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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.2 格闘少女は殴りたい
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魔王様と空飛ぶマグロ③


機会はすぐにやってきた。ストピーダーが移動を開始したのだ。


合わせて、処理すべき相手も移動を確認した。


軌道的にこちらのすぐ側を通るわけではないが、想定通りに進めば先ほどいた位置に比べれば大分近い位置を通る──多分4kmくらいかな。それくらいの距離ならば私一人で走れば奴が通過するくらいまでには到着できるはずだ、私なら。


今は夜。今夜は晴天で、雲一つない星空が頭上には広がっている。その星空を見上げながら寝転がっていた私は、静かに体を起こした。


「リン様……?」


他の皆はすでに寝静まっており、ただ一人見張りとして起きていたシエラが私に気づき声を掛けてくる。


そんな彼女に向けて私は人差し指を当てて静かにと示すと、自分の荷物を手に取り彼女の側に近寄る。


そして耳に口を近づけて囁いた。


「ちょっとアヤネの敵討ちの本番の前に、その周囲に集っている虫の掃除をしてくるわ」

「──承知しました。こちらに関しては問題ありません。お気をつけて」


昼間にそういった存在がいる事がすでに彼女に話しておいたので、反論はない。私は彼女に頷き返すと、荷物を持ったまますぐ側の岩陰の向こう側に移動する。


女の子しかいない場だからね。特に起きているシエラの前で裸の姿を見せるわけにはいかないもの。


身にまとっていた服を、私は次々と脱ぎ捨てていく。下着までも脱ぎ捨てて、私は瞬く間に一糸まとわぬ姿になった。直接肌を撫でていく夜風が非常に気持ちよいが、まぁ今はそんな時間ではない。


目を瞑り、意識を集中。浮かんできた棺桶の中から、一人の男性の眠るものを選択すると私の体が変質していき──すぐに引き締まった男性の体になった。凛太朗よりも筋肉質、ただマッチョというわけではなく、必要な筋肉だけに絞り込んだ洗練された肉体。鏡がないので自分の姿は見れないが、今の()は外見で言えば60過ぎくらいの白髪の男性の姿になっているハズだ。


荷物の中から男性用の衣服を引っ張り出し、身にまとう。これで準備完了だ。


さあ行こう。


儂は手を上げると、少し離れた所に見える大樹に向けて人差し指を向ける。


すると指の先から、蜘蛛が糸を出すように黒い鋼糸が飛び出し、勢いよく大樹に飛んでいく。そしてすぐに指先にある感覚を感じ指から伸びる糸を引っ張ると、ピンと糸が張った。うむ、上手く糸が大樹に絡んだようだ。ならばあとは、先ほどと逆をイメージするだけで良い。


それだけで儂の体は吹っ飛ぶように前に飛んだ。正確には吹っ飛んだのではなく、引っ張られる感じなのだが。伸ばした糸を戻そうとした結果、体が前に引っ張られる。ただそれだけで、儂は瞬く間に50m近く先にあった大樹の枝の上へと移動していた。


後はこれを繰り返すだけだ。


出来るだけ背の高い巨大な樹を選び、私は木と木の間を飛ぶムササビのように移動していく。利用できる場所が限定されるが、儂の使える姿の中で彼の姿が一番移動速度が速い。


儂がこれまで戦ってきた中では、尤も強かった相手。そして現在の私の部下の中でシエラを抑えてTOPに立つ実力者。鋼糸使い、オルバン。数百年を生きているという老人の姿を借りて儂は夜の森の中を翔けていく。


移動しながら改めて位置を確認する。……よしよし、想定通りの動きだ。やはり連中はストピーダーを完全に()()切れていない。当然だ、あの男如きの力で完全に神代種族を操れるわけがないのだ。


ただ、不完全には動かせていることは確かだ。だとしたら、やはり邪魔されないように先に処理しないといけない。隠密が下手な奴で助かったな、本当に。


認識している力の存在と、儂との相対距離はどんどん近づいていく。向こう側の動きに変化はない。ストピーダーの動きに合わせて移動しているだけ。こちらの気配に全く気付いた様子はなかった。


質が悪い事だ。一応魔力隠蔽はしているが力を使っている以上、実力がある魔族なら普通に気づいているハズだぞ。


これは今回も楽しめそうにないなと思いつつ、儂は速度を緩めない。


残り相対距離は、あとわずか50m。






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