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TS転生魔王様の異世界漫遊記  作者: DP
Episode.0
10/107

魔王様にはメイドがいます②

唐突にすぐ背後から声が聞こえ、思わず俺はビクッと体を震わせてしまう。


慌てて声のした方へ振り返ると、そこにはクラシカルなロングスカートのメイド服を来た黒髪の美しい女性が一人立っていた。


呆れ顔で。


顔見知りだった。


「シエラ!? いつのまに」

「リン様がそのベンチに腰掛けてからずっと後ろにいましたよ」

「マジで?」

「まぁもう少し離れてましたけど」


だよな。さすがに真後ろに立たれてるのにずっと気づいてなかったらアホすぎる。


「というか、気配とかなんで消してるの? 俺暗殺でもする気?」

「冗談でもそういうこと言うのやめて貰えますか?」

「すみません」

「大体街中だから魔力は消してますけど気配なんて消してませんよ。リン様は魔力感知に頼りすぎなんです」

「だって魔力ない攻撃とか別に通らないし……」


"リン"の体はその内包する魔力のお陰でかなり強靭で、魔力を伴わない攻撃なら殆どダメージを受けない。それは他の体に変身していても同様だ。


元々そんな"気配を察知"する必要のない世界で生きていた上、こちらの世界の体には高い魔力の感知能力が備わっていたせいで、今の領土統一までの混乱期もずっと魔力感知で生き抜いてきた。そのため、俺はそういった"気配を察知"という事はほとんどできない。


その辺の能力に長けるウチの部下に言わせると


「魔力を伴わない事に対する察知能力は一般人以下ですな」


とのこと。

確かに落ちてきた植木鉢を頭頂部に直撃くらったり、とある地方の熟しきった果物を投げあう祭りに参加した時とか全身汁塗れになったりしたけどさぁ……


別に命の危険はないからいいじゃん、って感じだ。

そもそも気配の察知とかできる奴の方がおかしいんだよ、うん。


「そんなんだから財布スられたりするんですよ」

「うっぐ」

「そこら辺のコソ泥に財布スられる魔王ってどうなんですか?」

「あ、あれはちょっと不注意でポケットに適当に突っ込んでせいだから。懐にしまってればさすがに気づくから。そ、そんなことよりシエラは何の用事だ?」


あ、眉毛が吊り上がった。


「定・期・連・絡です! どこかの誰かが全然戻ってきてくれないので!」


こめかみがぴくぴくしてる。あかん、地雷踏んでしまったか。


「大体人間のパーティと一緒だから話しかけるタイミングもないですし! 私この街に来て3日間ずっとリン様が一人になるタイミング待ってたんですからね!」

「え、ずっと後を付けてたの?」

「だってリン様がパーティーのメンバーと一緒の時は話しかけないでくれって言ったんじゃないですか!」


言った。だって頻繁に見知らぬ人間に声かけられてたりしたら怪しまれるじゃん。あと彼女は"凛太朗"や"ヘイゼル"よりは顔を知られているから、万が一レベルとはいえ魔族とバレる可能性もあるし。


今になって考えれば合図決めとけばよかったな。今更言っても怒られそうだからいわないけど。


「苦労をかけたねぇ……」

「そう思うんだったら、本当に一度帰ってきてくださいってば」

「んー、そうするか」

「え、本当に?」

「うん」

「なんて嘘とか今いったらイグニス顔に押し当てますけどいいですね?」

「怖い事いうなよ! 本当だってば、俺さっきパーティー追放されたからフリーになちゃったし」

「……は?」


あ、ぽかんとしてる。ちょっと間抜けづらで可愛い。


「どういうことですか?」

「いや、正体ばれちゃって、土下座されて追放されました」

「それ大丈夫なんですか? あと土下座で追放とか言葉がおかしい気がしますが」

「事実なんだからしょうがないだろ。あと特に心配はないでしょ、なんか完全におびえてたしわざわざこっちの恨みを買うような事はしないんじゃない?」

「消しますか?」

「せんでよろしい」


まだ一応あいつらの将来に期待はしてるんだから。


「は、了解しました。それで本当に戻ってくれるんですね?」

「本当だってば、疑り深いなぁ」

「半年以上、こちらから接触しない限り連絡もコンタクトも取ってくれなかったのはどこの誰だと」

「悪かったよ。他の皆にもそろそろ会いたいし素直に帰るって。今他によさげな人材の情報ないしな」


そこまでいって、ようやくシエラは表情を疑いから歓喜に変える。


「それじゃ帰りましょう今すぐ帰りましょう気が変わる前に!」

「信用ないなぁ……とりあえずちょっと待って」


"俺"は能力を解除する。

他の姿になる時はちょっとした手順があるが、本来の姿である"リン"の姿に戻る時だけは単純に能力の解除を意識するだけで、姿は"私"のモノになる。


「あれ、もう戻っちゃうんですか……」


私の姿が青年から銀髪の少女に変わるのを見て、シエラが残念そうな顔をする。

その様子に私はクスクスと笑いながら彼女に顔を寄せ、


「あら、あっちの姿で可愛がって欲しかったのかしら?」


そう囁くように告げると、彼女の顔が瞬く間に赤く染まった。


「そ、そういう訳じゃないです!」

「フフ、シエラは可愛いわね。でもあっちの姿は隠密用、だから貴女といてリンとバレるわけにはいかないの。だから今はお預けね」

「わかってます! そんなことより決め顔の所申し訳ないのですが」

「なに?」

「ズボンとパンツがずり落ちてますよ」

「え」


確かにそういえば下半身がスースーする。

視線を下に送れば、足元に先ほどまで身に着けていたズボンが転がっていた。


あー、そーね。体格差があるんだからまぁそうなるわよね。


……


「きゃんっ!」

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