に出る事にしたのだろう。


「だから、俺の側にいろアーシェ。それなら俺がお前を守ってやれる」


え、言い方がおかしい? 勿論わざとだよ。


魔王のちょっとした説明回

あとアーシェがどう見てもツンデレにはなりそうにないので章タイトル変更予定です。

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