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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.1 お嬢様はモフりたい
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魔王様は企てる②

そう確信したのはユキの話を聞いてからだ。


当初ここに来る使用人はリューベック家の人間だと思っていたけど、ここまでに話した通りリューベック家はフレアと関わりを断ち切っている。ユキが仕えているのはグスマン家の方だ。


元々とある事情でこの森の中に迷い込んだ彼女を、すでにかなりの年齢になり役目を果たすのが難しくなっていた先代の使用人が雇い入れたらしい。フレア専属の使用人としてだ。


ちょっと話がそれるけど、この世界中央はともかく辺境の方になると偏見や差別が多い。その地域であまり見たことのない外見の物を見ると排斥するのだ。

それは体の形状が違うとかそういうレベルの話ではなくて、肌の色や髪の色程度でも起こる。


この地域もそうらしい。この地方ではまず見かけない褐色の肌を持つ彼女は大抵の人間からは避けられる。


フレアお嬢様と先代には感謝していると彼女は言った。身寄りを無くし、路頭に迷いかけた自分が人としての生活を送れているのは二人のお陰だと。


だから、フレアお嬢様のためならなんだって協力すると彼女は言ってくれた。


話が早くて助かるわー。欲しい二人が二人ともめちゃくちゃ協力的って、私の日頃の行いがいいからかしら? 魔王だけど。


ちなみに、


「雇い主に対しては恩義とかないの?」


って聞いたてみたところ


「フレアお嬢様の事を話すために会うたびにこちらを蔑むような目で見てきて、話が終われば即座にぞんざいな態度で追い払う人間にそんなもの抱くとでも?」


と答えられました。ごもっとも。


というわけで説得は全く難航せず、あっさりと話はまとまった。そしてフレアお嬢様が行くなら私も参りますと言ってくれたので労せずして逸材二人目ゲットだぜ!


その言葉を聞いたフレアは大喜び。唯一の友人だもんね。その愛らしい顔を歓喜の色に染めてユキに抱き着き、ユキを困惑させていた。


可愛らしい女の子同士が抱き合ってるの、いいよね……


それはさておき。


とんとん拍子で進んだ話だけど、ユキから入手した情報には二つ困ったものがあった。


実は今日から7日後フレアの誕生日がある。

これ自体は当然喜ばしいことなんだけど、問題は毎年一回誕生日の日に森の外れのとある位置に立つように言われていることだ。


何故かと言えば答えは単純、ボルコフがフレアの姿を確認するためだ。


まぁこれだけなら別に問題ない。


問題は、もう一つの方。


彼女がボルコフから今回申しつけられている内容だった。


それはその7日後から更に5日間ほど、この森に近づかないようにという事だった。


その命令が意味するもの。


間違いない。ボルコフは7日後にフレアの姿を確認し、実は熟したと感じたらフレアを喰らうつもりだ。


勿論魔力結界があるから本来彼はフレアには近寄れないはずだが、彼は有力者であり豪商だ。しかもここまで10年の時間の猶予があった。その間になんらかの道具を手に入れていてもおかしくない。


魔導技巧(マギテクノ)の産物、或いは過去に生み出されたアイテムで魔力をある程度まで無効化するものがないわけではないのだ。


つまり、時間的な猶予は6日間しかなくなった。その間になんとかしなければならない。


即連れ出すのは難しい。


フレアに魔力制御を教えるか、ユキに能力を制御させてフレアの魔力を消させるかしかないんだけど、さすがに時間がなさすぎる。一応私とシエラが交代で彼女の魔力を抑え込めばなんとかなるかもしれないけど……さすがにずっとはしんどいぞ。


それになんとか彼女を連れ出しても、間違いなくボルコフは追っ手をかけてくるだろう。10年間熟すのを待った果実が、その直前で目の前から転がっていくのを見過ごすはずがない。


そうなれば大事になる。大事になれば面倒なことになるということだ。


「結局、ボルコフよね。彼が邪魔すぎる。逆に彼さえなんとかすれば後はどうにでもなりそうって事は……まぁそういう事よね」

「私がやりますか?」

「私がやるわよ。可愛いシエラに汚れ仕事なんてさせられないわ」

「いえ、汚れ仕事ならそれこそ部下に……」

「まぁ能力的にも今回は私が適任だから任せておいて。えっとね」


シエラを抱き寄せて、今思いついた手段を耳打ちする。抱き寄せて耳元で囁いた瞬間体をビクッと震わせたの可愛いけど、今は残念ながらそういう時間ではないので説明を進める。


一通り話をし終えて体を離すと、シエラはコクリと頷いた。


「わかりました。とりあえず私の方からも情報を流します。後は二人の教育ですかね」

「そうね、よろしくー」

「何のお話ですの?」


私とシエラが今後の動きについて話していると、気になったのかフレアがユキに抱き着いたまま首を傾げて聞いてきた。


その彼女に私はにっこりと笑みを返して答える。


「貴方の読んでいる物語の中に出てくる魔王みたいな悪い事しようと思って。目的はお姫様の救出だけどね」

「まぁ!! わたくしがお姫様役ですの?」


……一応後々面倒な事になるのもあれだからこれからすることはちゃんと説明するつもりだけど、なんか心配いらなそうね……

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