魔王様と元人間の娘③
その後眷属化は無事に完了し、ヘイゼルは元人間の魔族になった。一週間くらいはベッドの上でうんうん呻いてたけどね。
で、その眷属化の前に魔王討伐の話は詳細を離しているし、それに納得もさせてる。
ということで、今更拒否はできないのよね~。
「諦めて支度しなさい。さすがに今日出発するとはいわないから」
「……100日くらい後ですか?」
「そんなわけないでしょ。まぁ4、5日位は上げるわ。フレア達をのんびりさせてあげたいしね」
これから私は条約の話を進めるため各魔王の所を回る必要があるのでそこまでのんびりはできないが、その程度であれば許容範囲でしょう。
「あの、今丁度研究がいい所でして。せめてもう少し長く……」
「駄目よ、長くしても結局そも終わりのあたりで貴女は同じ事いいそうだもの」
「うっ」
ヘイゼル、研究の為に魔族になるくらいの研究馬鹿だからね。研究していない時期なんか殆どないのだから、研究の途中で~なんてのは理由にならない。ま、私とか誰かからの依頼物を研究している最中なら例外にはするけど、今はそんなことはないハズ。というかそういう依頼を受けてきてたらヘイゼルはこの場で名前を出している。
「でも、カルガルカンを滅ぼすのはまだ先の話ですよね」
「ええ。でも一緒に戦う身として交流はしてもらわないとね?」
最終ボス戦だけに参加するのはただのお助け助っ人キャラなのよ。
「……おっぱいいくらでも揉んでもいいので、もう少しなんとかなりませんか?」
「ヘイゼルの胸は別にそんなの関係なしに好きなだけ揉むわよ?」
揉み心地いいし。
それはそれとして──まぁ仕方ない。ムチだけではなくアメも上げるとしましょうか。
「ヘイゼル」
「……はい」
「ひとまず同行するのは4魔王の所を回る間だけでいいわ。それと、研究に使用していい魔石の量を増やす事を認めましょう」
ウチの領内にある魔石は最近発掘作業を始めたばかりだからまだまだ当面枯渇とは程遠いけど、さすがに無制限で使う事を許可するわけにはいかない。ヘイゼルが開発した魔導技巧の道具の内汎用性が高そうなアイテムは量産して領土内の各地で利用したり別の領土に輸出することも考えているしね。
で、最近ちょっと生産量が増えたらしいので、丁度これがアメになるかなーと思ってたんだけど。ヘイゼルは思った以上の反応を見せた。
「本当ですか!?」
ヘイゼルは目を輝かせ、私の手を握ってくる。そんな彼女にコクリと頷きを返すと、彼女も同じように頷きを返してきた。
「わかりました。お役目務めさせていただきます……旅の途中も机上の研究を続けるのは構いませんよね?」
本当に研究馬鹿ねぇ。私は笑いながら頷きを返すと、彼女は私の手を離してからその表情に真剣なものを浮かべる。
「でしたら、出発の日が確定しましたら教えてください。そこまでに研究を一段落させますので」
そこまでは研究をするのね。出発当日はヘロヘロになってそうだけど……まぁそれくらいは許しましょう。
こうして新たな同行者の同意も得た私達は、それから5日後に出発することになる。ここから先は順番に暴食、破眼、怠惰、森林の魔王の元へ向かう事になる。当然といえば当然の事だけど各地に事前に連絡は入れているわよ?
その5日間の間、フレアとユキ、それにアヤネは物珍しそうに屋敷や周辺地域を見て回っていた、それなりに楽しそうだったようで何よりよ。ヘイゼルは予想通り研究室に引きこもり。まぁちゃんと食事の時とかフレア達との交流の場には出てきていたので許すとしましょう。シェリーはさすがに聖騎士という立場が気になるのかあまり動きまわる事はなく大体私の側で大人しくしていたわ。
で、シエラと私は……お仕事です。特に私はオルバンやエリスに私の決済が必要となる書類を積み立てられて殆どフレア達とのんびりできませんでした! むきー!
いや、組織のトップならちゃんと定期的に戻ってきて対応してなさいよ? ソレハソウデスネ……