魔王様と夜の相談
「それで、どうされるおつもりでしょうか?」
夜。
別行動だったアヤネ達と合流して宿に戻り、食事と風呂を終えて──いやぁ、この姿になって大分経つから今更女の子の体を見ただけで欲情なんてものをすることはないけど、それはそれとして自分に対して好意を持ってくれる美少女4人の全裸とか絶景としかいいようがないよね! まぁ愛情を持ってくれてるのはシエラだけでフレアのそれは保護者相手のモノだろうし、ユキとアヤネは好意というか信頼だろうけど。
話がそれたわ。
とにかくいろいろ終えて、私達は寝室の一つに集まっていた。
集まっているのは私とシエラ、アヤネの三人だ。フレアとユキはこの場にいない。これは別にハブにしているわけではなくて、単純に昼間興奮して大騒ぎしていた(らしい)フレアがお風呂を終えた後に電池が切れたように眠ってしまったからである。まるっきり子供みたいだが、あの子はそもそも最近までずっと人と接触しないで生きていたのだ。思考とか情緒面が子供に近いところがあるのは仕方ないだろう。
ちなみにユキはフレアの付き添いで、もう一つ借りている寝室の方にいるはずである。
その二人はそっとしておいて、私達が集まっているのは今後の事についてだった。
「どうされるって?」
「この後の行動に関してです。本拠に戻られますか?」
「とりあえず情報待ちかなぁ」
あの後私達は再び情報屋に戻って、追加で情報の収集を依頼している。彼らは優秀だから数日で何らかの情報を掴んでくるだろう。大きく動くのはそれからでいいと思っている……なんというか、ちょっと引っかかりがあるのよね。だからまだ本拠に引きこもりはしたくない。
「ただ、情報は伝えておいた方がいいわね。オルバンに伝えれば上手く体勢を組んでくれるでしょう。シエラ、ちょっとお願いしていいかしら?」
「承知しました。明日最寄りの村に連絡に行ってまいります」
アーシェがこれからハイドランジアに向かっている事を考えると、襲撃が来るにしてももう少し先だろう。事が終わってから伝えてもしょうがないしね。アーシェ自体が陽動に使われている可能性もゼロとは言わないけど……そんな事のために私と接触して情報を流すのも意味不明だもの。
ここから私の領域へは、馬で飛ばせば片道1日も掛からないところにある。そこに滞在しているハズの伝令に伝えれば、後は本拠のメンバーに伝わるハズだ。ついでに念のために避難も促しておけばいい。魔族は平均して人間より強靭な肉体を持つが、それでも非戦闘員はそれなりにいるのだから。
防衛はちょっとどこに来るかわからないから難しいかな。人間の領域に近い箇所に住んでる子達は避難させて、後はその辺りのラインに見張りを立てておくってのが現実的なラインでしょ。
まぁ細かいところはオルバンやヘイゼルに任せておけば問題ないでしょう。
「それで、私達はどうするんだ? 今日のように別れて行動するべきか?」
「いえ、明日以降は普通に一緒に行動するわ。まぁ行き先次第では単独行動するかもだけど」
情報屋の所とかはフレア達とかあんまり連れて行きたくないしね。ただそれ以外なら、一緒でいいと思う。この広い街で偶然エンカウントする可能性はそれほど高くないだろうし(いやアーシェとは偶然エンカウントしたけど)、逆に意図的に私を探しているなら宿を調べられればアヤネ達が同行者なのは一発でバレるので、だったら一緒にいた方がいい。さすがにそういった連中に仕掛けられたらアヤネ一人じゃフレアとユキは護り切れないだろう。
というか連中の目的を考えたら私がいたら襲ってこないだろう。私がいないから空き巣みたいな事をしようとしてるんだから。
──尤も、襲撃が本当ならだけど。
別にアーシェを疑っているわけじゃないけどさ。ちょっと引っかかってるのよねぇ。実行されたら現在敵対していない魔王の一角を敵に回す行為なのに、そんな無意味な襲撃するかねぇ?
いや、過激派がするのは解るのよ、アイツラ脳みそ空っぽの絶対魔族ぶち殺すマンだから。そして穏健派がそれを止めきれないのもわかる。勢力的にそこまで数が多くないらしいからね、穏健派。手が足りてないのだろう。
だけど、敵対派は何故放置している?アイツ等も絶対魔族ぶち殺すマンだけど、手を出すなら一気にその力を削るくらいの仕掛け方をするハズだ。ただこっちに喧嘩だけを売るようなマネがそうそうしない。
何か思惑があるのかしらねぇ……今は情報足りなすぎてわかんないや。まずはとにかく情報収集だね。
まぁどんな思惑があるにしろ、フレア達やウチの領地に手を出して来たらボコるだけなんだけどね。




