おおいなる実験
蘭子は自分の世界の大学に帰って上機嫌だった。
「さて、良いペースだ、色々と解き明かされていく」
「神様部の神様は平行世界を行ったり来たりできるからそのうち来るかもしれないし、異世界真紀さまに伝言を頼んであるしで万全だよ」
そしてすぐ神様達は現れた。
「エレガント神様部の真紀さまに聞いてきました神様部の神様です。
しかし、あなたがエレガント神様部の神様になるとは、あのときは予想できませんでした」
「いろいろと便利なので神様を名乗っていますが、今のところ使命感はゼロです」
「そうでしょうね、異世界の狼と羊の番犬的な役割の神様と言うよりは、自分で創造するのが好きな傍観者だったから。
それで異世界を創造する方法ですが、私たちの場合は何百年かたった後にさずかった技で教えることは出来ませんよ。あなた達もしばらくすると使えるようになるんでしょうが、すぐに使いたいのならお見せします盗んでください。
今異世界を創造します、解析してみて下さい」
蘭子と堤くんが慌てて周波数をスキャンすると。
神様は研究室の中に小さな穴を作って中に入って手招きをした。
堤くんが結果を見て、
「周波数が複雑ですね、でも再現できないほどではないか」
蘭子は穴に飛び込んだ。
中は荒涼とした大地が広がっていているだけだった。
「人がいない異世界?」
「好き放題出来ますよ、ホワイトホールを作ることも。
ホワイトホールをイメージして、もちろんここから元の世界にもどってそこから、異世界にホワイトホールを作る、と」
「あれ、あなが消えた」
「大きすぎたので地球が吹き飛びました」
「地球の無い異世界が誕生したのか。
もしかして昔にも同じことした人がいた?」
「ええ、いましたね。最終的に成功していましたよ」
神様部の二人が帰ると、それから愛の魔王と出力の加減を調節してなんとかコントロール出来るようになった。これでエネルギー問題解決かな、等と喜んでいると、ふと気付いた。
「もしかして、宇宙船ってうちらが乗らなくていいんじゃないの?」
「気付きましたか蘭子さん。ブラックホールやホワイトホールを引っ張ってこれるんですよ、船が目的の星についてから転移すれば良いんです」
「船の中をイメージしておけば、不老不死のまま地球でのんびりしていれば良いわけか。いやまあ仕事はせっせとするんだけどね」
「さっさと作って次の星に送り込みましょう、数人乗れたらいいから小さくても良いし資源もそんなに使わなくてすむ」
本来なら人と動物が乗って、ドラゴンの炎と冷気で温度調節しながらコールドスリープするのだがその必要もない。ただ着いた先で船の中に破損等によって空気が無くなっていると困るのでセンサーを仕込むことにした。
もろもろの危険を考えて、人がいない異世界で製作を開始した。簡単な転移の練習をしながらエンジン回りから居住区まで作った。
「着いた先が確定されて場所をイメージできないと転移出来ないので、そこだけだな。
後は目的の星の近くまで転移させたら良いので割と早く着くよ。早いと1週間ぐらいか」
「結局、箱だけでエンジンいらないんじゃないか」
等と笑っていたが。
「それでどこ行くんだい、愛の魔王さん、我々宇宙人の次の安住の地は」
「さあ、誰がそこら辺詳しいんだろう?」
エレガント神様部の部員に聞いても分からない。結局、進むべき星が分からなかった。
「大気があって人が住める場所、で、なぜそこに行くのか?」
「そこに大気のある星があるから」
「その星がわからねぇよ、移動する目的自体はいまのところ好奇心だけ」
「よくSFにある地球が汚れたから移住、とか」
「もともと異世界の地球は汚れてないし」
「なんだろうな、資源を取りつくしたから次の惑星に移動か」
「そうだな、今回は節約モードだから資源とりつくしていないな、これが原因か」
「いやいや、何回か旅立った痕跡があるけど資源とりつくしてないだろ」
行き先が見つからないまま作ってしまった。しょうがないので火星まで飛ばしてみることにした。
「人がいない異世界の火星まで試運転だな」
火星の近くまで転移させて、送ってきたセンサーの数値を読むと船内は地球と変わらないので蘭子達も転移した。
「ここがそうか・・・」
「火星らしい星が見当たりませんね」
「飛ばしかたが雑だからだいぶそれたみたいだね」
「じゃあ火星に近づくためにエンジン始動しますか」
「ちょっと待て、地球に帰ってから、だろ?」
「何回も成功してますよ蘭子さん」
「現状最善の策では無いよ、今は始動する時じゃない。
地球まで戻ると言っても我々の世界まで戻らないと吹き飛びますよね」
「まあそうですけどね」
「でさ、エンジン始動してから、どうやって船止めるの?」
「今それですか」
「重力ブレーキとかもっと下準備必要だったんじゃないかな」
「唯、とめる魔法は何か書いてなかった?」
「書いてなかったな、まだ細かいこと知ってる使徒の数が足りないみたいですね」
「そうかもしれない、一回帰るか」
蘭子達は船ごと地球に帰った。
「2艘作って目視で少しずつ星に寄せるように転移させていけば良いのでは」
「それだ、だが立体的な星の地図を作らないとだめだね、効率悪すぎる。時間がかかるとドラゴン達を連れて行かないと魔法で保温するのが疲れるわ。ケージとか熱交換器が必要かな」
「結局付属品が増えていきますね」




