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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.3 赤毛の聖女は側にいたい
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魔王様と過去の話⑧


「あの……私はこんなにいらないから」

「いいから食べなさいよ。今日私とあってから何も食べてないでしょう? 食べないとこの先もたないわよ」


差し出された保存食を、平手で押し返す。


押し返された保存食を、ジルバさん……というかアーシェ(そう呼んでいいかと聞いたらOKが出た)は少しの間見つめたあと、「ありがと」と小さく呟いてから口にした。よし。


──そう、別の問題というのは食料問題だ。アーシェ達一行は荷物の大部分をポーター役に預けており、そのポーター役も当然一緒に逃げ出してしまったため、アーシェは身に着けていたもの以外の所持品がなかった。当然食料も水もだ。


幸い水に関してはすでに何か所か澄んだ水が湧いていたり溜まっているところを見つけたし、攻撃術を使えないアーシェだがお湯を沸かすくらいの発火術は使えたので、水はなんとでもなった。


だが食料はどうにもならない。このダンジョンのエネミーはゴーレムとかその類なので食べる事なんてできないし、地中だから果実なども見当たらないため食料の調達手段がないのだ。


救いは、私がなんども集落と行き来するのが嫌で結構な量の食糧を持ち込んできていた事だ。


お腹いっぱい食べるなんてことは無理だとしても、動ける程度に食いつないでいくレベルであれば一週間以上は持つくらいの食糧は持ってきている。この世界では旅に時間がかかる分、わりと携帯食の技術は発展しているのだ。


ただ勿論の事一人分なので、それを二人で消費するとなると持って4日くらいだろう。体力を落としたら脱出するのにも難がでるだろうから、タイムリミットは6日くらいだろうか。それまでには脱出方法を見つける必要がある。


まぁこの遺跡がいくら広いとはいえ、さすがに6日も探し回れば何かしら見つかるだろう。とりあえずこまめに魔力感知だけはするようにしておく。生命反応で地表が近いかはわかるからね。それこそ地表が近いならアーシェの結界で身を守りつつ、私の力で天井をぶち抜けばいいだけだ。なんとかなるなる。


そうやって食事を終えて、それから明日の行動指針等を話して、アーシェが欠伸をし始めたので(した後に慌ててほほを染めたりして可愛かった)私達は寝る事にした。正直時間がいつ頃かはわかる術がないので、だったら眠くなったら寝るでいいだろう。眠気は思考も判断も鈍らせるしね。


ちなみに見張りは特に立てる予定はない。このダンジョンはエネミーの遭遇率が低いし(そもそもこの辺りの敵は全部ぶちのめした)、曲がりなりにも私は一人旅を続けている身だ。寝たままでも魔力感知を働かせて気づくくらいの能力はある。一応アーシェが周囲に簡易的な結界も貼る事ができるといっていたので猶更だ。アーシェを寝かしつけて私も寝る事に決めた。


私は荷物の中から毛布を取り出すと、それを地面に敷く。地面に直に寝ると熱を持っていかれそうだが、これで多少は違うだろう。ちなみに一人で潜っていたときはこれにくるまって寝てたけど、今日はそうする気はない。私はそのまま地面に敷いた毛布の上に横になり、それからアーシェを手招きする。


「何?」


彼女はきょとん、とした後ゆっくりとこちらに近寄って私の前に膝を落とす。


「どうしたの?」

「ほら、横になって。一緒に寝るわよ」

「はぁ。はぁ!?」


あら結構大きい声。結構辺りに響き渡ってるわ。この辺のエネミーは一掃してあるから、感づかれるとかそういう心配はないんだけどね。


そんな事も気づかないのか、アーシェは慌てて口を塞いだ後、今度は声量を抑えて口を開く。


「私の事は気にしなくていいわよ。そこらへんで適当に寝る──」


私は体を少し落として、手でアーシェの口を塞いだ。


「こんな所で直に寝たら回復するものもしないわよ。食事もそうだけど、変に遠慮しないの。長期戦になるかもなんだから、回復しないと」


そう告げて手を離すと、彼女は申し訳なさそうに眉尻を下げて


「でも、この上に二人並んでしまったら体に掛けるものがなくなってしまうわ」


この地下の迷宮内はそれほど寒いわけではないが、眠るのなら確かに暖かくした方がいいだろう。


でもそれには簡単な解決方法があるのよね。


「そんなの抱き合って眠れば問題じゃない?」

「抱きっ……!?」


あら、この程度で反応するの? 


「女同士だから問題ないじゃない」

「それは……そうだけど」


まぁ元男だけど、すでに男の意識は元の凛太朗形態をとらない限りあまりないからセーフでしょ。女の子を愛でたい抱きしめたいあわよくばって感覚が強くあるのは、男の部分が残ったまま女の部分と融合した結果な気もするけど。


「ほらおいでおいで」


私が再び横になった上で横をぽんぽんと叩くと、彼女は嘆息してから私に背を向けた。あれ、それでも拒否? と思ったが、どうやら準備をしに行ったらしい。彼女は自身の荷物をまとめると、それからこちらに戻ってきてちょっとだけ頬を染めつつ私の横に横たわった。


「……まぁスズのいっていることは正論だし、背に腹は代えられないからね」

「アーシェ~♪」

「こら抱き着くな! まだ早い!」

「ん-、だってすぐ寝ちゃいそうじゃない? 雪山で抱き合って体を温め合うのと一緒よ、ほら早くぬくぬくしよ?」

「雪山?」


何の話って顔された。こっちでは雪山で抱き合って体を温めるってオーソドックスなシチュエーションじゃないのかしら。


それにしてもやっぱりこの子反応も初心だし可愛いわね。体も柔らかくて抱き心地もいいし。能力も高いしやっぱりこの娘お持ち帰りできないかしら?




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