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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.2 格闘少女は殴りたい
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魔王様は挑まれる④


少女の言葉にピクリと反応したシエラを、視線を向ける事で留める。


口にした言葉とは裏腹に、彼女には今の所攻撃の意思が見えないからだ。


というか、だ。前段の応答と今の発言、内容が矛盾していない?


シエラが私を倒す気かと問いかけた時、彼女は否定した。なのにその次に口にした、彼女の望みは私を殴る事だという。どういうこと?


倒す気はないというのは嘘で、油断をさせるつもりだった? いやそんなつもりだったら、その次のセリフが殴らせてくれにはならないだろう。そもそも近づいた時点で奇襲するべきだ。


だとしたら、そんな事を望む理由はなんだろう?


えーと。倒したいほどでもないけど私に恨みがあって、せめて一発殴らせてほしいとか?


……


「私、貴女になにかしたかしら?」


わかんないからとりあえず聞いてみたら、少女より先にシエラが反応した。一瞬目を見開いたかと思うと、なぜか悲しそうな眼でこちらを見てくる。──いやちょっと待って、何を想像した!?


彼女自身が記憶にないのは確かだ。少なくと深い関わりはないはずで、だとしたら間接的なものでもあるのかと思ったのだ。例えばつい最近に私を追放したあのパーティの関係者とか。


だけど、その問いに彼女はやはり首を振った。


「いえ。リン様とお会いするのは初めてです」


少女の答えに、シエラはほっと安堵の息を吐いた。本当に何を想像したの? 後で問い詰めようかしら……ま、それは置いておいて。


「だとしたら、私を殴りたい理由は何かしら? ちゃんと説明して貰える?」

「あ、はい、勿論! すみません!」


少女は慌てた様子で頷き、頭を下げた。あ、これもしかして魔王を前にしてやはり緊張していたな? それで理由を説明もなくあんな発言しちゃたのね。よいよい、リン様は寛容な魔王だから許しましょう。


「で。理由は?」

「はい……ええと、まず先にこちらを確認するべきだったのですが、魔王というのは非常に高い防御力を持っていると聞いています。これは事実でしょうか」

「事実よ」


勿論魔王によって個人差はあるが、大体魔力の高さがそのまま防御力に直結している。私の場合は他の魔王やその側近レベル、或いは聖王国や冒険者の上位クラスじゃないと突然奇襲攻撃を受けたところで大したダメージを受けないだろう。


少女は私の答えに満足げに頷くと、言葉を続ける。


「であれば、私の攻撃が通るのか試させて欲しいです」


そこから彼女がした説明は要約すると次のような感じだった。


どうやら、彼女の故郷がとある怪物に荒らされているらしい。その怪物は非常に硬質な皮膚を持っており通常の攻撃はほぼ通らない。だが彼女の身に着けた攻撃技術ならその怪物に攻撃が通る可能性がある。


ただその怪物に攻撃する事はかなり命がけになるので、無駄死にしないために自分の攻撃がきちんと通るのか試しておきたい。そこで浮かんだのが"放浪魔王"である私の存在だったようだ。魔王を技の試しに使おうとするなど無謀もいいところだったが、私が人間にかなり友好的だという情報から万に一つの可能性にかけたらしい。藁にもすがる気持ちだったのかしらね。


「私が怒ってすぐに貴女を殺そうとするとは考えなかったのかしら」

「申し訳ありませんが、しばらく様子を見させていただきました。その結果と、集めた情報を統合した結果いきなり襲い掛かる等をしない限りはその可能性は低いかと」


ああ、成程。それで私の事をじっと監視していたのか。


ちなみに彼女は一度私の本拠に向かう予定だったんだけど、情報収集している間に私が近郊にいる事を知り慌てて駆けつけたらしい。……やっぱり私の情報流してる奴いるんだな、どうせ某魔王だろうけど。


うーん、しかしちょっと一つ疑問だなぁ。


「ねぇ、貴女」

「はい」

「そんな怪物がいるのであれば、パノス聖王国辺りが動くんじゃないかしら? 連中に任せておけばいいんじゃない?」


奴等は人に害なす存在は許さないというスタンスだ。そんな化け物を放っておく可能性は低いと思うんだけど。


だが私の言葉に、少女はまた首を振った。


「動く可能性は低いと思います」

「何故?」

「そいつが神代種族だからです」


 


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