魔王様の帰省①
「……聖王国の聖騎士で魔王の本拠地に足踏み入れるのって、私が初めてじゃないかしら」
「人間って括りならいくらでもいるだろうけど、パノス聖王国の聖騎士としてならシェリーが初めてかもねぇ」
ハイランドジア王国での一件が片付いて。私はこれから他の魔王の領土に向かわなければいけなかった。協定への参加を促すためにね。
わざわざ私が出向く必要があるのかって所があるんだけど、魔王のうち怠惰は多分私が自分でいかないとあってくれない、樹海は最近まで人側と争っていたこともありきちんと説得しなくちゃいけないので私が直接いった方が早いのよね。で、破眼は領土は怠惰と樹海の間にあるから通り道だし。後"暴食"アージェは単純に私が久々に会いたいので! あとちゃんとあって今回の件のお礼も言いたいしね。
というわけで新たに旅の仲間に"赤毛の聖女"アーシェリカを迎えた私達魔王様一行はまずは隣接する"暴食"の魔王アージェの元に向か──ってはいなかった。
今、美少女軍団(6人もの美少女軍団よ! 元の世界だったらアイドル集団でデビュー出来るんじゃないかしら)である我々が向かっているのは、私こと変貌の魔王リンの本拠地だ。
今回の一件でちょっと予定が変わっちゃったけど、元々今回は一度本拠に帰る途中だったからね。これから他の魔王領を回るとなるとまた結構な時間離れる事になるので、先に一度本拠に顔を出しておこうかなって寸法よ。
後理想的なメンバーがそろったから、本拠にいるもう一人の人員の確保もしておきたいからね。いや今回の一件手伝ってもらってたんだけど、役目終わったらとっとと帰っちゃったからさ。
というわけで自分の領土を旅して数日。途中にある集落とかにもちょこちょこ顔を出しながら歩みを続け、私達は本拠の前へとたどり着いていた。
「城とかに住んでいるわけではないのだな」
ウチの本拠を見てそう口にしたのはアヤネだ。
「城とか使い勝手が悪いだけだもの」
そんな彼女にそう答えつつ、ひさびさとなる我が家を見る。
前の魔王とかは城っぽい所に住んでたけど、ウチの場合は割と少数精鋭だしそんなデカい建物とかいらんのよね。だからウチの本拠の建物はでかめの貴族の屋敷みたいな感じだ。ただその周辺には様々な建物が経っている。必要に応じて増築している感じ。実験棟とか研究棟とかそんな感じでね。そんな感じだから敷地自体は広い。まぁウチの領土土地は余り捲ってるからさ。
「……本拠にしては防御が甘すぎなくはないかしら」
今度はシェリーからそう疑問が出る。一応外壁や柵みたいなのはあるけれど人間の砦や城、街の周りにある立派なものではなくせいぜい獣除け程度のものにしかみえないだろう。というか実際に獣除けでしかないし。
「本拠を戦場にするつもりはありませんので」
答えはシエラの方から返された。
高位の魔族の戦いは派手になる可能性が高い。その場合周囲の施設にも被害がでる可能性が高いので、私としては本拠が戦場になった時点で負けと思っている。だから本拠の防衛にはあまり力はいれていない。そのかわりに情報網を整備して事が起きた場合は先手をうって迎撃をできるような体勢に力を入れている感じだ。
そんな感じでウチの本拠の事をフレア達に説明しつつ私達は歩みを進めていく。そうして、周囲の中では一番大きい洋館のような建物の前に辿り着いた。
その正面扉の前にたった私は、そこで振り返り同行者たちに向けて笑みを向けて口を開く。
「というわけで、ようこそ私の家へ」
ま、正確にいうといくつかの執務を行っているので家というよりは役場みたいな感じもするけど、私やシエラの自室もあるし家といって問題ないでしょ。