実践
唯は少しふざけて蘭子にドラゴンをわたした。
「ほらほら、お母さんですよ」
「やめろよ、愛着がわいてしまうだろ。こいつらが今後どうなるか分からんのだ、非情になれなくなる」
そこにホスト氏がお使いから帰って来た。
「肉6kg買ってきました。たりますよね」
「鶏肉ですか、まあしょうがないですよね。この子たちはもう鶏じゃないから」
「ほら飯の時間だ、ほーれ、美味いか?お前はもう食っただろ前に出てくるな。こっちのちっこいのに食わせてやれよ、博愛精神が無いのか」
「博愛精神は無いと思いますよ、食うか食われるかの世界の住人ですから」
「そういう思い込みがいけないんだ、こいつらに権利的な思想を叩き込んでやる」
「おっ、でも譲ってませんか?特にこのボスっぽいデカいの」
「あー、こいつだろ、仕切りたがるんだよ、何かと自分が上だと回りに認めさせたくてさ」
「鶏だからつつきの順位ですよ」
「鶏じゃ無いんだよ、こいつらにはこれまで無かった何かが宿っているんだ、たぶんそうだよ、頭も良いはずだ。こいつらの犯罪遺伝子をとればベジタリアンになるかもしれない、火もはかなくなるかもしれない。何かを発明するかもしれない」
「でも本能的な欲求はなくならないようです」
「だが渋谷でナンパ最強になるかもしれない。見てみたくないかこいつらがモデル風のいい女を言葉巧みにおとすさまを」
「無いですね」
「そこがダメなんだよ、もっと可能性を信じるんだ」
勇者氏は自衛隊から帰って来た。
「自衛隊の富士演習場か硫黄島で飼ってもいいそうですよ、ただし戦闘に使えるかどうかの研究を行うことが条件だそうです」
「なんか気が進まないな、ケガをさせられるんじゃないだろうか」
「お母さん、大丈夫ですよ」
「もういいって唯、やっぱりあそこを使うか」
「あそこって?」
「山の中だよ」
「あそこの山に中ってあるんですか」
「そりゃあるだろ、カンナヅキさんのところが空洞なんだよ、こっちも空洞だよ」
「隠してたんですか」
「当然それもあるけど誰も聞かないから知ってるのかと思ってたよ。でかくなる前に入れてしまうか、食費が心配だが」
「プロテイン代に付け替えますか」
「名案だがダメなんだよ出来ないよ、昔じゃないんだから」
「正々堂々と自衛隊にだしてもらいましょう。どうせあそこには駐屯してるし、目が届くところに置いておいた方が暴れることもないだろう、とかなんとか言って」
「そうするか、今さらいなくなりました、とか言えないし」
結局、山の洞窟で飼うことにした。
「世話も自衛隊がやってくれるそうだ、むこうも喜んでいたよ、いい場所を紹介してもらったと」
「某かの結界とか期待しているっぽいですよね」
「そうか?そんな感じは無かったなあ。まあ火をふけば魔力を押さえ込むのはあるよな。あそこの山は鉄鉱石が多く含まれてるからそういう効果は期待できるよ。それに大きくなるとも限らんよ手のりドラゴンくらいかもしれない」
「すでに倍になってますよ」
「ここからルートがかかるんじゃないの。それに大きくなってもハワイ程度ならなんとかなるよ」
自衛隊は二匹だけ様子を見たいと言って硫黄島につれていった。
「頑張ってこいよ、暖かいからからだの調子が良くなるかもしれないな」
「エルビスとモンローと名付けましょう」
しばらくすると堤氏が
「蘭子さん、太平洋で火龍発見って掲示板に出てますよ」
「まさかあいつらじゃあないよな、ちゃんとおりに入れているはずだし」
テレビをつけてみると。
「テレビクルーがレポーター連れて上陸しているぞ、硫黄島」
「間違いないじゃないか、いやさすがに」
「只今硫黄島に上陸しました。まず今朝とったスクープ映像をご覧下さい」
二匹の火龍が海上を飛びながら海面に向かって火を吹いている画像がうつり、海面からは鯨が潮を吹いて応戦しているようにみえた。
「鯨を補食しようと攻撃しているもようです。これはCGではありません」
嵐子はすかさずテレビに突っ込んだ。
「いや、遊んでるだけだろ」
すると電話がかかってきた。
「蘭子さんですか国営放送の者です。自衛隊から専門家として紹介されました。コメントしていただけませんか」
「いいですけど、そちらに行く時間がないので、どなたか他のかたで」
「大丈夫ですよ、すでに校内まで来ています」
困ったので偉い人に電話した。
「TV来ているけどどうしますか?もう数分で部屋になだれ込んできます」
「対応してください」
「どういう方針でいきますか、自衛隊が逃がしたあたりから言いますか、それとも孵卵器で鶏の卵から生まれたところから?」
「そこら辺はブラックボックスにして、第三者としていい感じで状況を説明してください」
国営放送の人達は手際よくライトとカメラをセットするとディレクターとおぼしき人が名刺を渡して喋りだした。




