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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.2 格闘少女は殴りたい
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魔王様と空飛ぶマグロ⑨


その拳は的確にワシが指定した場所に叩きつけられたかに見えた。だが、次の瞬間にはアヤネの体が弾き飛ばされる。


その光景を目にしたワシは、咄嗟に糸を放ってアヤネの体を受け止めようとしたが、すぐにその動きを止めた。


アヤネは体勢を崩していない。あれなら問題なく着地できるだろう。ということは、アヤネは弾き飛ばされたのではなく自分で飛んだということだ。


で、あれば──ワシは視線をアヤネからストピーダーに移す。


結果はすでに出ていた。


巨大なマグロは、まだ飛行を続けていた。だが、その巨大な体躯はすでに傾いている。


強靭な肉体と人を遥かに超える巨躯を持つアレが、たかが人間の一撃を喰らったくらいで揺らぐなんてことはまずない。ワシだってかなり本気を出して殴りつけないといけない相手なのだ。


そんな存在が揺らいだということは、


「お見事」


アヤネは見事成し遂げたということだ。


ワシは生み出した鋼糸を消失させる。もう必要ないからだ。シエルも同様の考えに至ったようで、隆起した土が崩壊していく。


そして、勢いのまま飛行していたストピーダーは高度を落としつつ横倒しになり、そのまま地面に横転した。


地響きと、木々が砕けて行く音。これまでで最大の轟音をまき散らし、やがてストピーダーはその動きを止めた。


その巨体に向けて、魔力走査を掛ける。


……うむ、もう余計な気配はない。あそこに在るのは、神代種族のただの遺骸だ。これ以上動くことはないだろう。


ふう、と一つ息を吐いて、ワシは声を張り上げる。


「フレア! ユキ! もういいぞ!」


その声に応じて、かなり離れた場所にいる二人が動き出したのが見えた。そしてワシが二人を呼び寄せたことで、事を成し遂げた事に気づいたのだろう。無事着地を決めていたアヤネが、尻もちを搗くように地面に腰を落とした。


まぁ、()()()()()()目標達成だからな。そりゃ気も抜けるか……そもそも元々は命の引換になんとかするつもりだっただろうし、それが無傷の一撃で倒せてしまったのでそりゃ気も抜けるだろう。


彼女にはいうべき事があるが、まぁそれは後でいいか。これまでの道程の中でアヤネが義理堅い性格なのはわかってるし、いきなり姿を消すような事もないだろうしな。


とりあえず元の姿に戻って着替えるか。なんだかんだで使い慣れたリンの体が一番楽だしな。


◆◇


「ところでこれどうしようか……」


本来の姿(リン)に戻って、服を着替えて、こちらに寄って来たフレアやユキにちゃんと指示した事が出来ていた事を褒めたりして一息ついた後。


私とシエラは地面に横になった小山のようなストピーダーの遺骸を見上げつつ、首を捻っていた。


「放置という訳にはいかないですよね」

「またカルガルカンの奴に操られると面倒だからねぇ」


私やシエラがいて、更に防御無視貫通技なんていう反則くさい技を持っているアヤネが居たからこそあっさりと撃破できたが、そうでないならそう簡単に倒せる存在では決してない。


というか、魔王かその配下の幹部クラスじゃないと撃破も難しいだろう。そんなのを魔王の中でかつ友好的もない相手に渡すのは面倒がすぎる。


「アージェ様が居れば食べて頂けたんでしょうか」

「アージェにとんでもないものを食べさせようとするんじゃないわよ。後さすがにアージェでもこのサイズはきついわ」


私の女神的存在であるアージェは"暴食の魔王"と呼ばれてはいるが、さすがにこんなサイズを一息に食べるのは無理だ。


てか、外見はマグロなのよね。お寿司食べたいなぁ……マグロよりサーモンの方が好きだけど。


この世界の人間、魚を生食する習慣はないのよね。一部の獣に近いタイプの魔族は生でも食べるけど、多分アイツラ体の作りも獣に近いだろうしなぁ……


そもそも、これと同族でサイズはともかく見た目はそっくりの知り合いがいるので、いくらすでに死んでいるとはいえ食べるのはちょっと気が引ける。うん、食べるという思考は捨てよう。


となると、だ。


「シエラ、イグニスでこれ燃やせる?」

「神代種族は魔力に対する抵抗も強いですから、簡単には。死んでいますので、まったく無理ってことはないと思いますが、がっつり燃やしきろうとするとかなり時間がかかると思います」


んー、さすがにこんだけでかいのを燃やしきるまでここに滞在したくはないな。そろそろ街に戻ってお風呂とか美味しいごはんも食べたいところだし。


となると、妥協点か。


「脳の部分だけ燃やしましょうか。過去の調査でカルガルカンの虫は基本脳に寄生しているみたいだったし。脳みそなければ操れないんじゃない?」

「確証はありませんが……確かに可能性は高いと思います」


これは私の勝手な想像だが、奴の虫は脳というコンピューターをいわばハックしているようなものなんじゃないかなと思う。実際問題として、死霊の王とか言われている癖に奴の軍団にスケルトンとかすでに腐食が進んだ感じのゾンビは見かけないんだよね。あくまで見かけるのはフレッシュ(?)な死体だ。大体完全な死体を操れるなら、アイツは墓場を掘り起こしているだろう。この世界火葬もあるけど、土葬の場所も多いし。


よし。


「脳みそだけ燃やして、あとはヴリトラで穴掘って埋めましょうか」


さすがにこのサイズの死体は、カルガルカンに操られないにしても放置しておくのもなんだし。


私の提案にシエラも頷いたので、これで方針は確定。それじゃその作業するからしばらく待っててって皆に声かけておかないとね、と振り向いたら、いつの間にかアヤネが立っていた。


「アヤネ?」

「この度は誠にありがとうございました」


名を呼んだ私に、彼女は大きく頭を下げてそう告げた。


体調不良で先週は更新できませんでした。申し訳ない。

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